口は災いの元
「まあ、魔石が採れる様になったお蔭で、
それまで、魔法学園に対する各国からの寄付のみで、
国の運営をしていたラメール国が、
自国の主導で国の運営を出来る様になったんだから、
正に『スイ・エン山』様々だろうな・・・」
サナエが、御者台の隣に座るコインに、そう告げる
「その魔石が採れる山って『スイエン山』って言うんですか?
変わった名前ですけど、何か意味があるんですか?」
「ああ、正確には『スイート・エンジェル山』ってんだよ、
随分と長ったらしくて呼び辛いから、
皆、略して『スイ・エン山』って呼んでんだ」
「スイート・エンジェル山とかってマジですか・・・
また随分と甘々な名前の山なんですね」
「元々は、良く無い『何か』が封じ込められているとの、
古くからの言い伝いがあって、
原住していた人達からも『忌山』って呼ばれて、
忌み嫌われていた山らしいんだけど、
この国の、国家元首で在らせられるエクリプス様の、
御親戚とか言う人からの依頼で名前が変えられたとか聞いてるぜ」
「国家元首って言えば、この国で一番偉い人ですよね?
親戚とはいえ、そんな御方に依頼が出来るなんて凄いですね」
「ああ、何でも他国のお偉いさんとかっていう話だけど、
高が山の名前とはいえ、他の国に、そんな頼み毎が出来るとこから見ると、
その国でも相当な地位に居る人物だろうな・・・」
「なる程、サナエさんの言う通りですね、
そう言えば、今更なんですけど、
その『スイ・エン山』の魔石を採掘しているって事は、
その山に封じられてた良く無い『何か』とか言うのの、
心配は無くなったって事なんですか?」
「ああ、その辺の事はオレも良くは知らないんだけど、
魔石を採掘してるって事は、封じられてたモンが退治されたとか、
大したモンが入って無かったとかじゃねぇの?」
「遥か大昔の事とは言え、
そんなに大きな規模と予算を費やして封印したものが、
大したモノじゃ無かったなんて有り得るんですかね?」
「アルアル!どうせ当時のお偉いさん方が、
無駄に大騒ぎをしていただけだったとかで、
どうせ、蓋を開けてみたら、
三流悪魔とかが封じられてたとかじゃ無ぇのか?・・・って、痛ででででっ!」
「ど、どうしたんですか!?サナエさん!」
「そ、それが、何か知んねぇけど、
いきなり首が捩じられるみてぇに、
超痛み始めたんだよ、痛ででででっ!」
「と、取り敢えず、
危ないから、馬車を路肩に寄せて止めましょう!」
「おう!分かった!痛でぇ~!」
コインは、首に痛みを訴えるサナエが、
馬に指示をして、馬車を路肩に寄せて止めるのを確認すると、
馬車の中に居るポラリらの指示を仰ぐために、
御者台との境にある開口部から顔を入れて、声を掛けた。
「た、大変です!ポラリさん、パサラさん!・・・って、
何やってんですか?パサラさん」
コインが、開口部から馬車の中を覗いたところ、
『サナエ』と書かれた布を張り付けた
ワラ人形の首を、グイグイと捻っているパサラの姿が見えた。