ルリィの母親、そして"ニコポ"
「里まであと5㎞ってところか....ん?」
ソナーに表示される複数体の反応。
魔物のような反応でもなく、人の反応でもない。
ルリィに似た反応のようだが....。
「海人族か?」
「パパ、どうしたの?」
「ああ、こっちにすごい勢いで向かってくる海人族がいてな。もしかしたらルリィの知り合いかもよ」
「本当なの!?もしかしたらおじいちゃんかもしれないの!」
「おじいちゃん?」
「そうなの!おじいちゃんはいっつもルリィに優しくしてくれる優しいおじいちゃんなの!」
「そうか~」
ルリィはいい人に囲まれてるみたいでよかったなぁ。
ソナーに目を落とすと、すでに100mほどの距離になっていた。
目を凝らすとものすごい勢いで泳いでくる人影が5体ほど...。
ソナーの反応と同じだな。
俺は30mほど手前で船を止め、船体から身を出す。
「何者だ!」
「あぁ、えーと、間違ってなければここはルリィという少女の里で合ってますか?」
「ぬっ?!ルリィがいるのか!?」
「えぇ、まぁ。ルリィ、おいで」
「おじいちゃん!」
「ぬおおおお!!ルリィ!元気であったか!お前が人間に攫われたと聞いたときにどうやって嬲り殺そうかと...」
「大丈夫なの!パパが助けてくれたの」
「パ、パパ!?しかしレミアの夫は既に死んだはずじゃ...」
「パパはルリィを助けてくれたの!だからパパなの!」
「そ、そうか...ルリィの恩人をここで追い返すわけにもいかない。連れて行こう」
「しかし長!」
海人族の若い男がおじいちゃんと呼ばれてる男に抗議の声を上げる。
「構わん!恩人を虚無にはできん!」
「...わかりました」
「ほかの者もわかったな!」
「「「はっ!」」」
◇◇◇◇◇
「ここが私たちの里だ。何もないが、ゆっくりしていってくれ」
「案内感謝する。ルリィ、まずは母親のもとに行かないとな」
「...すまないが、母親に―レミアに会うのはよしてくれないか」
「なんでだ?この子の母親だろう」
「彼女はルリィが攫われた日から体調がすぐれなくなってしまってな...里の医師の診断だと流行病らしいんだ。治してやりたいのだが薬も材料もなくてな...」
「そうか。ほらルリィ、母親に会いに行くぞ」
「お前...さっきの話を聞いてたのか?彼女は病気だって...」
「だからどうした?」
「は?」
「だからどうしたんだよ。病気なら治せばいいじゃないか。それに、母親に会えないとルリィも悲しむだろ?俺はルリィを悲しませたくないからな」
「...好きにしろ」
「ほらルリィ、行くぞ」
「はいなの!」
◇◇◇◇◇
ルリィの家は想像よりでかかった。
母娘二人で暮らすにはいかんせん少々デカすぎる気がする。
「ママ!戻ってきたの!」
ルリィが大声でそう叫ぶ。
奥からドタドタという音と共に、エメラルドグリーンの髪をセミロングにした痩せ切っている女性が出てきた。
病気のせいか、少々やせすぎているが、顔立ちは美人のそれだ。
しっかりとルリィの母親であることを証明している。
「ルリィ!...そちらの方は?」
「パパなの!助けてくれたの!」
「どうも、ハルトです」
軽く会釈する。
「初めまして、リディアです。ハルトの婚約者です」
「ドーラと申します。私も...婚約者です」
二人も軽く会釈する。
ドーラ、お前はいつの間に俺の婚約者になったんだ...。
「あらあら、新しい夫ですか?私はルリィの母親のレミアと申します。ゴホッゴホッ!」
軽く会釈したが、我慢できなかったのか大きな咳が出てしまうレミア。
手のひらにはべっとりと血の塊がついており、明らかに重症だ。
「まずいな...。おいレミア、ひとまずベットに戻れ」
「はい...すいません」
「気にするな」
「..ねぇパパ。ママ、死んじゃうの?」
うるうるとした瞳で見上げるルリィ。
俺はそんなルリィの頭をなでながら「大丈夫」と宥める。
「お前のママは俺が救ってやるからな。パパに任せろ」
「...うん!」
さて、早速調合しようか...と言いたいんだが、俺には調合関係のスキルはない。
ダメもとで一応鑑定石で測ってはみるが...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
名前 ハルト 16歳 ヒューマン
クラス 召喚士 錬成師 魔術師
Lv.129
筋力 1009 → 1209
魔力 480250 → 480350
防御 908 → 1000
速力 3089 → 3109
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★スキル
体術 Lv.7
魔力直接操作 Lv.MAX(10)
魔力回復(特大) Lv.MAX(10)
魔法付与
スキル付与
錬成[+融合][+分離][+モデリング][+鉱物鑑定][+魔法付与][+鉱物生成](New!)
