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45 『侏儒の遊び』~ 渋谷編①

「龍の背中に乗って空飛んでて、僕たちの姿って誰にも見えないの?」

「あははは、面白いこと考えますね」

 ユウビの質問に青龍が笑う。


「青龍と同化しているような状態になってるんだ。一般人なら絶対に見えない。陰陽師同士は別だけどな」

「へぇ、すごいなぁ」

「それより、配信やってる馬鹿どもはどうなってる?」


「あぁ・・・・えっと」

「何組配信してるんだ?」

 ユウビがスマホをスクロールして、配信画面一覧を表示する。


「13組やってるよ」

「マジか」

 平安の時代に陰陽師の争いはあったが、全国区で戦闘の様子を配信するなんて前代未聞だ。

 邪神悪鬼がどれだけ影響力を持つかも未知数。


 大気が震えているのを感じた。


「SNSって本当に流行ってるんですね。私もちょっと出たことがありましたが」

「朱雀さんってあの、『天下一の白鳥』に出てバズってた?」

「そうそう。知っていてくれたんですね」


「バズったら流れてくるから・・・」

「タケル様! 私有名になりましたね」

 朱雀が着物の袖を頬に当てて嬉しそうにする。


「よかったな」

「はい。悪くないです。ふふふ、タケル様と有名になったってことですね。タケル様と・・ってことで・・」

「朱雀・・・いい加減、私情を挟むなって言ってるだろう」

「私は白虎みたいに固くないスタイルで仕えてるの」

 白虎が冷めた目でため息をついた。




「あ、この中の7組は渋谷にいるみたいだ」

「13分の7って、目立ちたい奴らはほぼ渋谷に行くのか。関東圏だけってことないんだけどな。陰陽師は西に多いはずだ」

「そうなんだ」


「廃業してないかは知らんけどな」


 ユウビが配信者を複数画面表示する。



『侏儒の遊びってゲームやな、うちはまだ最初の5ptなんよ。この子たちは、私の式神のミンちゃん、リンちゃん、ヨンちゃん。って、視聴者さんには見えないんやね』

 16歳くらいの少女が掌に小さな式神を載せていた。

 一人で配信してるようだ。


『ミンリンヨンちゃんは、えっと、こん棒持ってる赤青黄の鬼。それぞれ角が生えてます。ん? ミンちゃん、何か話すん?』

 赤鬼が前を指して何か話していた。


「この子の式神、弱そうだね」

「強いよ、こいつは元々陰陽師だ」

「えっ」

 小鬼のような見た目をしていたが、こいつらはただ擬態してるだけだ。

 一般人を演じて、探りを入れているってところか。

 

