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治った

治りました。

「おー、治ったか」

「治った治った──」


 大学の講義室で、新巻(あらまき)(たく)天使(あまつか)(わたる)は言葉を交わす。


三田(みつだ)さん来てびっくりした」

「あぁ、俺が案内したしね──」


 渉は巧を見て、は?という顔をする。

 巧は違う違う、と手を振って言った。


「兄貴から連絡来て『頼之(よりゆき)に天使くんの家教えてやれ』って言われたんだよ」

「……何で」

「お前が理由言わなかったからとか何とか」

「…………」


 まあ、言わなかったけど……と渉は思い出して黙る。

 巧は笑って、いいじゃん、と言った。


「三田さん、良い人ぽかったし──お前だって会いたかったんじゃないの?」

「は? ……そんなことは、ない」

「いや、今の間はそうだった! 絶対そうだね! 女子か」


 と巧は(ひじ)でつつく。

 渉はそれを押し返しながら、男子だ、と苦笑いするのだった。


         *


「こんばんは」

「ん、顔色いいな──」


 頼之は部屋に入ってきた渉を見て微笑む。


「全快ですよ──あと、この前はすいませんでした……」


 子どもっぽいとこ見せちゃって──と渉は恥ずかしそうに謝る。

 頼之は気にするな、と笑った。


「普段見れないテンシが見れて、俺は嬉しかったぞ?」

「っ、俺は恥ずかしかったです!」


 リュックを下ろしながら、渉は袖を捲る。

 頼之はそんな渉を見て訊いた。


「食器でも洗うのか?」

「そうですよ、溜まってるから──」


 と渉はキッチンに入る。

 シンクにはお皿やお茶碗などが放置されている。


「テンシ」

「はい?」

「今日ぐらい、やらなくていいんじゃないか?」

「何言ってるんですか。溜まって困るのはサンタさんですよ──」


 と渉は手際良く洗っていく。

 頼之はそうか……とソファーに寄りかかった。


「……サンタさん、寝たらだめですよ」

「んー」


 絶対寝るだろ──と渉は頼之を見てから、食器に視線を戻した。



 食器を洗い、洗濯機を回してから頼之の所に行くと、やっぱり頼之は寝ていた。


「ほら……。はぁ──」


 近くのタオルを手に取り、よいしょ、と頼之にかける。

 渉は頼之の寝顔を見て、うーん……と考える。


「……可愛くはないし──むしろ……」


 カッコいいよなぁ、と渉は思った。

 仕事をこなしたり、電話をしている姿はまさしく『働く人』という感じで、すごいと思う。


「むしろ……、何だ?」


 いつの間に目を覚ましたのか、頼之は渉を見上げていた。

 渉は口を閉じて、頼之を見つめる。


「……どうした?」

「サンタさんは、カッコいいと思いました──」


 そう言って、そそくさとその場を離れる。

 頼之は少しの間考えてから、そりゃどうも……と呟いた。

 


 渉は洗濯機の前でうなだれながら、言わなきゃよかった……、あっち行けねえ──と一人後悔するのだった……





渉の風邪話編終わり。

渉「完治!」


次回は再来週になります。

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