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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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その夢、見続けるか、見終えるか 五

「君はどうなんだい?」

「……わからないわ。でも」

「でも?」

「あなたたちといると、楽しいわ」

「楽しい……」

 貴志はあっけにとられた。まさかそんな答えが返ってこようとは。

「ならこうしてやりあうのも、楽しいってのか?」

「ええ、楽しいわ」

「ふん。とんでもねえ娘っこだな」

 源龍もやや苦笑させられる。

「私は宙ぶらりんだった。それが、あなたたちのおかげで、楽しい日々を送れて、感謝しているわ」

「はあ、感謝ねえ……」

 なんだかおかしな成り行きになっているのは、源龍でもわかった。

「宙ぶらりんだった、って。君は一体……」

 と貴志は問うが。香澄は七星剣を構えつつ、微笑むのみ。

 思えば香澄は何者なのか、全然知らない。

「っていうか、教えるつもりもねえだろう」

 こういう時、源龍は変に鋭い。

 だがやはり、これにも香澄は応えない。

 他の面々は黙って成り行きを見守るのみ。

「夢は続くわ。誰の意思にも関係なく。私が言えるのは、それだけ……」

「まだなんかあんのか」

「あるわ」

「……」

 貴志は言葉が出ない。言葉を知る者ほど、こういう時には不思議と出ないものだ。

 にわかに霧がたちこめてくる。

 こーん、こーんと、狐の鳴き声も聞こえる。

「狐……」

 羅彩女は狐の鳴き声を聞き、はっとする。

「あの女狐となんかあんの?」

「虎碧……」

 マリーは娘の名をぽそっとつぶやく。

 源龍は大きく息を吐き出し。構えを解いて、打龍鞭を肩にかつぐ。

「やれやれ、次はどこに行くんだ?」

「それは、着いてからのお楽しみ」

 と、香澄は言いながら七星剣を鞘におさめる。

 貴志は筆の天下を握り締め、その感触を確かめる。

「ゆきなさい」

「夢の旅路へ」

 そんな声が聞こえたような気がした。

 一同は何も言わず、言えず。ただその声の言う通り、夢の旅路をゆかされるしかないと、改めて、思わされた。

 望むと望まざるとにかかわらず。

 夢とて思うままに見ることなど出来ないではないか。

 人生もまたかくのごとく。ままならぬもの。 

 このまま無言で霧に包まれて……。と思ったら。

「私は、このまま旅をしていたいわ。みんなと」

 と、香澄は言った。その声色は弱弱しく、儚げだった。

「香澄……」

 マリーはその細い肩にそっと触れる。リオンとコヒョもそのそばに寄り添う。いつもおすませさんだった彼女にしては珍しく、感傷的だった。

 源龍は苦笑し、羅彩女は何とも言えぬ感じで。貴志はどう受け止めればよいのか迷う。

 この三人はおかしな成り行きで旅をともにすることになったのだ。本意不本意で言えば、不本意なかたちで。

 そんな香澄も、何も言わなくなって。

 不思議な沈黙の中霧に包まれて。その霧は濃くなり、やがて視界も暗くなった。

 次に目を開ければ……。

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