驚きのプライス
「ああ、さっき、そっちの姉ちゃんが言った様に、
一枚のハヤイの毛皮からはコートが5着は作れるんだが、
一着当たりの単価が違うんだよ、
素材の価格で600万ギルぐらいで、
販売価格となると1着一千万ギルにはなるらしいぜ」
ハヤイの毛皮が3千万ギルで売れると聞いた
コインらが驚きの声を上げるのを見て、
ディック村長が、そう告げる
「毛皮のコートが高いってのは分かりますけど、
普通だったら、そこまでの値段はしませんよね?」
「ああ、前にコウガ王国の王都に行った時に入った高級服店で見た
最高級っていう『モコモコ・ミンク』の毛皮のコートでも、
600万ギルぐらいだったぜ」
「あれは、実に良い手触りだった。」
「ああ、ただ見た目が綺麗ってだけじゃ、
流石に、そこまでの値段はしねぇさ、
ハヤイの毛皮のコートの売りは、
魔力を通すと硬くなって刃が通らなくなるってとこだな、
そこそこの腕前のヤツが魔鋼製の剣で切り掛かっても、
着てる人に怪我が無いって話だぜ」
「あれ?毛皮の魔力の通りが悪くなるから、
ハヤイ達は脱皮する様に進化したんじゃ無かったんですか?」
「ああ確かに、ついさっき村長さんは、そう言ってたよな、
それだと、ちゃんとした防刃性能が発揮されないんじゃ無いのかい?」
「矛盾している」
「そりゃ、魔力が少ないハヤイ達だからって話だぜ、
ハヤイ達と人族とじゃ、元々の魔力量が全然違うんだからよ、
そこそこに魔力を持ってる人族だったら十分に流せるんだよ」
「ああ、毛皮が古くなって来ると魔力の流れが悪くはなるけど、
流す魔力の方を強くすれば大丈夫って事なんですか」
「普通の魔獣は、身体強化程度にしか魔力を使わないからねぇ・・・」
「魔力の出力調整も人族の方が上」
「それに、人族には魔導具っていう便利なモンもあるしな、
魔力が少ない金持ちは、魔力を蓄えて置く魔導具と組み合わせて、
ハヤイの毛皮を着て身を守ってるって話だぜ」
「一千万ギルの毛皮のコートに、魔導具ですか、
確かに、お金に余裕がある人じゃ無いと手が出ませんよね」
「ああ、何せ毛皮のコートだから寒い時にしか着ないしな」
「用心深い人なら、暑くても我慢しながら着てるかも知れない」
「ヤスイや、ファー以外の子供達の毛皮だったら、
同じ性能で、そこまでの値段はしないがな、
売値にしてもヤスイの毛皮で1千万ギル、
ファー以外の子供の毛皮だと500万ギルってとこだぜ」
「母親譲りの、白い毛並みを持ったファーのは、
やっぱり高いんですか?」
「大きさから考えると、精々がコート2着ってとこかね・・・」
「ファーの毛皮の方がモフモフ」
「ああ、そっちの嬢ちゃんが言う様に、
軟らかい毛質を持ったファーの毛皮は人気が高いからな、
父親のヤスイより高い一千五百万ギルで売れるぜ」
「毛皮の大きさから考えると破格の値段ですね」
「ああ、コートにしたら母親のハヤイより高値を付けるだろうね」
「あのモフモフ感には、それだけの価値がある」




