クリスマスイブ
クリスマスイブ。友梨香登場。
※後半キスシーンあり。
「あるかな──」
天使渉は、ファッションセンターに来ていた。
店内の展示スペースには、【冬に着たい! モテコーデ!!】という看板の横に、オシャレに洋服が着せられたマネキンが女性男性と並んでいる。
それを通り過ぎながら、渉は手袋を探していた。
前に三田頼之がマフラーをくれた時、手袋を持ってないと聞いたのを渉は思い出したので、買いにきていた。
「ん……と、あった──」
少し進んでから、端の方に設置された【防寒具】の吊り看板をみつけて、渉はそこに向かった。
設置された棚には、様々な手袋やマフラー、ネックウォーマーが置かれている。
そこには、渉の頭半分高い一人の女性が、マフラーとネックウォーマーを持って、どちらにしようか……と吟味していた。
渉はそれを見て、父親か彼氏とかにプレゼントか? と思いながら、横に並んだ。
「う〜ん……どっちにしよう──」
ふいに女性が呟いて、渉はちらっと横を見た。
その女性もふと横を見て、渉と目が合った。それでさっき呟いたのが聞こえていたのがわかったのか、少し恥ずかしそうにはにかむと言った。
「旦那にね、防寒具を買おうと思って──彼、手袋はあるんだけど、首にするのがないの」
「そうなんですか。俺は手袋を買いに来たんですよ」
と渉は答える。
それから、手袋を二つ持って、どちらにしようか、と眺める。
「……それは、自分用に?」
「え? あ、いや、プレゼントです……」
女性が笑顔で渉に訊いて、渉は少し照れながら答えた。
「へえ。……お父さんとか?」
渉が持っていた茶色の手袋と黒の手袋を見やって、女性が訊く。
「あ、いや──。今、友だちの巧のお兄さんの友だちの……」
「……巧って、新巻巧くん?」
「はい、そうですけど……?」
渉は、誰だ……? というように女性を窺うと、そっかそっか、と女性は一人頷いて言った。
「そのね、巧くんのお兄さん──慎の妻の、友梨香です」
「あ、新巻さんの奥さん?!」
「そうです、よろしくね──」
と友梨香は微笑む。はつらつとしている仲原ゆずほとは違って、ほんわかしている。
「こちらこそ、巧の友だちの天使渉です」
と渉も挨拶する。
友梨香は笑って、聞いてるわよ。と言う。
「じゃあ、三田くんのとこに行ってるっていうのが、あなたなのね」
「ぁ、そうです」
「だからね。それで三田くんに?」
と手袋を指差して、友梨香は微笑む。
「はい──。これ貰ったので、お礼にと思って……」
首に巻いた黒いマフラーを触りながら、渉は笑う。
友梨香は、そう。と微笑んで、渉に言った。
「ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっと色々話さない? あと、これ選ぶの手伝ってほしいし──」
どう? と友梨香はマフラーとネックウォーマーを見せながら訊く。
渉は笑って、はい。と頷いた。もしかしたら、サンタさんの話を聞けるかもしれない。と思いながら──
*
近くの喫茶店に、渉と友梨香は来た。
渉はホットコーヒーを頼んで、友梨香はホットミルクティーを頼んだ。
運ばれてきてから、とりあえず一口啜って、友梨香が切り出した。
「慎から聞いてたけど、まさか会えるなんて」
「はい、びっくりしました」
と渉も頷く。それから友梨香に訊く。
「……あの、三田さんと新巻さんと友梨香さんは、いつから知り合いなんですか?」
「うんとね、高校の時から──一年の時からクラスが一緒でね」
と友梨香は微笑んで話す。
「高校の友だちは一生っていうけど、確かにそうなんだなぁって。私も慎と付き合って、そのまま結婚したし……。三田くんも確か付き合ってたんじゃないかな。でも、確か相手の都合とか性格が自分と合わないって別れちゃってたけど……」
と友梨香は思い出すように言う。
「たぶん付き合ったのは、その人だけだと思うな。モテてたけど──」
渉はそれを聞いて、付き合ってた人いたんだ……。と思う。
「天使くんは、付き合ったりしてるの?」
「え……? まぁ、はい。高校の時に一人──受験で別れちゃいました。まあ、それだけじゃないんですけど……」
と渉は苦笑いする。
「そうなの……。じゃあ今は?」
