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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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かみの子の作り方 2-4


「ユコナさん、お疲れさまでした。ありがとうございます」


 レオンに礼を言われ、無事治療を終えたユコナは少し照れていた。

 その後は、大きな問題が発生することもなく、3人は、祭祀の時間になるまで、そのあたりをぶらぶら警護しながら過ごした。


 やがて、14時近くになり、400人近くの村人がぞろぞろと祭壇のまわりに集まってくる。そして、時間になり、豊穣祈念の儀式が開始された。


 毎年のことなのだろう、儀式を司る祭主が定められたとおりに執り行い、感謝の上奏文を奉納したり、今年度の豊穣を記念して、お祈りを捧げたりなど、滞りなく進んでいった。


 やがて、一連の儀式が終わったようだ。

 村人たちは村の中央の広場、お祭り会場に戻っていく。そして、祭りの本番、といっても、食べたり、話ししたりするだけだが、が本格的に始まった。


 プヨン達も、警護はほどほどにして、屋台で食べたり、村の人たちと話をしたり、銘々で自由に楽しんで過ごしていた。


 夕焼けも終わって、日も完全に沈み、星が見え始めている。

 プヨンはすでにお腹いっぱいになっていた。少し動きたくなって、村のはずれの祭壇に続く道あたりで休憩していると、ユコナがふらふらとやってきた。


「いろいろ食べた?もう、僕はお腹いっぱいだよ」

「うん、もう・・・、いっぱい。これ・・・以上は無理かな」

 どうやら、お祭りだからか、酒を飲んだわけでは無さそうだが、酒の匂いにでも酔ったのか、それとも雰囲気酔いなのか、顔が赤く、足元がわずかにふらついていた。


「プヨン、ちょっと付き合って。なんかふらふらする・・・」

「食いすぎかな。まぁ、いいよー。自分もおなか減らしにふらふらしようと思ってたし」


 星が瞬く中、村のはずれを歩き回っていると、いつのまにか祭壇の方にきていた。儀式はもう終わっていて、ほとんど人がいない。祭りのともしびがついているだけだ。


「おや、どうされましたか?もう、お祭りは、堪能されましたか?」


 祭壇のところにいた村の係が、話しかけてくれたので、プヨンが、返事をした。


「えぇ、ちょっと雰囲気に当てられたみたいで。すこし、夜風にあたろうと思って」


 昼間も一度きたが、夜にくると雰囲気が違う。周りの田畑が暗くて見えなくなっているのもあって、炎で照らし出された祭壇が、厳かな雰囲気をだしていた。


「その塚のところに雷が落ちると、村中が豊作になると言われているんですよ。かつては、雷神様が毎年現れては、ここにいかづちを落としてくれたそうですよ。言い伝えでは」


 待機の村人の1人が由来を教えてくれた。

 いろいろ伝承などを聞いていて、ふと横を見ると、ユコナは眠気があったのか、まぶたが閉じ気味になっている。夢でも見ているのだろうか。


そう思っていたが、突然、


「ふふふ。わたしこそ、雷神様が宿りしもの。いかづちを落とすなど、いかほどもないこと。さぁ、受け止めるがよい」


 ユコナが突然叫びだした。

 祭壇の前にいた人は、何事とあわてて飛びのく。そして、ユコナの動きに注目する。


「お、おい、寝ぼけてるのか?」


 プヨンがあわてて、静止する間もなく、


「ふふふ、いくわよー」


バシィ


 夜空を切り裂き、細いながら、いかづちが、雷が落ちたと伝えられる塚、オロガ塚に落ちた。


「おぉぉっ」「うわっ」


 プヨンも含め、まわりにいた数人から驚きの声が上がる。

 特に、村の人たちは、驚きというよりは喜びの声に聞こえた。


 広場の方からも、小さいながら、騒ぐ声が聞こえる。


「な、なにごとだ」

「い、いかづちが落ちたぞ・・・」


 あちこち出驚きの声が上がった。

 まわりの村人たちの予想外の反応に、ユコナは気が大きくなっているようだ。


「一発だけと思ったら大間違いですよ。それー」


バシィ、バシッ


 寝ぼけているのか、誰かに酒でも飲まされ、酔っているのか、よくわからないことを叫びながら、さらに数回落とす。


 プヨンが、いかづちを避けて、少し離れていたところ、そこに、あわてて、レオンが走ってきた。


「あ、ここにいたのですね。さっき、祝い酒をあやまって飲まれて探していたのです。大丈夫ですか?」

「もしかして、ユコナは、ほんとに酔っているの?」

「1口、2口だけですが、飲んだのは確かです」


 ユコナは、その後も、数発、いかづちを塚に落とし、満足そうに立っているのだった。


 ふと、まわりを見ると、いつの間にか、村中の人達が集まっている。


 それはそうだろう、薄暗い中、身近なところで、なんども雷光が走っているのだ。

 誰が見てもすぐ気づく。ユコナは遠巻きに村の人たち大勢に囲まれていた。


バシッィィィ


 さらに、一発、皆の前で、先ほどより大きいいかづちを打ち込んだ。

 間近で見ていた祭主から、声があがる。


「お、おぉ、雷神様じゃ。雷神様が降臨された。これは、ことしは豊作間違いなしだ」


 村長を含め、皆が喜びの声を上げる中、ユコナは、跪き、そのまま横になってしまった。


(もしかして、寝た?)


「おぉ、雷神様は天に戻られたぞ。さぁ、みな、雷神様が宿られた、そちらの娘さんをすぐお運びするのです」


 祭主の指示で、ユコナは、もともと祭壇に祭られていた雷神様の宿る神輿にうつされ、そのまま、どこかに連れていかれた。


「見た?」

「は、はい。見ました」

「レオン隊長、ご指示を・・・」

「さっきの、一口飲んだものは、神の宿りし聖杯ということで・・・」

「承知いたしました」


 レオン隊長の指示に従うため、プヨンはうやうやしく一礼した。


 夜は更けていった。

 プヨンとレオンは、ユコナのことは忘れることにして、祭りを楽しんだ。


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[一言] 看にいかないんかーい
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