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【第三章完結】ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第4章 飛び立つ鳩と紫の花

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第113話 やってきた聖女




 一週間後の厳月ゲブラー二十七日、聖女の一団が、国境付近にやってきた。

 アルヒ王国聖女護衛団は砦の城壁の外でひざまずき、聖女の一団を出迎えた。

 豪奢な馬車から一人の少女が降りてきた。

 露出の少ない白い清楚な聖衣(聖職者の服のこと)を纏った、金髪に紫の瞳の少女は神秘的な美しさを持っていた。

 彼女が聖女だ。

 聖女という存在は神聖オウル法国では勿論、崇める対象になっている。他の国でも同様だ。だが、聖女は一人だけではない。現在、神聖オウル法国には聖女は三人いる。

 聖女と同じくらい尊い存在である聖者も二人おり、聖女は希少ではあるが、唯一という訳ではない。

 聖女と聖者は三次ジョブなので、神官がかなりの研鑽を積めば、ジョブが昇格して聖女や聖者になれるだろう。しかし、大体の神官が研鑽を積んでも巫女や神官長止まりなので、希少なジョブなのだ。


「どうぞ、お立ちください」


 聖女は流暢なアルヒ語で、聖女護衛団に立ち上がるようお願いした。

 聖女は神聖オウル法国出身なので、オウル語が母国語だが、聖女として活動するために、各国の言語を習得しているので、アルヒ語もしっかり話せるのだ。

 聖女護衛団は立ち上がり、右手の拳を左胸に当てる礼をした。これはアルヒ王国の騎士の礼だ。騎士ではない冒険者は左胸に右手を添えている。これは冒険者が貴族向けにする礼だ。


「皆様、初めまして。私は聖女のヨナと申します。アルヒ王国の精鋭の騎士と冒険者の方が護衛に就いてくださると聞いております。とても心強く思っております。では、私はこの砦の騎士や兵士の方の中で魔障を患っている方を治癒したいのですが……」


 辺境伯マルクスが前に出てきた。


「この砦の責任者を務めております、マルクス・フォン・リーデルシュタイン=ローデンヴァルトと申します。治癒院へご案内します」

「よろしくお願いします」


 聖女は護衛団の横を通り過ぎて、城壁内に向かう。

 聖女の一団が、ルクスたちの前を過ぎ去ろうとしたとき、ルクスの前に黒髪に碧眼の騎士らしき美丈夫が何かに気付いたように立ち止まった。

 不思議に思ったルクスは上を向いて、騎士に目を向けた。

 騎士は、ルクスを見て目を丸くしていた。

 目を瞬かせ、顔を逸らした騎士は、早足で聖女の元に向かった。


(目の色がバレた、のか? 否、眼鏡をしてるから、大丈夫な筈……でも、どうして)


 あの騎士はどこか懐かし気な表情を浮かべたのだろう、とルクスは首をひねったのだった。


「ねえ、バー……ト?」


 ルクスの隣にいるバートは顔を真っ赤に染め、幸せそうな表情で目を閉じていた。ルクスは何事か、とバートの肩に手を掛けて、揺らした。


「バート、ねえ、大丈夫?」

「はっ!……今、僕、雲の上にいたような……」

「昇天しかけてるし。どうしたの?」


 バートは深呼吸し、息を整えた。


「いや、さっき聖女様を見た瞬間、幸せな気持ちと舞い上がるようなトキメキに見舞われて、いつの間にか雲の上にいたんだよね。ルクスが肩を揺すってくれなかったら、死んでたかも」


