呪怨
「それからの3年間、
娘は『闇ネコ鍋シスターズ』の入団テスト合格を目指して、
毎日のトレーニングを欠かさず続けていやした。
そして、成人年齢の15を迎えた今年の春、
ピコピコ村に入団テストを受けに行くと言う娘を、
カミさんと共に、送り出したって寸法でさぁ・・・」
ブラック村に暮らすネコ獣人のシロミミは、
遠い昔の事を、思い起こすかの様な表情を浮かべながら、
コインらに、そう語った。
「『闇ネコ』に入ってたって事は、
その時は、トレーニングの甲斐あって合格したって訳ですね?」
「ええ、日々のトレーニングと、持ち前のスキルのお蔭で、
今年の、新入団員の中ではトップの成績で合格出来たんでさぁ」
「へぇ、トップの成績は凄いねぇ、
そりゃ、即戦力で通用するって認められたも同然な扱いだろうね」
「そのレベルなら、実戦で慣れさせた方が成長する」
「へい、お客人が仰った様に、
娘は、簡単な連携攻撃の練習を積んだだけで、
実施訓練って事で、クエストへの参加を許されたそうです。」
「実力は元々あるから、習うより慣れろって事ですね」
「ええ、定期的にメンバーを補充している『闇ネコ』は、
長い教育期間を費やすよりも、実戦に重きを置いているそうです。」
「自分の身を守れる力があるなら、
確かに、その方が早く一人前になれるだろうね」
「聞いただけの話より、自分で経験した方が身に付く」
「あっしも、その意見には賛成なんですが、
問題は、娘が入団をしてから初めて参加した
その、クエストにて発生したんでさぁ」
「一体、娘さんの身には何が起こったんですか?」
「ええ、それなんですが、
初参加の娘を連れて行くって事で、クエストの内容としちゃあ
危険度が高い討伐系のクエストじゃ無くて、
森の中での、植物を採取するクエストだったそうです。
それ程、危険度が高い森じゃ無いって事で、
斥候職見習いの、娘が先頭に立って森に分け入ってたんですが、
運悪く、自然発生型のトラップに引っ掛かったって寸法でさぁ・・・」
「そりゃまた・・・本当に、運が悪かったとしか言い様が無いね」
「ある意味、不可抗力」
「ポラリさん、自然発生型のトラップって何なんですか?」
「そりゃなぁ、コイン
誰かが仕掛けたとか、ダンジョンなんかのトラップとは違って、
その場所で命を落とした何かが、
強い想い、まぁ多くの場合は恨みとかの怨讐なんだがな、
そういったもんを残して逝った時に自然と発生する、
トラップの『様』な、もんなんだよ、
誰かを引っ掛けようとしている訳じゃ無いから、発見がし辛いし、
偶々、運悪く、その場所を通ったってだけで発動しちまうんだ・・・」
「黒魔法使い以外では、気付きにくい」
「そんなのって、防ぎようがあるんですか?」