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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第1章:ヘタレ剣士とアラモード

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第4話:Process1[天地滅殺]Flow4

 依頼を断り、愛するお家に戻ろうとした俺。

 その俺にエニアは宣告する。


「この依頼を断ったら、リガルさんは共同住宅から出て行ってもらいます!」

「……は?」


 何言ってんのこいつ。なぜお前にそんな権限がある?


「リガルさんが住んでいる共同住宅の大家、私の伯母なんですよ。そこで伯母さんに相談したら、立ち退きを盾に仕事を依頼すればいいってことになりまして」

「……え?」

「リガルさん、家賃を結構滞納してますよね? 伯母さん怒ってますよ。何度督促しても払ってくれないって。だからこのままだと本当に立ち退かされることになりますよ? うち追い出されて、行くあてあるんですか?」


 若干、にやにやと意地悪い感じで問い詰めてくるエニア。

 ヤバい。『家賃? フッ、そんなものを払っていた時期が俺にもあったな……』くらいの感じで考えてた。


 そしてエニアの言うとおり、俺はあのアパートを追い出されたら行く場所がない。


「お、おい待て。引きこもりからお家を奪って外に放り出すとか、お前には人の心がないのか!」

「何とでも言ってくださ~い。法律は私の味方です~。リガルさんにはこの仕事を受けてもらいま~す」

「ええ……なんでそんなまでして俺に依頼しようとすんの?」


 俺がうんざりしながらそう言うと、それまでとは打って変わり、エニアは少し泣きそうな顔になった。


「う……実は、私……師匠のお店のスペースを貸してもらって武器屋を始めたんですが、全然売れなくて……そのせいで、お店の『商業ランク』を下げてしまったんです……」

「どのくらい?」

「S級からC級になっちゃいました……」

「すげえ量の泥を塗ったな」

「はい……だから、早く武器屋を成功させて評価を取り戻したいんです……師匠は気にするなって言ってくれたんですが、そんなわけにもいきません……」


 エニアはすっかりしょんぼりしてしまった。


「う~ん……ちなみに、お前の職業ランクは?」

「そっちもD級からE級に下がってます……」

「じゃあ割と崖っぷちじゃねえか」

「そうなんです……」


 ますます気落ちした様子のエニア。


「それで宣伝のために冒険者に評価してもらいたいわけか」

「はい……なのに誰も引き受けてくれなくて……私みたいな子供がまともな武器作れるわけがないとか、遊びに付き合うほど暇じゃないとか言われて……でも誰でもいいわけでもなくて、腕の立つ人でないと評価になりませんし……」

