黄金の残照、選ばれし道
ミリエルとの対話が静かに幕を閉じると、それを察したかのように部屋の扉が開き、ナイトホークとオーエンが戻ってきた。オーエンはいつもの定位置で静かに文献を広げ、ナイトホークは窓際で鋭い眼光を外へと向ける。そこには、いつもの、けれど何ものにも代えがたいエリの日常があった。
「エリ、ミリエルは何の用だったのだ」
沈黙を破ったのは、ナイトホークの低く、案じるような声だった。
「……ミリエルが言うにはね、私の魂には、彼女の双子の妹であるミリシアの魂が合体して含まれているそうなの。私自身には、これっぽっちも実感が湧かないのだけれど」
エリは自嘲気味に肩をすくめ、窓の外を見つめた。
「私がこの世に生を受けると同時に、消えゆくミリシアの魂の欠片が、私という器の中に溶け込んでしまったらしいわ」
「なるほど……。エリ様は、生まれながらにして神性をお持ちだったのですね。道理で、この世界の理を超越した奇跡を成し遂げられるわけです」
オーエンが眼鏡の奥の瞳を感嘆に揺らし、深く頷く。
「らしいわね。私の中の『戦神』が、無意識に兵器を選び取らせていたのかしら」
エリの返事に、ナイトホークは一歩踏み出し、射抜くような視線で彼女を見つめた。
「それで、エリ。お前は……天界へ昇るのか、それとも地上に残るのか」
その問いは、彼らにとって最も重く、切実なものだった。
「私は、この肉体が滅びる時までは地上に残りたいと思っているわ。その方が、救いを求める人々の声を近くで聞けるし……何より、この目で見、耳で聞き、肌で感じられる『現実』の中にいたいから」
「地上には、神はお前一人だ。神界の庇護もなく、孤独な立場での戦いになるぞ。それでもいいのか」
ナイトホークの覚悟を問う言葉に、エリは迷いのない、凛とした微笑みを返した。
「いいわ、覚悟の上よ。それに、私にはあなたたちという、誰よりも心強い味方がいるじゃない。私は私が望んで、この地に留まるの。だから……この決断に後悔はないわ」
窓の外には、始まりの地の湖を黄金色に染め上げ、ゆっくりと沈みゆく夕日があった。
それは一つの物語の終わりを告げると同時に、地上の女神として歩み出す彼女の、輝かしい門出を祝しているようだった。