薬品調合(New)
威圧 Lv.8
気配遮断 Lv.7
魔力遮断 Lv.MAX(10)
縮地 Lv.5
言語理解
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★習得済み魔法
召喚魔法 Lv.MAX(10)
錬成魔法 Lv.MAX(10)
火魔法 Lv.3
風魔法 Lv.4
空間魔法 Lv.8(Lv.10で派生魔法発生[次元魔法])
回復魔法 Lv.7
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★従魔
フェルニ(フェンリル) Lv.330
ヴェル(不死鳥) Lv.290
ドーラ(アイトワラス) Lv.790
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★習得済み魔術
火魔術 Lv.MAX(10)
水魔術 Lv.MAX(10)
風魔術 Lv.MAX(10)
土魔術 Lv.MAX(10)
光魔術 Lv.MAX(10)
雷魔術 Lv.60(限界突破[上限Lv.100])
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★加護
神獣の加護×3
吸血鬼王の加護
リディアの愛情
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★称号
【雷帝】【転移者】【神獣を従えし者】【人神】
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あっれぇ?運がいいことに調合スキルがあるなぁ。
だがこれで調合できるのかが謎なんだが、魔力量でごり押ししよう。
「薬品調合【エリクサー】」
材料の前で手をかざし、スキルを発動させる。
めっちゃ魔力持ってかれるな...一気に1万は減ったぞ...。
でも時間が一瞬ってのはいいことだな。早速これを飲ませるか。
「レミア、入るぞ」
『えぇ、どうぞ』
レミアの部屋は綺麗に整頓されていた。
自分がいつ死んでもいいように、みたいな感じか?
だが俺が死なせねぇからな。くっくっく。
「部屋、何もなくてすいません」
「いや、気にしないから大丈夫だ」
「...私、いつ死ぬかわからないのでこうして部屋を綺麗にしてるんですよ。せめて死ぬときは綺麗な状態がいいですからね」
「ルリィに悪いと思わないのか?」
「思ってますよ。私はあの子の母親ですからね。病気が治るなら一生あの子と一緒にいたかったぐらいですよ」
「...そうか。どうやら死ぬ気満々らしいな」
「え?...病気がありますし」
「言っとくが、俺はお前を死なす気なんてないぞ?」
「...口説いているのですか?」
ふふ、とほほ笑むレミア。
あぁクソ。なんだよこれ。
すげぇもやもやするな。
「別に口説いてなんぞいないさ。お前が死んだらルリィは悲しむ。そしてお前もルリィから離れて悲しむ。そうだろ?」
「えぇ、そうですね」
「それは俺的にも少し嫌なんだよ。だからお前にこれを飲ませる」
「何をっ?!」
問答無用で口に試験管を突っ込む。
涙目になりながらもこきゅこきゅとかわいらしい音を鳴らしながら中身を飲んでいく。
「な、何を飲ませたんですか...?」
「エリクサーだ」
「...へ?あの、聞き間違いじゃなければエリクサーと...」
「エリクサーだぞ」
「...私、お金なんてありませんよ?」
「んなもん要らん」
「...どうしてです?」
「どうしてって...ルリィが悲しむだろ?」
「そうじゃなくて....どうしてなんですか?」
「...お前に惚れたからだよ」
「ふぇ?」
「...あーもう!お前に惚れたからだよ!言わせんなよ恥ずかしい...」
惚れた理由が"ニコポ"なんて死んでも言えない。
でもそれぐらいの魅力があったんだよなぁ...。
「とりあえずこれでも食え。病み上がりだとこんなもんしか食えないだろ?」
俺は目を逸らしながらアイテムボックスからおかゆを取り出す。
「...ふふっ。ありがとうございます。あなた」
「ばっ?!」
あなたって...まぁルリィにパパって呼ばれてるし今更なのか...?