「よくわからん。劉羽わかる?」

 ユウビが隣を飛んでいた劉羽に聞く。


「・・・へぇ、わからないの僕だけか。まぁ、劉羽が知ってるならいいや」

「ユウビは式神ガチャしないのか? 2体枠があるだろ?」

「さっきのやられた子たち見たら、さすがにいらないよ。SS級レア式神当たったって意味ないし」

「だよな」


「タケル様、まさか、式神ガチャやってみたいなんて思ってないですよね?」

「もう式神はいいって」

「よかった・・・」

 青龍と白虎と朱雀が同時に胸を撫で下ろしていた。

 ガチャって言われると、全く興味がないわけじゃないが・・・。


 ん、まんまと大渦津日神にのせられてるか。



『うぁっ・・待って、待てって・・あ・・・あ・・・・悪鬼?』

 渋谷で配信していた男子高生グループの一人が騒ぎ出す。


『何言ってるんだよ、俺らを脅かす気か?』

『鬼っぽいものなんて見えないじゃないか』

 男が渋谷の雑居ビルの方角を指さしていた。


『視聴者さん、どうですか? 見えます?』

 カメラが雑居ビルを映す。

 コメントが滝のように流れていった。

 見えてる奴はいないか、コメントはしないよな。


『見えないって。だよな。ん? 見える』

『え、配信中にいなくなった子がいるって?』


『こっち来る! 俺の式神、あいつを倒してくれ!』

 眼鏡をかけた男子高生が叫ぶように言う。


 使役している式神は弱い悪鬼だった。

 ガチャでいうところのBクラスだろうな。

 対して、渋谷にいる邪神悪鬼は強い。


 大きな鬼数体がにやにや笑いながら、男子高生グループを見つめていた。


「この人たちも早死にしそうですね」

 朱雀がぼそっと呟く。


「思った通り、初心者が多いな。何人参加してるんだ? このゲーム」

「うーん。掲示板も匿名だし、なんとも言えないかな」



 がっしゃーん


『うわっ』

 男子高生の式神が、渋谷を縄張りとしている悪鬼に飛び掛かっていく。


 ― 古今裂傷こきんれっしょう ― 


『ぎゃあああああああ』

 悪鬼が騒いでいた。

 傍にいた人間たちが、穢れを受けている。


『やった・・・・』

 渋谷の悪鬼たちも遊んでいるようだ。

 わざとやられたふりをしている。ノリがいいな。


『どうしたんだ? 黒川って、わっ、これが悪鬼』

『お前らマジで気づかなかったの?』

『だって、陰陽師らしき人がいるわけじゃないし。まさか、隠れてるとか』

『この視聴者さんの中にいるってこと!?』


 カメラに向かって、煽るように言ってきた。

 コメントは盛り上がっている。

 

 今のは土地の悪鬼なんだけどな。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 山手線の線路を電車が走るのが見えた。

 神々の眠る夜の時間帯は、邪神悪鬼たちの騒ぎまくる時間帯だ。


「あ、僕たちも配信しますか?」

 ユウビが狐の面を軽く上げてこちらを見る。


「勘弁してくれ・・・あ、でも、今ただ働きだよな。スパチャとかって投げてもらえば金になるか」

 しいなが貰ったというスパチャの額を思い出していた。


「やる?」

「そうだな・・・・」

「タケル様!」

「冗談だって」

「もう、タケル様の場合冗談に聞こえないんです」

 朱雀が強い口調で言う。


「ほら、お二人とも、着きましたよ。そこが渋谷駅です。あ、陰陽師らしき者もいますね」

「じゃあ、その辺に降りてくれ。このまま上を通ってばかりいても、陰陽師と会うこともなさそうだからな」

「かしこまりました」

 青龍が少しずつ降下していく。


 ジジジジ ジジジジ


『はじめまして』


「・・・青龍、ちょっと待ってくれ」

「はい」

 スマホの音量を大きくする。


 機械音が聞こえた。男か女かもわからない。

 黒猫のイラストのアバターを使っていた。


 今までの奴らと何かが違う。


「なんだ? こいつは」

「今、配信始めたばかりの人だよ」


『早速ですが、自己紹介。私は陰陽師の黒猫、ジョーカーです』

「は?」

 黒猫が自分の手を上げる。


「こいつ・・・・」


『これからルールを一つ追加する。各自、今いる場所から約半径3キロを仮拠点とする。仮拠点にいる陰陽師同士で戦闘をし、最後の3人になるまで出られないものとする。誰もいない者は、今から3時間以内に陰陽師を見つけ出し、必ず戦闘すること。見つけられなかった者、戦闘を避ける者は、脱落者とする』


「!?」


『じゃあ、ゲームを楽しんで』


 バチン


 キィン


 配信が途切れると同時に、遠くにガラスのような結界が現れる。


「やられたな」

「仮拠点って・・・・タケルといなかったら、僕、最初の幼馴染グループと同じような展開になってたかもね。劉羽」

 劉羽がまっすぐ、人ごみのほうを見つめている。


「はぁ・・・・濃い夜になりそうだ」


「あまり遅くなると、リヒメさんが心配しますね」

「リヒメは、どこかの配信で見てるかもな。寝てるといいんだが」

「はい」

 青龍がため息交じりに言った。

 スクランブル交差点の信号が変わり、流れが切り替わる。

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