その夢、見続けるか、見終えるか 四
「呆れたものだが、君らしいな」
香澄はこのやり取りを目にし、くすりと微笑んだ。
「どうするの、この夢、見続けるの? 見終えるの?」
「……そうだな、暇な思いをしねえんなら見続けるのも悪かねえな」
「源龍らしいわね」
(って言うか、ただの戦闘馬鹿じゃん)
その気性を知るだけに、羅彩女は苦笑するしかなかった。
だっ、と源龍は駆け出す。打龍鞭は唸りを上げる。
香澄は咄嗟にさける。
ぶうん、ぶうん、と風を切り、唸りを上げ、打龍鞭は幾度となく香澄に迫った。だが香澄は、七星剣を手に、まるで舞いでも舞うように、軽やかな足取りでかわす。かすりもしない。
「源龍、やめろ! これは僕の問題だ!」
「うるせえ知るか!」
つれない返事。いかにも源龍らしい。
羅彩女も、マリーもリオンもコヒョも、世界樹も、黙して見るのみ。
下段から上段へと迫る打龍鞭、すんでのところで香澄は跳躍してこれをかわしたと思いきや。
掲げられた打龍鞭の上に乗ってしまっているではないか。
「くそ!」
力を込めて振り払おうとするも、その足にもそれ以上の力が込められてか。急に打龍鞭の先が落下し、ずしっと音をさせて地面についてしまった。
「!!」
目前に七星剣の切っ先が迫る。柄から手を放して、咄嗟にさけ。間合いを開けて、対峙する。
打龍鞭は先を地面につけて、斜めの状態から倒れて、地面に横倒しとなった。
これにて源龍は無手となったが。香澄は足先で柄を軽く蹴れば、打龍鞭はまるで小さな龍になったように飛んでくるではないか。
源龍は飛んでくる打龍鞭の柄をしっかと握り、改めて得物を構えて香澄と対峙した。
(なんて野郎だ)
香澄は涼しい顔をしている。打龍鞭は鋼を鍛えて出来た打撃武器、重さもそれなりにあるのだが。軽く蹴飛ばすなど、常人のなせる業ではない。
もちろん、香澄は常人ではないとわかってはいるが。
「そんなことじゃ、夢を楽しく見られないわよ」
「大きなお世話だ!」
源龍は打龍鞭を構えて香澄と対峙するが、動くに動けないでいた。付け入る隙が見当たらなかった。
(源龍は源龍なりに自分の運命を試してんのかもね)
貴志とは好対照な性格なので、運命の試し方も対照的なものとなる。
「ねえ」
「なんだ」
「夢ってなんだと思う?」
香澄からの問いかけ。だが源龍は、
「おい、お前答えろよ」
と貴志に振る。羅彩女は苦笑。
「……夢。突然そんなことを問われても……」
貴志も苦笑しつつ。すぐに答えられるわけもない。
「答えがあると思う?」
と香澄は重ねて問う。
「答え……」
言われてみれば、そもそも答えなどあるものだろうか。そのような問いに。