◇◇◇◇◇
「ママぁ!」
「あらあら、ルリィったら。どうしたの?」
「治ってよかったのぉ...パパ、ありがとうなのぉ」
グスグスと泣きながらもしっかりとお礼を言うルリィ。
お礼を言えるってのはいいことだ。将来もいい子に育つんだろうなぁ...。
「どういたしまして。俺はすぐに帰るけど、ちゃんとママの言うことを聞くんだぞ?」
「え?パパ帰っちゃうの?」
「あぁ。そろそろ帰らないとフェルニたちも心配するからな」
「でもママに惚れたって...」
「ぶっ!」
思わず吹き出してしまった。
どうして知ってるんだ...?
そしてリディアさん、腕をつねるのはやめてイタタタタタタ。
「...どういうこと?」
「ご主人様、説明をお願いします」
「こ、これはだな...惚れたっていうかなんというか,,,その....すまん」
「...はぁ。気にしなくていい。ハルトなら私を一番に愛してくれるから」
「私は帝でもいいですよ?」
「あらあら、うふふ」
こらレミアさん。あなたが一番の元凶なんだからな。
「それであなた?私たちも王都に行ってもいいのかしら?」
「それは構わないんだが...家はどうするんだ?」
「売ろうかと思ってるわ。さすがに二人だと広すぎるからね」
「確かにそうだよな...まぁそういうことなら止めはしない」
「うふふ、ありがとうございますね、あなた?」
「あぁ」
「パパ大好きなの!」
「ありがとうな。っとその前に」
俺はアイテムボックスから一つのネックレスを取り出した。
色はルリィと同じエメラルドグリーンで、付与した効果は【位置探知】【強化魔法】【リカバリー】だ。
「あら?これは?」
「家族になった証みたいなものだ。よかったらつけてくれ」
「あらあら、ありがとうございます。よければつけていただけませんか?」
「構わないぞ」
俺はレミアの後ろ側に回り、首に手を回す。
白いうなじに少しドキリとしたのは内緒だ。
「できたぞ」
「ありがとうございます。一生大切にしますね?」
「そうしてくれると助かる」
「うふふ」
あっという間に構成されていく桃色空間にリディアが嫉妬したのは言うまでもない。
リディアがその空間を常に作っているとは自覚してないのであった。
◇◇◇◇◇
その後、2日ほどかけて王都に戻り、屋敷に戻った。
ベックマンの町で冒険者ギルドの受付嬢とマスターに土下座されたり、いつぞやの貴族の令嬢様に屋敷に招かれたりしたが、比較的平和に戻ることができた。
「もどったぞ~」
『待ってたのじゃぁ!』
『遅いぞ!いったい何をしておったのだ!』
「悪かったって。何か異常はなかったか?」
『ガラの悪そうな冒険者の小僧が生意気にも屋敷に侵入してきたからぶちのめした以外に何もなかったのう』
『平和だったぞ』
「そうか。しっかりと警備してくれたみたいだな」
冒険者?自業自得だろ。
『そんなことより!今夜はお主の飯がいいぞ!』
「あら、料理はお得意なのですか?」
レミアはこの2日でしっかり体重も回復してより色気のある女性になった。
未亡人独特の色気が出ており、何度理性を飛ばしそうになったか...。
「まぁな。結構腕には自信があるぞ」
「あら、では私も何かお手伝いさせていただきますね」
「なら私も」
「では私も...」
「「ドーラはダメ(だ)」」
「なんでですか!」
ドーラは料理以外は完ぺきなのだ。料理以外は。
「あらあら...ドーラさん、後で料理教えましょうか?」
「うぅ...お願いします」
なんやかんやあったが、俺たちは夏休みを最後の日まで楽しんだのであった。
リディア「ハルト、好き」ニコッ
ハルト「ポッ////」
これがニコポです。