「……で? なんで俺?」


 そこが分からん。自分で言うのも情けないが、今の俺に『腕の立つ』要素は無いと思う。

 尋ねる俺に、エニアは不意に真剣な表情を向けてきた。


「リガルさん、先日馬車を魔物から助けてくれましたよね? その時に、偶然この【観測機《ヴァリィ》】でリガルさんの動きの解析が出来たんです」


 額のゴーグルを指し示し、エニアはそう言った。


「俺、ほとんど剣振れてなかったけど?」

「それでも、身体の使い方などの要素から割り出せたんです。リガルさんは『随変一心流』の使い手ですよね?」

「本当に分かるんだな……そうだよ」


 かつて俺が学んだ流派・『随変一心流』。それはどのような状況でも、どんな武器を使っても戦えるようになることを目的とする、いわば”汎用性の戦闘術”だ。


 まあ、その動きが無意識に出ていたってのは、別に納得できるけど……、


「『随変一心流』だったら、なんだっての?」


 依然俺が選ばれる理由が分からん。するとエニアは説明を続けた。


「武器の臨床評価では、多様な状況で、多彩な武器を使ってもらいます。なので、どんな武器でも使える能力を持つ『随変一心流』の人はうってつけなんです」

「なるほど、そういうこと。けど悪い、やっぱ無理」


 俺の流派を買ってくれたのは嬉しいが、俺はやはり断らざるをえない。


「な、なんでですか!?」


 納得いかない様子で慌てるエニアに、俺は端的に告げた。


「俺、もう武器を使えないんだ」

「……はい?」


 そして今度は、俺が事情を説明した。

 詳しい原因までは言わなかったが、俺は自身の異能【棄却】によって、武器を使って戦おうとすると、眩暈と心臓の激しい痛みに襲われて満足に動けなくなる事を話した。


 するとエニアは考え込み、


「う~ん……じゃあその原因が分かって、武器が使えるようなら、お仕事を受けてもらえるんですね? どういったときにその異能がでるのか、詳しく話してもらえませんか?」


 なんて言い出した。


「お、おい待て! なんで俺がそこまで協力してやらなくちゃいけないんだ!? そんな心の奥底をつつかれるような真似、俺はごめんこうむるぞ!」


 俺がエニアの提案を拒否すると、エニアはしれっとこう言う。


「じゃあ、共同住宅を追い出されてもいいんですね?」

「うっ……」


 お、俺の安住の地を奪うつもりか……!?

 ……だが!!


「ハッ! 俺レベルの引きこもりが、退去しろと言われて大人しく退去すると思うなよ!?」


 そう言ってエニアをビシッ! と指さし、宣戦布告する俺。

 こうなったら開き直ってやる! ちょっと自分でもどうかと思うけど!

 しかし、


「はぁ……そうですか」


 といった具合に、エニアの反応は落ち着いたものだった。

 そして、


「しかたがありません。本当はこれは使いたくありませんでしたが……見てください」


 と、一枚の書類を見せてくる。


「ん、なにそれ?」

「私の依頼を受けるようにという、冒険者ギルドのギルドマスターからリガルさんへの命令書です」

「はい!?」


 全く予想していなかったエニアの切り札に、俺は驚愕し、困惑した。

 なんでギルドマスターが動いてんだ、この案件!?


「ちなみに、私の依頼を断ったら冒険者としての職業ランクをF級に落とし、クビにするそうです。代わりに、依頼を受けてくれるなら、滞納している家賃は立て替えておいてくれるそうです」

「なんでだ……?」


 俺の呟きに、エニアも首をひねる。


「う~ん……正直私も、なんでギルドマスターさんが動いてくれたのかは分からないんですけど、ここの支部長さん経由でそういう話になっちゃったんです」

「ウソでしょ……?」

「というわけでリガルさん。観念して、どういうときに戦えなくなるのか、教えてもらえませんか?」


 依頼を受けたら、武器を使えないって言ってんのに強制的に武器の評価。

 しかし、依頼を受けなかったら、仕事に加えて愛しい愛しいお家を失う。


「分かったよ、話すよ……はぁ」


 そして、俺の症状について話すこと30分。

 エニアが出した答えは――


「お話を聞く限り……そうですね、リガルさんが戦えなくなる状態、【棄却】状態と呼びましょうか。【棄却】はリガルさんが『戦闘で武器が折れる事による被害』を認識したときに発現するようですね」

「あー、まあ、そう言われればそうかも……」

「と、いうことは、『これは戦闘ではなく、”安全な評価”なんだー』って思ってたら、【棄却】は出てこないんじゃないでしょうか!?」


 活路を見出したのが嬉しいらしく、指なしグローブをはめた手をぐっ、と握りながら結論づけるエニア。

 本当にそんな上手くいくか? なんか屁理屈じゃない?


「というわけでリガルさん、依頼受けてください! お願いします! さもないと……」

「だぁー! 分かった、分かったよ! やればいいんだろ! やれば!!」


 結局、お家を手放したくない俺に選択肢はなかった。


 エニアの言うとおり、【棄却】が発現しないように自分に言い聞かせながら臨床評価とやらをするしかない。


「わー! やったー! ありがとうございます~!」


 喜色満面、俺の手を取ってぶんぶん振り回すエニア。


「じゃあ明日の朝、工房に来てください! 早速お仕事です!」

「はい……」


 正直に言おう。めっちゃヤダ。どこかに俺を拾ってくれる善良なる神はおらんのか。


「あ、やっぱり迎えに行きます。サボられると困るので」

「はーい……」


 神は死んだ。

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― 新着の感想 ―
お家を手放したくないに笑ってしまいました。プロローグにもありましたが、おうち、大事ですもんね。
依頼受けるんかーい! エニアが驚愕して動けなくなるのを見てみたかったなぁ……。
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