古きに思いを馳せる
「当時のパサラは10歳だったそうなんだが、
その年齢で既に、各国お抱えの宮廷魔導士なんかより、
持ってる魔力の量が多かったそうだ。」
「おお~!流石パサラさんですね」
「うん、流石はパサラの姉さんだぜ、
子供の頃から一流の魔導士になる素質があったんだね」
「そんでもって、封印されちゃったって訳さ」
「え?それって、如何いう事ですか?」
「ポラリの姉さん、オレ達、まだパサラの姉さんが、
魔王の娘で、魔力量が多かったって話しか聞いてませんよ」
「そのものズバリだよ、パサラは魔王の娘で、
持ってる魔力が多いってだけで、封印されちまったのさ・・・」
「それって、若しかして若しかすると、
犯罪者の子供は、犯罪者になるだろうって理屈ですか?」
「何だそりゃ?そんな訳あるわけ無いじゃん」
「それが実は、コインの言ってる事が正解なんだよ、
当時の権力者共は、魔王の子供で、魔力が多いパサラを恐れて、
あれだけの手間と費用を掛けて封印を施したそうだ。」
「マジで、そんな馬鹿らしい理由で、
世界が、何年も使い続けられる程の量の、
魔石を使ったって言うんですか?」
「無駄遣いにも程があるね」
「それだけ、パサラの事が怖かったんだろうね」
「それで良く、パサラさんの方を始末しようっていう、
恐い話にならなかったですね」
「どっちかって言うと、そっちの方が、
馬鹿な、お偉いさん共が考えそうな案だよね」
「ああ、その辺は多分だけど、
流石に、勇者イチローが保護したパサラを殺しちまったら、
それがバレた時に、大変な事になるって気が付いて、
封印に留めたんだろうな・・・」
「そう言えば、その勇者イチローは、
その頃、何してたんですか?」
「そうだよな、その事を知ったら止めそうだもんな」
「勇者イチローは、魔王を討伐して暫くしたら、
女神フェルナ様に依って、元の世界へと帰されたんだとよ」
「それじゃ、その当時の権力者達は、
もう既に、元の世界へと帰って、居なくなっていた勇者を恐れて、
パサラさんを封印するだけにしたっていう事ですか」
「まあ、連中がビビリだったお蔭で、
パサラの姉さんの命が助かったんだから、結果オーライだろ」
「ああ、一度来たって事は、また来るかも知れないって事だからね、
その時に、勇者イチローが保護したパサラを殺しちまってたら、
どんな、恐ろしい報復を被るか分かったもんじゃ無いだろ?
只でさえ、勇者イチローが身内に甘いって話は有名だったそうだから、
とてもじゃ無いけど、強硬な手段は取れなかっただろうね」
「なる程、そう言われて見れば、
確かに、そうかも知れませんね、
しかし、勇者イチローも、そこまで仲間思いの人だったんなら、
自分が居なくなった後の、
パサラさんの身の振り方まで、考えて置いてくれれば良かったですね」
「おう!確かに、コインが言う通りだよな、
馬鹿な、お偉いさん方に歯止めを掛けられる人が居なくなったら、
どんな、碌でも無い事を考えるかなんて分かりそうなもんだけどな・・・」