日本太郎
「今、ポラリ君から質問があった
秘薬の名前と、採取して来て欲しい、その素材なんだがね、
秘薬の名は『アオジールA錠』で、
その原材料となる素材の名は『ケルー』という薬草なのだ」
街長のタメゴロが、ポラリの質問に答える
「秘薬というだけあって、確かに聞いた事が無い薬剤だね、
それで、この特例クエストは私らに依頼するって事で良いのかい?
それなら、もう少し詳しい話を聞かせて貰いたいとこなんだが・・・」
「知らない」
「何か、名前からして凄ぇ効きそうっすね」
「どっかで聞いた様な・・・」
「ああ、君らと話して見て確信したよ、
この件は、君ら以外に解決が出来ないとね」
「そんじゃ、私らに任せて貰うって事で、
もう少し詳しく聞かせて貰っても良いかい?」
「ああ、まずは、この秘薬を必要としている者から、
説明をさせて頂くとするが、
この『アオジールA錠』を服用しているのは、
俺の一人娘である『メタボンヌ』なのだ」
「街長さんの娘さんだって?」
「ああ、俺のたった一人しか居ない大事な娘だ
5年前に妻を流行り病で亡くしてからは、
娘の大好物である肉と甘味を、
毎日、タップリと食べさせながら育て上げて来たというのに、
最近、体調を崩しがちでな、
街の医者に見せたが、原因がサッパリ分からなくて困ってたところ、
例の、聖剣を譲ってくれた行商人が、
『この秘薬なら、もしかしたら効果があるかも・・・』と言うので、
半信半疑ながらも、娘に与えて見たところ、
何と、一時的に回復の兆しが見えてな、
医者が、『このまま、この薬を飲み続ければ全快する可能性がある』というので、
追加の注文を出そうと、あの行商人を探したのだが、
時すでに遅く、もう既に、この街を発った後でな・・・
それならと、近隣の街や村に、問い合わせの使いを出したのだが、
不思議と近隣には立ち寄った形跡が無く、打つ手が無かったんだ」
「へ~、毎日、しっかりと肉を食べてたのに体調を崩すなんて、
確かに、おかしな話だね・・・」
「甘味も然り」
「たしかに、その両方を毎日タップリ食べてたなら、
体調を崩す原因が考えられないっすね」
「あの~、皆さん、マジで言ってるんですか?
それと、街長さん、その医者は街から追い出した方が良いですよ」
「俺の方でも、ギルドの連絡網を使って、
あの親切な行商人『ジョン・スミス』殿を探して貰ったんだが、
一行に、その後の足取りが掴めんのだ」
街長の弟で、この街の冒険者ギルドのギル・マスを務める、
トンチキーが告げる
「へ~、ギルドで探しても見付から無いんじゃ、
そっちの方は、もう諦めた方が良いかもね・・・」
「同感」
「一体、何処に行っちまったんですかね、
その『ジョン・スミス』とかいう名前の行商人の人」
「僕は、その名前の人物自体が実在するのかを、
疑問視します。」