表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/57

43 『侏儒の遊び』~はじまり③

 陰陽師同士の戦闘は一瞬の隙で、命を取られる。

 デスゲームに巻き込まれているようなものだ。

 

 しかも、ただのデスゲームではない。

 こいつらがどこまで知ってるか、わからないけどな。


「ん? どうしたの? そんな怖い顔をして、あ、4人ゲームオーバーになっちゃったから警戒いてるのか。あたりまえだよ、阿仁三タケルは最強陰陽師なんだって」

 残った少年の式神、中国の武将の名は知らない。


 甲冑をつけたまま、顔は全く見せなかった。

 持っている大きな剣は、丸みを帯びていて星明かりをよく反射する。


 狐の仮面をつけた少年が特別霊力が高いわけではないのに、なぜこの式神を使役できたのか。


「お前、名は何という?」

「僕?」

 少年がこちらを見る。


「ユウビだよ。彼は僕を小さい時から守ってくれる、お父さんみたいな存在だ」

「狐の面をしてるのに、稲荷系は関係ないとはな」

「狐の面は顔を隠すため。面なら何でもいい」

 いつの間にか敗北した4人は、蜘蛛の子散らすようにいなくなっていた。


 キィンッ


「タケル様・・・・」

「気を抜くなよ」

 金色の矢を出して、握り締める。


「仲間はゲームオーバーだ。お前は戦わなくていいのか?」

「んーまだいいや。だって、ここで負けたらゲームオーバーになっちゃうんだろ? せっかく陰陽師になったんだ。もう少し、弱い敵倒してからにするよ」


「・・・・・?」

 四神の緊張感が高まる。

 名は知らぬ中国の武将がこちらを睨みつけたからだ。


 俺は負ける気がしないけどな。


「どうしてここへ来た?」

「知らないの? ネットで陰陽師が集まるサイトがある。みんな、パーティーを組んでるんだ」


「は? パーティーって」

 弓に込めてた力が抜ける。


「ギルドみたいな感じになってるのか?」

「そうそう。陰陽師だけが入れるログインサイトがあるじゃん」

 軽い口調で言う。


「で、そこで仲間を募ったりもできる。そして、僕たちのいるパーティーは目印として狐の面をつけることにしたんだ。そっちのほうが僕の式神たちもいいって」

「・・・大渦津日神か・・・・」


「完全に遊んでますね。ゲームみたいです」

「現代版のデスゲームだな」

「電子上の穢れをも利用するか」

「中二病に堕ちたやつは侮れないな」


「タケル様も中二の時はこじれてましたもんね」

 朱雀が後ろに手を組んで、こちらを見つめる。


「!?」

「覚えてますよー」

 にやりと笑った。


「そうそう。憧れのアニメ声優に好きですってリプしたり・・・高校生になって現実を見るようになって安心しました。そこも含めて、タケル様はかっこいいのですけど」

「あぁ、そういやあったね。アニメのリコちゃんだった。懐かしい・・・ノートにリコちゃんの絵を描きまくったときはもう・・・・」

「こうゆう邪神を自身で生み出すんじゃないかと思いましたね」

「ハラハラしました」

 青龍が腕を組んで頷いた。


「・・・・・・・」

 こうゆうとき、四神と組むのはやりにくい。


「どさくさに紛れて黒歴史を掘り返すな。それに、世の中の中二に謝れよ・・・全中二がそうなるわけじゃないからな」

 朱雀、白虎、青龍が好き放題言っていた。


 リヒメには絶対聞かれたくない話だ。

 どこまで掘り起こされるかわからない。


「っ・・・・あははははははははは」

 ユウビが満月に向かって噴き出す。


「何が面白いんだよ」

「君は残酷な陰陽師だって聞いてたから、意外で。僕、今中学二年生なんだ。中二病っぽい?」

「さぁな」

 すっかり力が抜けてしまった。

 こいつらは金色の矢でしか倒せないのに。



