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13 マップ機能

【洞窟内:初めて気づくマップ機能】


洞窟の中は、外の世界とはまるで異なる空間だった。

冷たく湿った空気が漂い、壁面から滴る水滴が暗闇の静寂を破ってぽたりぽたりと響く。

足元は不安定で、大小の岩が無造作に転がり、油断すれば簡単に足を取られそうだった。


探偵はそんな環境を慎重に進みながら、ふと視界の端に浮かぶ情報ウィンドウを開く。

……そういえば、"ステータス画面"や"装備画面"と並んで、"マップ"みたいなものがあったな。


軽く視線を移すと——


「……あ、こんなのあったのか。」


画面の隅に、簡易的なミニマップが表示されていた。

それだけではなく、周囲の地形の概要や、近くのモンスターの位置を示す赤い点まで確認できた。


「へぇ……今までは、何となくの気配で察知してたけど。」


探偵は冷静に言いながら、そのまま歩を進める。


「洞窟だと、反響や環境音で位置を把握しにくいから不味いかもなと思ってたけど——」


その時、上空から鋭い鳴き声が響いた。


キーキーッ!!


探偵は瞬時に顔を上げる。


天井から、複数の黒い影が羽ばたいて降りてきた。


《ブラッドバット Lv.20》


素早い動きと毒攻撃を持つコウモリ型モンスター。


群れで襲いかかる習性があり、油断すると囲まれる。



探偵は無駄のない動作で短剣を引き抜き、視線を鋭くする。


「……これなら、簡単そうだな。」


呟くと同時に、最も近くにいた一匹が素早く襲いかかる。


探偵はわずかに身を沈め——


——《シャドウステップ》発動。


一瞬で姿勢が消え、コウモリの背後へと回り込む。

探偵の手に握られた短剣**《ブラッドファング・ダガー》**が、炎をまといながら鋭く閃いた。


次の瞬間——


コウモリの喉元に炎を帯びた刃が突き刺さる。


途端に焼けるような熱が広がり、クリティカルヒットが発生。

コウモリは一瞬で燃え上がり、断末魔の悲鳴を上げながら光の粒子へと変わった。


……その間、エコーはずっと探偵の隣で沈黙していた。


探偵は無言のまま、残りのコウモリを一匹ずつ片付けながら、エコーの方をちらりと見る。


「……」


エコーは、じっと探偵を見つめた後——


「ちょおおおおおっと待てえええ!!!???」


突然、全力でツッコんできた。


「今なんつった!? 今なんつった!???」


「何がだ?」


「"こんなのあったのか"!?!?!?」


探偵は落ち着いた様子で、コウモリの死骸が消えていくのを見ながら、軽く肩をすくめる。


「事実を言っただけだ。」


「いやいやいやいや!!!!! "こんなのあったのか" じゃねぇよ!!! ミニマップって、ゲームの基本中の基本だろ!?!?!?」


エコーは宙をグルグルと飛び回りながら叫ぶ。


「え、待って待って待って!? お前、今まで"気配で察知"してたの!? しかも、それで普通に戦えてたの!?」


探偵は短剣を軽く振り払いながら淡々と答える。


「まあ、あれだ。気配を読むのは探偵の基本だろ?」


「違うわぁぁぁぁ!!! それ"ゲーム"じゃなくて"リアル"の話だろ!?!??」


エコーは頭を抱えながら、宙をふわふわと揺れ動く。


「えぇ……お前、ホントにゲーム初心者なのか?」


「そうだが?」


「嘘だろ……!? そんなんでよく"高レベルエリアに突っ込む"とかできたな!? いや、それで普通に戦えてたのもおかしいけど!!!」


探偵はミニマップを改めて見つめ、冷静に一言。


「……まあ、便利だな。」


「だぁぁぁぁ!!! 絶対おかしい!!! これ今まで気づかずにプレイしてたヤツの発言じゃねぇぇぇぇ!!!!」


エコーのツッコミが洞窟内に響き渡る。


探偵はそれを適当に聞き流しながら、ふとミニマップの表示に目を向けた。


「……ふむ。」