 あははー、と笑いごとのように話すバートにルクスは呆れた顔をした。


「バート、これから聖女様を護衛するんだよ?しっかりね?」

「……うん」


 バートは真顔になった。

 後ろで見ていたラエティティアと自由気まま、人それぞれは苦笑していた。


 マップで魔物がいないことを確認したルクスは仲間たちに、しばらくは大丈夫そうだ、と伝えた。

 好奇心旺盛なライナーがルクスのところにやってきた。


「なあ、なんで大丈夫って分かるんだ?」

「あー、そういうスキルがあるんだよね。半径五キロくらい感知できるスキルだって思ってくれて大丈夫」

「ほへー。そりゃあ凄いね!」


 ライナーとルクスが話している間、自由の翼のメンバーは栄光の階のメンバーと雑談を始めた。

 そんな中、バートはこっそり治癒院に向かった。

 聖女を見ていたかったからだ。聖女ヨナは、一人一人の患者を丁寧に治癒していた。

 欠損のある騎士には【完璧な治癒】を使い、魔障のある騎士には【完璧な解呪】を使った。

 神聖力を多く消耗するのだろう、治癒院の全ての患者を診終える頃には、ヨナの顔色は青白く、ヨナの方が病人に見える程だった。


「聖女様……」

「大丈夫です、休めば治りますから」


 バートは黒髪の騎士に支えられて、治癒院を出て行く聖女ヨナを黙って見送ることしかできなかった。

 神聖術について今まで全く調べて来なかったバートは、神聖術について調べようと意気込み、ルクスたちの元に戻った。




 聖女の神聖力が回復するまで五日間、護衛団は砦に滞在することとなった。

 三日間の間、バートは砦の書庫で一心不乱に神聖術に関する本を読み漁った。

 ルクスはバートを生暖かく見守りつつ、聖女の護衛の編成について聖女の護衛である黒髪の聖騎士──セラヤとの話合いに出席することとなった。

 出席者はセラヤ、イサイアス、フィンセント、ライナー、ルクスの五名だ。

 セラヤはルクスを見るとき、優しい光を湛えた目を向けてくるものだから、ルクスは嬉しいようなもどかしいような不思議な思いを抱いた。


「では、聖騎士殿や神殿騎士殿には、馬車の右側を担当していただき、馬車の左側を自由の翼、馬車の前方を第一騎士団。馬車の後方を栄光の階と聖なる誓いで固めることとします。よろしいかな?」


 司会を務めるイサイアスの言葉に全員了承した。


「では、これにて会議を終わらせていただきます。聖女様は明日、本調子に戻ると聞いておりますので、明日から聖女様がアルヒ王国東部の慰問に赴かれると思われます。皆さん、そのつもりで準備をお願いします」

「「はい」」


 会議室から出た五名はそれぞれ雑談をしながら、書庫に向かったり自室に向かったりした。


「あの、セラヤ卿」


 ルクスは思い切ってセラヤに話しかけた。


「なんでしょう?」

「俺は貴方に会ったことがあるんでしょうか?」

「……会ったことがあるかもしれませんね」


 セラヤは困ったように笑った。そして、ルクスに背を向けた。

 ルクスは言葉を投げかけることができず、立ち尽くした。




 東部を慰問するために巡る聖女の一団はたちまち噂となり、行く先々で、歓待を受けた。

 行く先々で多くの人々を癒し、何度も神聖力を枯渇させて顔色が悪くなる聖女を護衛団は見ているしかなかった。

 行く先々でバートが神聖術について熱心に書物などから学んでいる様子を見た護衛団の者たちは自分も何か役に立ちたいと神聖術について学ぶようになった。

 書物から得た情報を統合したバートは、街に滞在することになった頃、街の神殿に向かった。

 そして、一心不乱に祈るようになった。

 神聖術の全ての書物の共通点は《《祈り》》だった。

 祈りが神聖術の始まりだ、とバートは思った。


(神々と生命の樹よ、どうか僕の祈りに応えてください。僕は聖女様を支えて差し上げたいのです)


 バートの熱心な祈りが届いたのか、バートの前にはホログラムウインドウが現れた。


[スキル【神聖術】、【祈祷】を取得しました]


 バートはガッツポーズをし、泣きながら神を賛美した。


「神様!ありがとうございます!よっ!世界一!」


 果たしてこれは賛美の内に入るのだろうか。はなはだ疑問だが、本人は賛美だと思っているので、問題ないだろう。


 ちなみに、この三日後、ルクスとラエティティアも【神聖術】と【祈祷】を取得した。




 神聖術を取得したバートはまだまだ神殿で祈っていた。聖女が回復するまであと二日。時間は限られている。


(神々と生命の樹よ、どうか僕の祈りに応えてください。僕は聖女様に神聖力を譲渡したいです。どうすれば良いでしょうか?)


 熱心な祈りが届いたのか、バートは暖かな力を感じた。目を開けると、目の前にホログラムウインドウが浮いていた。


[スキル【神聖力感知】、【神聖力譲渡】を取得しました]


 バートは狂喜乱舞した。


「神様ーー!!ありがとうございます!流石、世界一!」


 狂喜乱舞するバートを周りにいた信者たちは目を丸くして、見ていた。


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