「います──高校の時の恋人より、今の方が大事です」
と渉ははにかんで言った。
友梨香は、そうなの、なら良いわね。と笑う。
「あ、そうそう。今日はありがとね。助かったわ」
「いえいえ。お役に立てたなら良かったです」
渉は笑って、ホットコーヒーを飲む。
友梨香もホットミルクティーを飲んで、おいしい。と呟く。
それから他愛のない会話して、渉たちは店を出た──
*
「今日は目一杯飲むぞー! カンパーイ──!」
慎がジョッキをかざして、音頭をとる。
頼之もジョッキをかざして、それに合わせた。
頼之たちは、居酒屋の数人が座れる畳の席で飲んでいた。
「……ぷはあっ──!」
ドンっとジョッキをテーブルに置いて、慎は頼んだ枝豆を口に放り込む。
「お前も飲めよ? 今日はタクシーだろ?」
「そうだが、そんな飲んでも二日酔いになるだけだろ──」
と慎の隣に座る頼之は、ジョッキをちょいちょい口に付ける。
「なんだぁ? 明日は恋人と過ごすから、遠慮してんのか──?」
と慎はジョッキをぐいっと持ち上げて飲む。それから、ビールもう一杯! と頼んで、つまみを口に運ぶ。
「……いや、明日は会えないんだ」
「え? そうなの……?」
と慎は運ばれてきたビールを受け取ってから頼之を見る。
頼之はジョッキを飲み干してから答える。
「──あぁ。先約があるらしくてな」
「……そっか。じゃあ飲め飲め! 帰りはタクシーに頼めば大丈夫だから!」
ジョッキを頼之にすすめて、慎は、いけいけ、と飲むフリをする。
頼之は、それもそうだな……、と思い、ジョッキを手にした──
*
「……飲みすぎたな──」
タクシーで、マンションの前まで帰ってきてから、頼之はエレベーターに乗り込んだ。
慎の方が酔っていたので、一緒にタクシーに乗せて慎の家まで送り、友梨香に慎を預け、頼之は帰ってきた。
「全く……」
と頼之は息を吐く。
酒臭いな……渉がいたら、何て言うだろう──サンタさんお酒臭いですよ! どのくらい飲んだんですか──?
「……なんて」
と頼之は考えて、ふっと笑う。
いつの間にか開いていたドアから下りて、頼之は自分の部屋に向かう。
『302号室』の前に立ち、鍵を差し込む。開く方向に回そうとしたら、いつもと感覚が違った。
カチャッと音がしなかった。
「……ん?」
鍵を引き抜いて、ドアを開ける。
中は、電気が点いていた。
「ただいま──?」
リビングに入ると、渉が畳んだ洋服を抱えているところだった。
「ぁ、お帰りなさい──」
と洋服をしまいに行きながら言う。
頼之は突っ立ったまま、渉を見る。
渉はしまい終えて、頼之のもとに向かってから言った。
「俺昨日から冬季休暇に入りまして、それで来ました。あと、プレゼントも渡したくて……」
と渉は頬を掻く。
頼之が何も言わないので、渉は少し不思議がって訊いた。
「……サンタさん? 顔少し赤いですよ? 結構飲んだんでしょ──水飲みますか?」
「あぁ……」
頼之の我に返ったような返事を聞いてから、渉は笑ってキッチンに入って、コップに水を注ぐ。
「はい、サンタさん──」
とコップを渡してから、渉はテーブルに行って、置いておいたプレゼントを持って改めて頼之を見る。
頼之は水を飲んでからコップを置くと、渉に近づいた。
「マフラー貰ったんで、そのお礼です。手袋にしました──」
「ありがとう、渉」
と受け取って頼之は微笑む。
渉は、いえいえ。と嬉しそうに笑った。
「楽しかったですか?」
「ああ、楽しかった──でも」
と渉の肩に手を乗せて、頼之は言う。
「渉の顔見れた今の方が、嬉しい」
「っ……サンタさん、酔ってますよね?」
「うん、ちょっと飲みすぎた──」
と渉を見つめる。
渉も頼之を見つめ返す。
「……遠慮、しなくていいか?」
「ぇ……? あ……うん──」
頼之はその返事を聞いてから、唇を重ねた。
「……サンタさん」
「ん──?」
唇が離れてから、渉が言う。
「お酒臭いです……」
「…………。悪い──次は、素面の時にしよう」
と頼之は離れてコートを脱ぎながら提案する。
「えっ!? ぁ、えっと……ほどほどで……」
恥ずかしそうに言う渉を見て、頼之はふっと微笑んでから、それなりでな。と返した──
友梨香「慎、喜ぶかな──」
次回、クリスマス──
再来週になります。




