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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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9

相沢は僕といる時と、クラスでいる時の温度差が凄い。

「相沢さん、今日の掃除場所変わってくれない?」

「なんで?」

露骨に嫌な顔をしながら相沢は答えた。

あんな相沢を初めて見た。

小学校の頃の相沢は理由も聞かずに笑顔で承諾しただろう。

あんな氷の女王みたいに雰囲気えお一瞬で凍らすような言い方をした相沢を見たことがなかった。

代わって欲しいと頼んだ女の子が少し涙目になっている。

え、弱。確かにあんなに睨まれると怖気づくのも分からなくはないが涙目になるほどか?

クラスメイトに興味がないから顔は覚えていても名前が分からない。

二つ括りだし小さいし、、ウサギでいいか。

ザ・女子って感じだから、うさぴょんにしよう。

「なんでって、えっと、その…。」

うさぴょんは体をくねくねさせながら僕の方をチラッと見た。

こんにゃくダンスをし始めたのかと思った。

というか、ん?僕?

相沢はうさぴょんが僕の方を見たのを見逃さなかった。

「なんだ、本条君狙い?それならそうと言ってくれればさっさと代わったのに。」

僕が原因ですか…。

うさぴょんは僕狙いで、僕と一緒の掃除場所になりたいと。

そう言われると因果関係があるから、...納得。

「ひどい…。」

うさぴょんの横にいた背の高い…キリンさん。

大人っぽいから、さん付けにしておこう。

キリンさんが続けて言った。

「本条狙いって…。わざわざ言う必要ある?」

「じゃあ、理由もなく掃除当番代わると思ったの?」

僕は思いました。

相沢なら笑顔で代わるんじゃないかって思ってました。

「そんなのいちいち言わなくても何か事情があるのかなって察してくれてもいいじゃない。」

うさぴょんが泣き始めた。

これじゃあ相沢が完璧に悪者だ。

『相沢さんも黙って代わってあげたらよかったのにね。』

『でも、あの相沢だぜ?』

『確かに、相沢さんと交渉しに行くの勇気いるもんね。』

『けど、泣かすのは流石にやり過ぎだよな。』

『そうだよ。自分が可愛いからって調子乗ってるんだよ。』

『余所者なのにね。』

お?何だか悪口みたいになってきたぞ。

「本条君と喋りたいなら同じクラスなんだし、現にあそこにいるし、いつでも一緒になれる機会あるじゃん。ていうか掃除当番代わるより放課後のプール掃除代わってって頼む方が二人っきりになれるチャンスだよ。」

そう言いながら相沢は僕を指差した。

僕は何故か分からないが少し腹が立った。指を差された事に対して腹が立ったのではない。

僕がうさぴょんと二人になる事を相沢が提案したことに腹が立った。相沢に何故か言われたくなかった。

けどその何故かが分からない。

「あんた最低だね。」

キリンさんが相沢を軽蔑するような目で見た。

きっとクラスメイトも相沢に対しそんな目で見ているのだろう。

「最低?そんなの知ってるよ。でのその最低野郎に頼み事を知ってきたのはそっちでしょ?」

相沢は眉間に皺を寄せながらキリンさんを睨んだ。

ここは冬のシベリアかと思うぐらい教室が冷たい雰囲気に包みこまれていた。

「まぁまぁ、落ち着こうぜ二人とも。」

順平が二人の仲に割り込んで言った。

なんてベタな仲裁の仕方かと思ったが、シベリアに南方の風を吹き込んでくれた。

順平が仏に見えてきたぞ。その坊主は仏を意識していたのか。

「今、順は関係ないでしょ。空気読んで。」

キリンさんが順平に冷たい言葉を浴びせた。

俺は心の中で順平を応援する。頑張れ順平、負けるな順平。

「泣いてる子いるのに言い争っている場合じゃないだろ。」

温厚な順平が少しキレ気味に言った。

素直に順平をかっこいいと思った。

「渡、高澤を保健室に連れてって。」

高澤?

あ、うさぴょん、高澤って名前なんだ。

キリンさんの相方だし、さん付けで呼ぼう。

「分かった。」

そう言って僕は高澤さんの元に向かったが、どうやって高澤さんを保健室に連れて行けばいいのだろうか。

お姫様抱っこは恥ずかしくて出来ない。

ここは無難もおんぶか。

「乗って。」

僕は腰を下ろし、高澤さんに言った。

高澤さんは泣きながら一瞬固まった。

固まったのは高澤さんだけでなく、キリンさんも、順平も、相沢まで、クラスメイト全員が固まった。

まさかおんぶするとは想定外だったぽい。しかし、今ここでおんぶを止めると僕が恥ずかしい。

「早く。」

僕は高澤さんに言った。

高澤さんはお得意のこんにゃくダンスを披露しながら僕の背中に乗った。

微かに苺ミルクの匂いがした。

「じゃあ、行ってくる。」

「任した。」

僕は皆の視線を感じながら教室を出た。


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