由緒正しき・・・
「お~い村長!馬達を連れて来たぞ」
村長の案内で、村が所有する馬車が置いてある駐車場で、
サナエ一押しの馬車に荷物を積み終えたコインらの元に、
馬の手綱を1頭づつ引いたシロミミと、その妻がやって来た。
ちなみにサナエが、お薦めという馬車は、
コウガ王国製の最新型との事で、高性能の衝撃吸収装置が装着されているので、
荒れた街道を走る馬車に付き物の、
お尻が破壊される様な振動を殆ど感じない程の、優れものとの事であった。
「どうだ?シロミミ、丁度良さそうな馬は居たか?」
村長が、そうシロミミに尋ねる
「おう!村長、ウチのサナエを始め、
お客人方は、皆、お若い方ばかりだからな、
気が合う様にって、馬の世話番のオグリ爺が、
若くて、生きの良い牡馬と牝馬を1頭づつ選んでくれたよ」
「オグリ爺が選んだなら間違いねぇな」
「おう!早速だが、俺とウチのやつで馬車に繋いじちまうわ」
「おう!頼んだぜシロミミの」
村長の返事を聞いたシロミミは、
妻と一緒に、馬を馬車へと繋ぐ作業に入る
「オレも手伝うよ!親父、お袋」
どうやら、冒険者になる前は、
いつも、シロミミの作業を手伝っていた様で、
手際よくサナエも、その作業を手伝い始めた。
「もう少しで準備が終わるから、
ちょっと待っててくれや」
その作業を眺めながら、村長が、そうコインらに告げる
「ああ、全然構わないよ、
何せ、こっちは、旅するのに有り難い馬車を贈って貰ってるんだしね、
多少、村から出発するのが遅れた所で、
馬車でなら、アッと言う間に取り返しちまうさ」
「快適な旅を御案内出来る」
「僕は馬車に乗るのは初めてなんで、凄く楽しみです。」
『キュキュ~!』
「そうか、ファーも馬車に乗るのが楽しみだそうだ・・・
そう言えば、さっき、そっちの嬢ちゃんが言ってたが、
あの馬らの名前は『サクラ』と『バサシ』にするのか?」
「それって、確かパサラが、ライ様方と冒険者をしていた時に、
乗ってた馬車馬の名前だよね?」
「そう、由緒正しき名前」
「ふ~ん、そうなのか、
言葉の意味は分からんが、馬達もプルプル震えて喜んでるみたいだから、
良い名前みたいだな」
「いやいや、村長さん、
僕は、馬達が喜んで震えてるんじゃ無いと思いますよ、
パサラさん、その名前って意味を知った上で付けてるんですか?」
「知らない、
フィーリングで決めた。」
「フィーリングなのに、
ピンポイントで、この2つに決めるって・・・」
「パサラは、昔っからライ様に、
ニホンの話を色々と聞いていたから、
馬に関係した単語の中から、この2つを選び出したんじゃないか?」
「へ~、この名前には、馬に関係した意味があるのか」
コインらの会話を聞いていた村長が、そう告げる
「そう、美味しく頂かれない様に『頑張れ』って意味がある」
「やっぱり、パサラさん、意味が分かってて名付けてますよね!?」




