モグの穴掘り大作戦
全身に特製タレをたっぷり浴び、極上の香ばしさを漂わせるニギリ先輩。
砂浜に満ちる醤油の甘辛い香りは、地底でじっと待機していたモグの野生の勘(と空腹)を限界まで刺激していた。
「だめだ……我慢できない……! 上から食べられないなら、下から攻めるしかないんだ!」
穴の中に首まで埋まっていたモグは、短い手でフォークをギュッと握り直すと、まるでドリルのように猛烈な勢いで砂を掘り始めた。
「ザクザクザクザク! モグモグ掘るぞー!」
「ちょっとモグ! 下で怪しい音が聞こえるんだけど!? なにやってるの!?」
踏み台の上のキビ丸が下を覗き込む。
だが、時すでに遅し。
モグの穴掘りスピードは砂浜の許容量を超えていた。
「モグ、やめろス! カセットコンロの脚が傾いたら、僕の腕どころか世界が崩壊するスよぉぉ!」
取っ手を必死に支えるモチ太が叫んだ、その瞬間である。
——ズゴゴゴゴ!
「うわぁっ!?」
モグが掘り進めた穴の底から、突如として「プシューッ!」と勢いよく水が噴き出した。
ポカポカ諸島の砂浜の底に眠っていた「秘密の地下水脈」を、モグのフォークが貫いてしまったのだ!
「ひゃあぁぁぁ! 水だぁぁぁ! 冷たい冷たい!」
穴からロケットのように水とともに飛び出してきたモグ。
水柱は「どどどどっ」と勢いを増し、カセットコンロの真下から噴き上がろうとしていた。
「まずい! コンロの火が消えてしまうぞ!」
ニギリ先輩が叫ぶ。
せっかく香ばしく焼き上がろうとしているのに、水がかかってしまっては全てが台無しだ。
「させないよぉぉ〜〜!」
ここで動いたのは、沖合からアヒル船長とともに急行してきたパイロンくんだった!
「アヒル船長、フルスロットル! 飛び込め〜〜!」
「ガーーーッ!」
パイロンくんは頭の赤い三角パイロンをサッと脱ぐと、噴き出す水柱の穴に向かって「ポコンッ!」と逆さまにはめ込んだ!
三角パイロンの見事な円錐形状が、湧き出る水穴に見事なジャストフィットを見せる。
——ポコンッ!
シュうぅぅ……
「……止まった!?」
キビ丸が目を丸くする。
パイロンくんの帽子のパイロンが、見事な栓となって地下水の噴出をピッタリと止めたのだ。
「ふう……危ないところだったねぇ。ボクの帽子の真の使い道が、まさか水漏れストッパーだったなんて」
パイロンくんは頭を撫でながらフフッと笑った。帽子がなくなって、丸い頭がむき出しになっている。
「パイロンくん……! 君のおかげで僕たちの情熱の火が守られたス……!」
モチ太が涙ぐみながら感謝する。
「モグー! 余計なことするからでしょ! 反省しなさい!」
キビ丸に激しく叱られたモグは、全身びしょ濡れのまま「てへっ、地下水が出ちゃった」と反省の色ゼロでペロリと舌を出した。
冷や汗(と水)をかいたものの、コンロの青い炎は絶やされることなく燃え続け、ニギリ先輩は今日も無事に香ばしさを増していくのだった。




