かみの子の作り方 2-5
翌朝、すがすがしい朝日の中、ユコナは目を覚ました。少し頭痛がするが、気分は悪くなかった。ただ、少し、喉が渇いていた。
(そうだ。昨日は、村のお祭りにきていたわね。宵くらいから、どうしたのかよく覚えていないけど)
周りを見ると、なぜか、村の中心にあるお社、その祭壇のところに寝ていたようだ。
あわてて、飛び起きる。すると、物音に気付いたのか、外から声がかかった。
「雷神様、お目覚めになられましたか?中に入らせていただきます」
ユコナが状況が理解できず、だまっていると、祈祷師らしき女性がうやうやしく入ってきた。ユコナが目覚めたことに気づくと、外に向かって、
「雷神様がお目覚めになられました、儀式の準備を」
外に向かって何やら宣言した後、理解できないまま立ちすくむユコナの周りに数人の女官が集まり、儀式の準備を整えていった。
プヨンとレオンは、昨日、ユコナが運ばれていってから、2人でいろいろと話すことができた。
武器や魔法の話、町の治安などについて話したが、意外にもレオンの女性談議を聞くこともできた。
特に、自分の身を挺して淑女を守るということにかなり栄誉を感じるタイプのように感じられた。
そんな話をしながら、いつの間にか寝てしまった。陽の高さから、もうすぐ昼を迎えようとしている。
昼前に起きてきたプヨンとレオンのもとに、ユコナが戻ってきたのは、ちょうどそのころだった。村長以下、村の重鎮が集まり、着飾ったユコナを総出で見送りにきてくれた。
「くれぐれも、雷神様をよろしくお願いします。来年もぜひお越しいただきたく」
朝からもいろいろあったのだろう、ユコナの顔は、すでに疲れていた。
町に戻る時間となった。たんなる付き合い程度のつもりできたため、来る前には予想していなかった多くの貢物をもらったレオンは、困惑しながらも帰路についた。
村はずれまで、しばらくは、村の人たちも付き添い見送ってくれていた。
「雷神様、お疲れ様でした。いろいろあったようで」
3人になると、プヨンがユコナにねぎらいの言葉をかけてみた。冗談めかしてニヤっと笑ってみたが、ユコナは疲れ切っているようだ。
「もう、それを言わないで・・・はぁ、疲れた」
行くときの景色を逆に見ていく。
ユコナは疲れていたが、黙っているのもあれだし、レオンは、他にもいろいろと話をしてくれた。特に、最近の他国の状況が気になるようで、自身を囲む不安をまじえた話も多かった。
今回、急にレオンだけで行くことになったのも、最近の他国との国境防備が大きく関係していた。
聞くと、町警備の人数が減った理由が、北方の国々での大きな動きにあるらしい。
今までは犬猿の仲で小競り合いをしていた国々がまとまったことを知らせる情報がいくつも入り、その背景を探っているところらしいが、突然の動きらしい。
もちろん、紛争が終わり、平和になることはけっこうなことではあるが、レオン達の周りでは、それが次のもっと大きな争いにつながる動きだと思っているようだ。
確かに、プヨンも、数人の知り合いが情報収集や国境警備にあたることになったと聞いていた。町などの治安維持や害獣退治の担当者がそちらにまわったからだと教えてくれた。
プヨンの行く学校も、もともとはそういった国の活動に大きく関係している。
大規模な災害や害獣の発生、そして、国家間の紛争などがあると、予備兵扱いで駆り出されることもある。まったくの他人事ではなかった。
「そういえば、服の方はどうですか?動きにくかったり、苦しくなったりしませんか?」
少し話題がかたくなりすぎ、レオンは話題を変えてきた。
プヨンがお願いして行きがけに格安で提供してもらった回復用のスピン服のことを、レオンは気にしてくれていたようだ。
「この服って、どの程度まで役に立つの?ためしに怪我するのもなんだし試していないけど。実際、その時になってみないとわからないよね」
「スピン服に比べると、パンツァー服は、1ランク上ですね。完全に骨が折れたりすると、さすがに完治するまで時間がかかりますが、それでも、痛みなどはかなり軽減されますし、応急治療になります。少し休むと、ゆっくりと動かせる程度までは回復しますよ。回復魔法の資格でいけば、AA相当だそうですよ。もちろん、回復速度も違いますが、必要な魔力量、エネルギー量も違います。十分に蓄えておかないと、すぐ使い切っちゃいますよ」
そう言われて、服の色を確かめてみた。
「あ、あれ?服の色が白に戻ってしまってるよ。昨日見たときは、濃い紫色だったのにな」
「え、濃い紫色ですか?そ、それって、ちょっと待ってくださいよ。MIの5とか6とかの色ってことですか?1ランク違うと10倍違うんですよ。自分のは、今3の青色ですけど、それだと、1000倍違うことになりますよ」
レオンが慌てたように聞いてくるが、プヨンには、いまひとつ、レオンのいう感覚がよくわからなかった。
ただ、特別意識していなかったが、着ている間に服にプヨンのエネルギーを蓄積させていたのかもしれない。
「うーん、レオンの言う事は、よくわからないけど、でも、今は、白になってしまっているからなぁ」
この手の服は、色の違いで、蓄えているエネルギー量が10倍違うと聞いていた。魔力が貯まるほど、波長の短い色合い、青や紫になっていく。
服が白になったのは、蓄えすぎた魔力のせいで、服の色が紫外線領域に入ってしまったからだろうか。
色が目に見える範囲を超えたため、もともとの布地の白が見えていただけかと思われた。
「おっかしいなぁ。指輪といい、服といい、プヨンさんには、はずればっかりで申し訳ないですね。あとで、交換させてください」
そんな話をしていると、町の入口に到着した。町のざわめきを聞いて、馬車で寝入っていたユコナも起きてきたようだ。
「あー、もうすぐ着くのね。よく寝たわ。とても疲れたわ。あれ、このおみやげって村でもらってきたの?」
「お疲れ様です。ユコナさんのおかげですよ。ありがとうございます。来年も絶対きてくださいって言ってましたよ」
「え?来年も? それはちょっと遠慮したい・・・」
「ダメですね、絶対、名指しで来ますよ」
町に入って、レオンには礼を言ってわかれた。
「プヨンさんの分は、あとで、教会に届けておきますね」
おそらく、村で獲れた作物だったのだろう。ありがたく、いただくことにした。無給ではあったが、予想外のおみやげを考えると、もとは取れたかもしれない。
プヨンが立ち去ろうとした瞬間、背筋が寒くなった。とっさに建物の陰に隠れると、すぐ後ろから声が聞こえた。
「ユコナ、2日間もどこにいっていたの?」
サラリスだ。すっかり忘れていたが、もともとは、サラリスに追いかけていたのだった。
「サラ、違います。違うのです。しゅ、主犯が・・・いない」
ユコナの声が聞こえる。もちろん後ろを振り返ってはいけない。
プヨンは、足早にレスルに向かうのだった。