「ん?」

 武将がユウビに何か耳打ちする。


「あぁ、そうだね」

「なんだ?」


「突然だけど、僕たち組まないか? 劉羽がそういってるんだ」

「・・・・・・」

 劉羽というのか。

 頭の切れる式神だ。 


「出会ったのも運命。僕たちは輪廻転生の輪の中にいる。劉羽にも中二病のときがあった。懐かしいって言ってる」

「中二病って比較的最近できた言葉なんだが・・・あまりそんな話伸ばすなよ。そもそも、俺は別に誰かと組むつもりはない。最終的には一人勝ち抜かないといけないしな」

「まぁまぁ、そんな固いこと言うなって」

 ユウビが狐の面を取った。



 サァァァァァ


 やわらかい風が吹いて、月がユウビを照らす。


「最後2人残ったら譲るよ。僕は劉羽と、陰陽師の集うゲームを楽しみたいだけなんだ」

「!!」

 思わず目を疑った。

 琴音・・・滝夜叉姫によく似た、中性的な美しい少年だった。

 どうして、こんなに似ているのかはわからない。


 なぜか、ユウビの中に滝夜叉姫の御霊があるようでならなかった。

 何のつながりがある?


 何も関係ない者がこんなに似ていることなんてあるのか?



「これは驚きましたね・・・」

 白虎が呟く。


「そうだな。ここまで似ていると、こいつが何者なのか興味がある」

「どうしたんだ? 僕、誰かと似てるの?」


「いいよ。組もう」

 白虎から離れて、ユウビに近づいていく。


「やったー、僕最強陰陽師と組んだね」

 狐の面を被りなおしていた。


「結局つけるのか? その仮面」

「そのほうがいいって、劉羽に言われたんだ」

「まぁ、そうだろうけどな」


「ん? やっぱそうなんだ」 

 滝夜叉姫に似すぎている。

 どこで、誰がこいつを攻撃しようとするかわからないからな。


 劉羽が屈んでユウビに話しかける。

「うん。よかったね、劉羽」

 ユウビが劉羽を見てほほ笑んだ。

 劉羽がゆっくりと剣をおろして、こちらに頭を下げる。


「じゃ、とりあえず帰って寝るか」

「現代最強阿仁三タケルを奇襲しようって掲示板のスレッドあったから、ここにいたら来るかもしれないよ」

「うわっ、なんだよその悪趣味なスレッド」


「つか、なんで俺だけそのサイトの情報知らないんだよ」

「1週間前から盛り上がってたよ。ほら、僕のアカウントとパスワードでログインすると・・・・」

 ユウビが素早くスマホを動かす。

 

 ― このURLを送られた皆さんは陰陽師となる通達が来ているかと思います。

   掲示板やSNSは自由に使ってください。

   パーティーを結成するのも自由です。 

   ただし、陰陽師以外の人にこのサイトは決して教えないでください。

   もし教えた場合、ゲームオーバーとなり・・・・―


 怪しいサイトが出てきたが、SNSのハッシュタグで検索すると、新人陰陽師が仲間を募っているのが見えた。

 

「初めて見るんだが・・・俺だけ最初からハブられてるってこと?」

「タケル様が強いからじゃないですか?」

 朱雀が赤い着物をふわっとさせながら軽く飛んだ。


「ここまでくると、ただの嫌がらせだろ」

 見れば見るほど、穢れが多いな。

 陰陽師が使役したばかりの邪神には、力を溜める優良サイトかもな。


「ユウビここから先はなるべくそのサイトを見るな」

「え、なんで?」

「劉羽には毒だなんだよ、な?」


「・・・・・・・」

 劉羽は仮面をつけているからわかりにくいな。

 スマホを開いた瞬間、霊力が明らかにぶれるのが分かった。

 朱雀はともかく、青龍と白虎にもな。


「な、なるほど。そうだったのか。気を付けるよ」

 ユウビが狐の面を抑えながら、月明かりのほうを眺めていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