スキルの再認識(さいにんしき)
「そういえば、コイン君は肝心な狩りの経験はあるのかの?」
村に1か月の間だけ留まって狩りをするというコインに、
村長が、そう尋ねる
「故郷の村に居た頃は無かったんですが、
こちらに訪れるまでの間に、これだけ狩りました。」
コインは、そう告げると魔導リュックの中から解体した兎魔獣の肉や、
猪魔獣の肉は台所の作業台の上へ、
そして、解体前の兎魔獣と狼魔獣の死体は土間へと、其々を取り出して置いた。
「ほぉ・・・『ツノウサ』に『ムツアシ』の肉、
それに解体前のツノウサと『ソウロウ』の死体ですか、
流石に冒険者になってダンジョンを目指すだけあって、
コイン君は優秀な戦闘能力をお持ちの様ですじゃ」
村長が、それらを見て感心する様な素振りを見せる
「僕が初めて見る魔獣ばかりだったんですけど、
これらの魔獣は、そういう名前だったんですか」
「いえ、これは、この辺りの街や村での呼び名ですじゃ、
確か正式には『角兎』『六本足猪』『草原狼』だったと思われましたな」
「なる程、この地域での呼び名でしたか、それをお聞きして安心しました
草原狼の呼び名ですが、その言葉を聞く度に心を痛めるナイスガイが、
大勢居るんじゃないかと思い心配してしまいましたよ、
それと先程、村長さんは流石とか仰ってましたけど、
ムツアシの突進力は兎も角、それさえ気を付ければ、
全体的に大した強さでは無いんじゃないですか?」
「それは、コイン君が実力者じゃから、そう言えるのじゃよ、
普通の村人では複数で当たって追い払うのが精一杯といったとこですな、
特にソウロウなどは群れで行動する事が殆どなので、
村人が一人の時に出くわしたら、まず助からんでしょう・・・」
「そうなんですか・・・それは知りませんでした。」
コインは、自らの剣術スキルや体術スキルが意外と仕事をしている事に気付き、
女神ちゃん(小)の事を、少し見直す事とした。
「それにしても、こちらの肉の解体は見事ですな、
これは、コイン君が自分で解体した物なのですかな?」
「はい、狩りの経験は無かったのですが、
村では、村の人達が狩って来た獲物を解体する作業をしていましたんで、
解体スキルを得る事が出来たんですよ」
「なる程、解体スキルをお持ちでしたか、
それならば、この手際の良さも納得が行きますじゃ、
それで、こちらのツノウサとソウロウの死体の方ですが、
宜しければ村の者達に解体をさせますが、如何致しますかな?」
「村に井戸は、あるのでしょうか?」
「ええ、幸いにして地下に良質な水脈がある様で、
水量が豊富な井戸が、ありますのじゃ」
「それならば、僕が解体した方が多分早いと思いますんで、
チャチャッと、やっちゃいますよ」
「それは助かりますじゃ、肉の方は兎も角として、
皮剝ぎは、スキル持ちのコイン君の方が断然に上手いと思いますから、
後から鞣し革に加工する際の事を考えれば、その方が良いですじゃ」
「分かりました。
それでは、早速ですが行ってきますんで、井戸の場所を教えて頂けますか?」
コインは、土間の死体のみを魔導リュックに再び収納しながら、
村長に、そう告げた。