表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

前世の記憶を取り戻したら、この世界の常識に違和感しかありません。

世界設定について

この世界について、少し語らせて頂こう。


十五歳の誕生日、ペットショップへ行くまで私の記憶が戻らなかったのは、我が家に獣耳の使用人がいなかったからだ。

けれど家庭教師や家令らの一部の上級使用人を除く使用人のほとんどは獣人だ。

なぜ、獣耳がゼロなのか。

それは彼らは、完全な人型を取っているからだ。

そして我が家が人間も雇用できる、裕福な商家であり、獣人の中でも能力が高く、ほとんど人型を取り続けていられるものだけを雇っているからだ。




さて。

まず前提として、この世界の生物は「魔力」を持つ。

最も多くの魔力を有するのが人間、次が獣人、次が獣、次が植物、最後は無機物だ。

これはそのまま、この世界の序列に等しい。

もっとも全ての事象には例外が存在するため、あくまで基本、であるけれど。


人間は多大な魔力を有するために人型で生まれてくるとされるが、どれだけ魔力を使っても魔力が枯渇して獣人や獣になったという話は聞かないので、真偽のほどは不明だ。

この「常識」は、前世の記憶を取り戻した今となっては、神話や宗教による刷り込みに近いものだ、と思っている。


獣人は人間とほとんど変わらない高度の知能を持ち、基本的には人間の下で働く。

家畜のように獣型で働くものもいるが、ごく稀だ。


獣人は、完全な獣型か、完全な人型をとるのが「良いこと」とされる。

特に人型を長時間取り続けられるのは魔力が高い証であり、完全な人型のままで日常生活を送ることが出来るものは、人間に準ずるものという扱いとされ、雇用などで有利になる。


