『例の山』の話
「このまま街道沿いに進んだら着くという街・・・
確か『ガンセキの街』でしたっけ?
ブラック村からは、割と近いという事だし、
サナエさんは、何度か行った事があるんですか?」
何れは、ラメール魔法国の首都『学園都市ツクバーダ』へと続く、
前方に向かい、真っ直ぐに伸びている街道を、
パッカラパッカラと2頭立ての馬車が進んで行く、
その御者台に座るコインが、隣で御者を務めているサナエに、そう尋ねた。
「ああ、ガンセキの街で合ってるよ、
あそこは、この辺じゃ割と大きな街だから、
村で採れた野菜とか、ファー達の毛皮なんかも、
親父と一緒に何度か運んだ事があるぜ」
「へ~、ファー達の毛皮も運んでいたんですか、
じゃあ、ガンセキの街では、毛皮の加工なんかもやってるんですか?」
「いや、普通の魔獣の毛皮なら、あの街でも加工が出来るけど、
ファー達のは、超高級品だからね、
あの街にある店の本店が、コウガ王国とか、ルクシア共和国とかにあるから、
そっちに運ばれてから、一流の毛皮職人とかの手によって、
コートとか、襟巻とかに加工されてるって親父に聞いた事があるな」
「この国の商会では扱って無いんですか?」
「ああ、元々この国は魔法学園だけで、成り立ってた国だからね、
一般生活に必要な商品なんかの流通に関しては、
全て他国の商会頼みだったのさ、
つい最近になって、魔石が採れる山が発見されたり、
希少な素材が採れる魔獣が生息してるダンジョンが、
発見されたりしたもんだから、
国が後押しをして、それらの品を扱う『ピンハネ商会』って所が出来たぐらいだね」
「何か、名前だけ聞くと阿漕な商売してそうですね」
「ん?コインが、何言ってるのかは分からんが、
国が関連してる商会で不正な事は、まず出来無いと思うぜ」
「まあ、そうですよね、
そう言えば、さっきサナエさんが言ってましたけど、
魔石が採れる山ってのが有るんですか?
僕は、魔獣から素材として採れるだけとばかり思ってたんですけど・・・」
「ああ、それだったら、コインの思ってる通りで間違い無いぜ、
何せ、この国にある魔石が採れる山ってのは、
大昔に、人為的に造られたもんだからな・・・
オレには、到底理解が付かない事なんだが、
当時の、お偉いさん方が、良く無い『何か』を封じ込める為に、
山を丸々魔石で覆い尽くしたって言う
嘘みたいなホントの話らしいぜ」
「山を、丸ごと魔石で覆い尽くしたんですか!?
一体、どれ程の量の魔石を集めれば、そんな事が出来るんですかね・・・」
「ホント、酔狂な話だよな、
聞いた話じゃ、最近の省エネルギータイプの魔導具で使うなら、
後50年は持つ量の魔石が採れるって話さ」
「へ~、実際には魔獣から採れる魔石もあるんだから、
採り過ぎない様にすれば、もっと長く採掘出来そうですね」