「おいおい、何考えてんだ?」


「このマップ……地形は表示されるが、"敵のシンボル"が曖昧だな。」


「はぁ!? いや、そりゃダンジョンだからな! 視界が悪いところでは正確な位置は分かんねぇ仕様だろ!!」


「……そうか。」


探偵は軽く頷きながら、ミニマップを閉じ、再び洞窟の奥へと足を進める。


エコーはしばらく探偵を睨みつけていたが、最終的に小さくため息をついた。


「……ま、いいか。」


「ん?」


「いや、お前がどんなヤバいプレイしても、"いつものこと"って思うようにするわ……」


「賢明な判断だな。」


「賢明じゃねぇよ!!!!! まともなゲームのプレイヤーなら、こういうの普通じゃねぇんだよ!!!?」


エコーの叫びを背に、探偵は洞窟の奥へと進んでいくのだった。


【スキル獲得:隠密系スキル】


コウモリ型モンスターとの戦闘を終え、探偵は静かに短剣を鞘へと収めた。

周囲には、消滅したモンスターの残滓がわずかに漂っている。

そしてその瞬間、視界の端に淡い光が灯った。


——《レベルアップ! 新しいスキルを獲得しました》


「ほう……」


探偵は興味深げにステータスウィンドウを開く。

そこには、新たに獲得したスキルの通知が浮かび上がっていた。



---


《サイレントムーブ》


移動時の気配を消し、敵の索敵範囲を減少させる。


ダンジョン探索や奇襲戦に特化したスキル。




---


探偵はスキルの説明をひと通り目を通すと、淡々と頷いた。


「ちょうど良かった。」


何気ない独り言。

だが、その言葉に敏感に反応した者がいた。


「……おい、何が"ちょうど良かった" だよ?」


エコーがすかさず突っ込むように探偵の顔を覗き込む。


「ん?」


「なんで"隠密系スキル"なんか取ってんだよ!?」


探偵は少しだけ眉を上げた。


「取得したものを使うだけだが?」


「いや、違う違う違う!! お前、普通ここで攻撃スキルとか、防御スキルとか取るもんだろ!? なんで"気配を消す"方向に進んだんだ!?」


探偵は答えず、そのままスキルを試すようにゆっくりと歩を進めた。


——すると、音が消えた。


洞窟内の足音が、不自然なほど静かになる。

まるで、空気に溶け込むように、探偵の存在感が薄れていく。


エコーはその様子をじっと見つめ、明らかに戸惑いを浮かべていた。


「……便利だな。」


探偵は感想を述べるように呟く。


「便利だな、じゃねぇよ!! だから、なんで"隠密"なんだよ!?!?」


エコーが宙で跳ね上がるように叫ぶ。


「理由なら、ある。」


探偵は短剣の柄を軽く回しながら、淡々と続けた。


「俺の戦闘スタイルは、"当たらないこと"が前提だからな。」


「……まぁ、それは分かる。」


「回避だけでは限界がある。なら、そもそも"戦闘そのものを避ける"のも手だろう。」


「……いや、まぁ、それは理屈としては正しいけどさ……」


エコーは探偵をじっと見つめた。


「でも、お前の戦い方って、結局"戦闘そのものを回避する"っていうより、"敵に気づかれる前に仕留める"って感じだろ?」


「……」


探偵はその指摘を否定しなかった。


「まぁ、そういう戦術もありだろうな。」


「やっぱり暗殺者プレイじゃねぇかぁぁぁ!!!」


エコーの叫びが洞窟内に響く。


「つーか、お前、さっきから思ってたけど、どんどん"敵に見つからずに狩る"スタイルに寄ってってるよな!? もうこれ、完全にスピード型アサシンじゃん!!」


探偵は薄く笑いながら、エコーを一瞥する。


「悪くないだろ。」


「……お前、普通のプレイしようよ。」


エコーは呆れながらも、探偵の後をついていく。


「楽しい楽しい。」


探偵は微笑みながら、洞窟の奥へと足を進めるのだった。



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