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「わ・た・る・ん♡」
こうして今日、僕は鶏になった。
もうすぐ焼かれて俺は食べられるのか。
もしかして、相沢が殺したいのって僕か?
「そんな顔しないでよ、わたるん。」
「なら、その呼び方やめてくれ。もうこれ以上、立つ鳥肌がない。」
「なにそれ。」
相沢がきょとんとした顔で僕を見る。
「なぁ、まさか愛優が殺したいのって僕?」
相沢は目をパチパチさせた。長いまつ毛がバサバサと動く。
「はははいいいい!?」
急にリアクションするな。
どこで習ったんだよ、芸人のような大袈裟でわざとらしいリアクション。
昨日のアヒルでさえそんな大袈裟なリアクションしなかったぞ。
こっちが驚いて、心臓止まるだろ。
やっぱり僕を殺すつもりなのか。
「まって、どういう解釈をしたらその結論にたどり着くわけ?」
「今日だけで愛優に二回殺されかけた。」
「いつ!?どこで?」
おっと、この流れは。
「「地球が何回まわった時!?」」
見事なハモリ。合唱コンクールで優勝できるぞ。僕はアルト担当でいこう。
横で相沢がケラケラ笑っている。
本当にこいつは精神年齢小学生だな。
やっぱり相沢を好きになるなんて絶対にない。
アヒル、君は全国放送でほら吹きとなったのだな。
「大丈夫…だよ。殺さない…よ、渡は。」
ここで倒置法発動。
笑いながらもしっかりと倒置法いれてくるあたり、やっぱりプロは違うな。
「喋るか笑うかどっちかにしろ。」
僕が面倒くさそうに相沢にそう言うと、相沢は目尻をクシャクシャにさせながら僕の隣でずっと笑っていた。