獣人にとって就業に有利であるという他にも、人型を取るメリットは、他にもないわけではない。

獣人は寿命が短いことが多いので、人型をとることで寿命が延びる、というのである。

これには心臓が打てる回数の上限の問題という説が出ており、心拍数のはやい小型獣では人型を取るほど寿命は長くなる傾向にあると言われる。

しかしわざわざ獣人のために比較した研究がされたわけでもなく、意見は様々だ。


また、獣人は、人間に比べて美しいものが多い。

美しい獣人は、「様々な目的」で、売買される。

身の毛もよだつような恐ろしい目にあった獣人の話は、枚挙に暇がない。

私の国に奴隷制度は許されていない。

けれど、獣人は人間ではないので、売買も譲渡も合法だ。


獣人を雇用ではなく所有する場合、獣人は「家畜」か「ペット」として扱われる。

人型をとる獣人に、性を使った「労働」をさせることも、ある。

これは「獣姦」とされ、穢らわしく悍ましい真似とされるが、本人の趣味の悪さが非難されるだけで、罪には問われない。

そのため、貧しい下層階級には低価格で獣姦を行える娼館が人気だったりする。

上流階級でも、人の子にはさせられないような酷い行いをさせるために、美しい獣人を飼っている者がいると聞く。

行為から逃げるために獣型を取りたくても、様々な方法で出来ないようになっている。

例えば、人型の時に首輪を嵌められてしまい、獣型に戻ると首の太さが変化した時に首が絞まってしまう、など。

まさに生殺与奪を握って、獣人達を支配するのだ。

背筋が凍るような恐ろしい話である。


そんなことも、記憶が戻る前は、全く思いもしなかったのだけれど。




「なんか、おかしいわよね」


買ったばかりの柴犬(獣型)を抱き、ミルクを与えながら、ひとりごちた。

腕の中で安心しきったようにミルクを飲む仔犬は、人間で言えば二、三歳だろうか。

まだ母が恋しい年齢だろう。

けれどこの子は、親元を引き離され、雑多な店の檻の中に入れられていた。

もちろん、獣人・獣の愛護団体から非難されるような虐待がされていたわけではないけれど、それでも可哀想と言わざるを得ない。


「このお耳も、可愛いのに、叱られるなんて」


雌の獣人は、獣型で出産することが多い。

獣人は、生まれた時は人とも獣ともつかない姿で生まれるが、生後すぐに、獣型と人型の狭間の姿から、母と同じ獣型に変化する。

人の子は弱く、全く動くことが出来ないが、多くの獣は生後しばらくしたら活動を始める。

我が身を守るための防衛本能で獣型をとるのだろうと言われている。

そのためか、未成熟な獣人は獣型を取りがちで、人型を取ろうとしても気を抜くと獣型になったり、生後すぐのような、人とも獣ともつかない姿になったりする。


半端に耳や尻尾や髭だけ残っている姿は半獣型と呼ばれる。

これは見苦しく、能力が低い証拠であり、忌むべき姿であり、「不愉快」だとされる。


私からすると最早アンビリーバボー。

超可愛いのに。

……まぁ、私の感情はどうでもいい。


成人しても半獣型を取るような「出来損ない」は、獣人の中でも迫害の対象だ。

それほどに半獣型は忌み嫌われる姿であるため、厳しく「指導」される。

鞭打たれることも多いと言う。


鞭、だ。

鞭、鞭だぞ。

めちゃくちゃ痛いだろうが。

幼い子供に鞭を打つなんて、人間のやることとは思えない。

けれど、これがまかり通る。

だって、獣人は「人間の子供」ではないから。

この子にも、背中や手足に、小さな傷がいくつもあった。

気づいた時は、泣きそうになった。


納得がいかない。

けれど、仕方ない。

それがこの世界の常識なのだから。

一商家の娘ごときに変えられるわけもない。


だから、私に出来ることは、せいぜい。


「精一杯、可愛がるくらいよねぇ」


ミルクを与えられ、満足したらしい仔犬が、ふぅ、と息をつく。

とろとろと眠たそうにする首元を優しく擽ってやると、嬉しそうに頭をすり寄せてくるので、思わず頬が緩んだ。


あぁ、もう、ただひたすらに可愛い。


「名前、何にしようかしら」


前世でも私は、柴犬を飼っていた。

最高に可愛くて優しくて利口な男の子で、あの子は私の親友で、家族だった。

名前は。


「レイ」


元はと言えば、当時ハマっていたアニメの最愛のキャラから取った名前だったが、最終的には私の中で「レイと言えばこの子!」となっていた。

私にとって、一番大切な、お気に入りの名前だ。


「あなたの名前は、レイよ」


そう囁いて、チュッと鼻先にキスを送ると、途端に腕にかかる重みが増した。


「うわっ」

「うれしい!」


思わず落としかけ、突然腕の中で大きくなった個体を慌てて抱き抱えると、小さな手が全力で抱きしめてきた。

急に獣型から変化した柴犬……レイは、喜びを全身で表してきた。


「ぼくは、レイなのね。あなたが、ぼくのご主人さまなの?」

「ごしゅっ」


名前をもらったことにはしゃぎ、純粋な愛情を向けてくる榛色の瞳に、胸が高鳴る。

ペットとして扱われていた彼は、店主から主従思考が植え付けられているのだろう。

それは、前世の記憶を思い出した私からすると、少しばかり気にかかる部分ではあったのだが。


「っ、ええ!そうよ!」


現金な私は、この上なく可愛らしい獣耳のこどもに「ご主人さま」と呼ばれる心地よさに、一旦、屈した。

簡単に頷いてしまった。


ちょろ過ぎる。

ダメ過ぎる。

でも可愛すぎるのだもの!

仕方ないじゃない?!


「よろしくです!ご主人さま!」

「ええもう!全力で可愛がってあげる!」

ぎゅっと抱きしめてから、私ははっと我に返り、一つのお願いを口にした。

「でも、私のことは名前で呼んで」

「え?」

戸惑ったように瞬きを繰り返すレイに、優しく諭すように告げた。

「レナ、よ。言ってごらんなさい」

「れな、さま?」

言い慣れないように言葉を舌足らずに名前を呼ぶ愛らしさに、このまま蕩けそうな気持ちになりながら、こみ上げる愛しさを誤魔化すために、額や髪に何度もキスを繰り返す。

「ふふっ、あぁもう!可愛い!……でも、様はいらないわ。私たちは、家族なのだから」

「かぞく……ママ?」

「……えぇ、そうね。ママと、同じようなものよ」

家族と言えば、引き離された母親しか知らないのだろう。

思わず胸が締め付けられるような切なさと哀れさに、私はレイを抱きしめた。

不可思議そうに首を傾げながら、私の顔を覗き込んでくる小さな額に、そっと幸せを祈るように口づけた。

「私はあなたのママでもあるし、姉でもあるし、何にでもなるわ。可愛いレイ」

理解出来ていないように、困った顔でいるレイに、私はにっこり微笑んだ。


まずは家族であるいうことを、躾けてやりましょう。


読んで頂きありがとうございます!

基本は獣耳可愛い〜!な主人公と、主人公大好きなワンちゃんを書きたいです。

そのうち身分差・種族違いの恋愛に移行したいなぁと思ってますが、まだワンちゃんがお子様なので先の話ですね。


とりあえず設定に矛盾が出てこないように頑張ります(出てきたら教えて下さい……)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