長い物には・・・
「おう、サナエ、久し振りの顔見せだな」
父親のシロミミと、昭和のコントの様な口論を続けているサナエに、
村長が、そう声を掛ける
「はい!村長さん、
オレは最近、自宅の警備という新たな生き甲斐を、
見い出していたっす!」
「まあ、それは良いから、
そこに、シロミミと一緒に座れや」
そんなサナエに、村長は自分の正面の床を指差しながら告げる
「は~い、分かったっす!」
どうせ、ここまで来たならと諦めたのか、
サナエが素直に、村長の正面の床へドスッと腰を下ろすと、
その隣に、父親のシロミミも腰を下ろした。
「まずは、俺の並びに座ってる、
客人の方々の説明からになるんだが、
向こうの女性2人はA級冒険者のポラリさんと、パサラさんだ」
「えっ!?あの子らがA級だって!?」
サナエは、自分と然程、年が変わらぬ様に見える2人が、
A級冒険者と聞いて驚きの表情を浮かべた。
「ええ、お二人は身内にS級冒険者を持つ、
実力者コンビなんですよ」
驚くサナエに、コインが追加の情報を語った。
「身内にS級って・・・あっ!
ほ、ほ、ほ、本日は、お日柄も良く・・・」
サナエは、自分に話し掛けた
村長の隣に腰を下ろしている、自分と同年代か年下に見えるコインを、
訝しげな表情を浮かべながら見返すと、
村長に紹介された2人の身内に、
世界でも、数少ないS級冒険者が居ると聞き、
2人が、止事無き身分の人物達と気付いて、
慌てて、うろ覚えの敬語で挨拶をしようとした。
「そんなに、私らに気を使う必要は無いよ、
身内が如何であれ、今の私らはタダの冒険者だからね、
それから、勘違いをされるかも知れないから言っとくけど、
私らがA級なのは、親の七光りとかじゃ無くて、
実力で、勝ち取ったもんだからね」
「我を敬うが良い」
「は、はい、オレ・・・私も冒険者だったんで、
そんなんで、A級に成れないのは分かってます。」
「そうかい、分かってくれてて良かったよ、
村長さんに紹介して貰ったが、
改めて、ポラリだよ宜しくね」
「パサラ、宜しく」
「は、はい!オレ・・・私はサナエです!
宜しく、お願いします!」
「言い難かったら、別に『オレ』でも全然構わないよ、
何者へも媚び諂わないのが、私ら冒険者だからね」
「善きに計らえ」
「あ、あざ~っす。」
「それからな、サナエ、
俺の隣に座ってるのが、彼女らのパーティーに新たに加わる事となった
コインと、その相棒のファーだ、
ファーは前に、お前の呪いを解こうとした時に会ってるだろ?」
「はい、村長さん、
ファー、その節は世話になったね、
それと、あの~、
コインさんも、お二人のパーティーに加わると言う事は、
それなりの、上級冒険者なのでしょうか・・・?」
「見た所、サナエさんは、僕と同年代みたいだし、
僕の事は、コインと呼んでくれれば結構ですよ、
それから、僕は他国から冒険者に成る為に、
この国へと来たばかりなんで、まだ、冒険者ランクは無いですね」
「何だよ、新人冒険者なのかよ全く・・・オレを焦らせるなよな、
そんじゃ、宜しくなコイン」
「態度変わり過ぎだろ!」