俺だって
お久しぶりです。
花見に行きます。
※中盤、後半キスシーンあり
今日は花見に行こうということで、この前と同じく、梅のおにぎりとお茶を容れた水筒、レジャーシートを入れたカバン持ち、天使渉と三田頼之はまた公園に向かっていた。
「この前と同じ場所でいいよな」
「はい──」
頼之に訊かれ、渉は頷く。
そして二人は、この前と同じ所にレジャーシートを敷き、水筒とおにぎりの入ったカバンを置いて座った。
季節の流れは早いもので、この前梅が咲いていたと思ったら、もう桜に移り変わっている。
桃色の花びらが、淡く世界を染めていた。
「サンタさんは、梅と桜、どっちが好きですか? 俺は梅ですかね」
「俺は桜だな──なんで梅なんだ?」
頼之の問いかけに、渉は「だって」と答える。
「咲くのは梅の方が早いのに、春のイメージは桜に隠れちゃうじゃないですか。だから、影で咲く梅を俺は応援します」
「なるほどな」
と頼之は小さく笑った。
そんな頼之に、今度は渉が問いかける。
「じゃあ、サンタさんの理由はなんですか?」
「俺は……特にないな。一つ挙げるとすれば、色が薄い方が好きなんだ」
「えっ、何ですかその理由、梅に失礼じゃないですか」
と渉は少し不機嫌な顔になる。
頼之は「仕方ないだろ」と続けた。
「人それぞれ感じ方は違うんだ。こういう意見もある」
「そうですけど……」
納得出来ない……と渉は少し唸る。
頼之はそんな渉を見て、少し笑った。
「なに笑ってるんですか」
「何でもないよ──」
と頼之は微笑んで、桜に目を向ける。
渉は少し首を傾げてから、頼之と同じように桜に目を向けた。
それからまた、他愛のない話をして、おにぎりを食べた。
「……ふ、ぁ……」
と隣で渉が欠伸をする。
「眠いのか?」
頼之が訊くと、渉は苦笑いして答えた。
「はい、ちょっとだけ……」
「じゃあ、足貸そうか」
「前にテンシがしてくれたように」と頼之が正座をしようとすると、渉は手を振って遠慮する。
「いいですいいです、大丈夫です、座ったまま寝られるんで!」
「そうか──」
少し顔を赤くして断る渉に、頼之は遠慮しなくていいのになと思いながら、座り直した。
「じゃあ、ちょっとだけ寝ますね、すいません」
と渉は苦笑いしてから、そっと目を閉じて少し俯く。
それじゃ首痛くするだろと頼之は思ったが、それを言って渉の睡眠を邪魔するのも気が引けた。
とりあえず桜を見て、頼之は時間を潰そうと思う。
少ししてから、こつんと腕に何かが当たった。
「ふっ……」
ふと隣を見ると、渉が寄り掛かってきていた。
若干口が開いていて、気の緩みがよくわかる。
「……はは──可愛い」
そう呟いて、頼之は渉の髪を軽く撫でた。
それから軽く、頭にキスをする。
「……好きだよ」
渉には聞こえていないだろうが、何となく言っていた。
渉はむにゃむにゃと口を動かすと、また口を開ける。
こうやって無防備な姿を見ると、心を許してくれている気がして、頼之は嬉しかった。
初めて会った時に、混乱させるようなことを言ったし、実際戸惑ったりもしただろう。
それでも、渉は頼之を受け入れた──。
「渉──」
「ふぁ、い……」
寝ぼけているのか、渉から返事があって頼之は少し驚いた。
「渉……?」
「んん……」
確認のために呼んでみたが、すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てている。
頼之はふっと笑って、桜に視線を向けた。
ずっと、こんな風に寄り添っていたいと、頼之は思った──。
しばらく経ってから、頼之は渉を起こした。
渉は寄り掛かっていたことを謝罪してから、頼之を見つめる。
「……どうした?」
頼之が訊くと、渉はいや……と顔をそらした。
渉はこの間の事を夢に見た。
梅を見に来て帰ろうとした時に、頼之にキスをされ、「今度はちゃんとしてくれるんだろ?」と言われる夢だ。
