子不知(こしらず)
ブラック村での滞在を終え、
いよいよ、コイン達が次の街へと向けて出立する朝を迎えた。
「それじゃ皆さん、ホント色々とお世話になりました。
この村は、ファーの故郷でもありますので、
冒険者になって、ダンジョンでの活動が落ち着きましたら、
また顔を出そうかと思いますんで、宜しくお願いします。」
『キュキュキュ~!』
「当初の予定より、だいぶ長い事、世話になっちまったね、
私らとしても良い骨休みになったよ、
今、コインも言ってたが、今度来る時には首都の名物や、
ダンジョンの土産話なんかも持って来るから楽しみにしてなよ」
「感謝する」
「お袋、首都に行ったら美味しいもんでも送るからな、
親父、オレが居なくなるからって泣くんじゃねぇぜ」
「「「「「ん?」」」」」
『キュ?』
「え~と、何でサナエさんが旅支度で、
僕らの側に加わっているのかを、お聞きしても宜しいでしょうか?」
「そんなの、オレも、
コイン達と一緒にダンジョンアタックに行くからに、
決まってるじゃねぇかよ」
「えっ!?そうなんですか?
僕は初耳なんですけど、ポラリさん達は知ってたんですか?」
「いいや、そんな話は聞いて無いね、
最近、いつも私らの周りをウロチョロしてたもんだから、
一緒に居たのに、ちっとも違和感を感じなかったよ」
「同感」
「おい、サナエ!
お前ぇ今、ダンジョンアタックに行くって言ってたみてぇだが、
一体全体、どういう心算なんでぇ?」
「そんなもん決まってるじゃねえかよ、クソ親父!
オレは、ダンジョンを攻略して有名に成って、
オレの事を見捨てたヤツらを見返してやるんだよ!」
「お前ぇは、まだ、そんな事を言ってやがるのか!
『闇ネコ』の方々の心遣いに気付けねぇなんて、
ホント馬鹿だな、お前ぇは・・・」
「うるせぇ!うるせぇ!うるせぇ!」
「どういう事なんですか?シロミミさん」
「ああ、お騒がせしちまって悪いな、お客人方、
サナエのヤツは、呪いを受けちまった段階で、
直ぐに『闇ネコ』から退団させられちまったのを、
未だに根に持っていやがるんですよ」
「う~ん、まあ、身体能力が落ちちゃったサナエさんを、
退団させるのは仕方が無い事かも知れませんが、
呪いを受けて直ぐにクビっていうのは、
確かにスッキリしないかも知れませんね」
「だろ!?だろ!?」
「そりゃ、ちょっと違うんじゃ無いか?コイン、
『闇ネコ鍋シスターズ』っていや、
代々、世代交代はしてってるものの、
指導役のベテラン冒険者が何人かは残ってる筈だ、
その人らが見れば、サナエが受けた呪いが面倒なものだなんてのは、
一目瞭然なんだから、
一日でも早く治療を始められる為にって、
直ぐにでも退団を、させるのは当たり前だと私は思うぞ」
「私も、そう思う」
「なる程、この退団には、
そういう意味があったんですね・・・」