今まで忘れていたのに、夢のせいで意識してしまう。
頼之自体、言ったことを覚えているかもわからないのに、渉は一人ぐるぐるする。
「大丈夫か……?」
「あ、はい、大丈夫です、帰りましょうか!」
と心配そうな顔をした頼之に言って、渉はばっと立ち上がった。
頼之は少し不思議に思いながら、渉の後に続く。
「ほんとに大丈夫か?」
「大丈夫ですよ、ちょっと夢で三田さんが……」
と言ってから、渉は口を閉じた。
頼之は「俺が?」と渉に訊く。
「夢で何かしたのか?」
「いや……っ、べつに、ただ梅見に来たときの夢見ただけで──」
と言いながら、徐々に顔を赤くしていく渉を見て、頼之は思い出したように笑った。
「なんだ、気にしてるのか? べつにいいよ、無理にさせたいわけじゃないんだ。ちょっとしたからかいっていうのもある」
と頼之は微笑んで歩いていく。
渉は隣を歩きながら、そうなんですか、と呟いた。
頼之もそうだよと呟いたが、ふと顔を見ると少し寂しそうな顔をしていて、渉は何とも言えない気持ちになった……。
*
そして頼之の家に戻り、渉は使った水筒やらを洗って、片す。
頼之はソファーに座って、新聞に目を通していた。
「…………」
渉は考える。
やっぱり、サンタさんもキスとかされたいのだろうか……と。
渉は好きな人とはほどほどにイチャイチャしたいと思っているが、年上の頼之の場合、どれくらいなのだろうかと思う。
「あ、の、サンタさん──」
「ん?」
「サンタさんは……、俺とイチャイチャしたいですか?」
頼之の隣に行き、渉は訊いた。
悶々としていても、本人に聞かなければ解決しない。
頼之はきょとんとしてから、新聞をテーブルに置いて答えた。
「イチャイチャというか、俺は渉がそばに居てくれるだけで十分だ。でも……」
と頼之は少し困ったように笑う。
「人並みに性欲もあるから、渉が嫌じゃなければ、そういうこともしたい……とは思う」
「ぁ……なる、ほど……」
自分で聞いておいて、渉は思わず赤面した。
サンタさんでもそういう事をしたいと思うんだ……と渉は思う。
「……テンシは、俺とイチャイチャしたいか?」
「えっ、あ、えっと……今は、このままでいいなぁとは、思ってますけど……。でも、サンタさんが、その……俺と、そういう事をしたいと思うなら、俺も……」
「頑張らないとな、とは、思います……」と消えそうな声で伝えた。
頼之は微笑んで、隣で立ったまま俯く渉を引き寄せて、優しく包み込む。
「っ……?」
「頑張る必要はない。その気持ちだけでいい──渉が、俺とそういう事をしたいと思えるまで、俺はしないよ。一方的なのは嫌なんだ」
と頼之は言って、渉を隣に座らせた。
「俺は、渉と気持ちよくなりたい」
まっすぐ見つめてくる頼之に、渉は全身が熱くなっていくのを感じる。
「あ、っと……、俺も、です──」
そう言って、渉は俯く。
恥ずかしくて、渉は頼之を見ることができない。
するとそっと頼之の手が顔に伸びてきて、すっと顔を上げられた。
「さ、んた、さん……?」
「顔、真っ赤だ」
「誰のせいだと──っ」
「俺だな」
と頼之は手を離して笑う。
そんな頼之に、渉は少しムッとした。
「っ……俺だって、出来ますからね──っ」
渉はそう言って、頼之の顔を手で固定する。
「テンシ……?」
「っ──」
頼之が渉を呼ぶのと同時に、渉がチュッと頼之の額にキスをした。
「…………」
「っ、しましたからね!」
と渉は手を離して言う。
頼之はぽかんとしてから額を押さえると、少し顔を赤くした。
「……はは、うん。そうだな──ありがとう」
あまりにも嬉しそうに頼之が微笑むので、逆に渉が恥ずかしくなって、思わずソファーの上で膝を抱える。
「なんか……こっちが恥ずかしいんですけど……」
そう呟いた渉を見ながら、頼之は心から渉を好きだと思うのだった──
その後。
頼之「次は口だな(微笑み)」
渉「えっ──」




