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エルダーゲート・オンライン  作者: タロー


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贖う者達 エピローグ2

表現が下手な私の文章にお付き合いいただき、ありがとうございます!

ボクの名は…忘れた。ただ、周りからは千貌と言う異名を付けられた。

それ以来、そちらを好んで名乗っている。

薄っすらと僕の記憶に残るこの話は、何百年も前の話だ。




僕は当時、第3次職の仲間と共に挑んだ未知の古代遺跡に挑んだ事がある。

恥ずかしながらその時代のボクは、天才魔術師なんて呼ばれてたんだ。

有能な仲間と冒険者パーティを組んで未知遺跡を踏破する事が当時の目標だった。


そしてその遺跡の最下層で手に入れた仮面が後に【千貌】と呼ばれる始まりだった。






秘境と呼ばれる踏破不可能な山脈を乗り越え、ドラゴンが住まう巣を潜り抜けた場所にソレはあった。

遺跡には調べてわかった事だが、初めてアビスゲートと呼ぶ古来の封印の存在を知った。




後に調べて行く内に希少な資料の一部には、アビスゲートの存在が仄めかしてあり、戒めとして伝承としての情報が残されていたようだけど。



【禍々しきモノ、ここに封印せり…***たる*。決してこれを解くべからず】


全ては遅かった。この文はその宝箱に記されていた最後の警告だったのかも知れない。







順調に遺跡を攻略していくと、程なくして最下層に到達した。

迷宮などの経験から遺跡の最下層にはBOSSがいる。僕たちは気合を入れ直し、万全の態勢で最奥の間へと挑んだ。



光が僕たちを襲った。気が付けばだだっ広い空間へと転移した僕達は、周りが白い大理石なような美しい建築物に囲まれた間に呆然と立ち竦む。

中央に赤く光る召喚陣は点滅しており、そこから続々と白き塊が召喚され、隊列を組んで現れた。


《これより先は行かせぬ…招かざる者達よ、我が兵団の糧となれ》


その声は無機質な低音でプレッシャーを与えてくる。そして超重量級の足音が地震のように響き、その場にいる全員言いようのない不安と不気味さを感じていた。


2mもの巨体にランスとタワーシールド、全身鎧を着込んだナイトゴーレムと呼ばれる騎士型のゴーレム達と、真っ白で4m近い大理石巨岩兵ゴレムスキング

荘厳な雰囲気を持つキングと呼ぶに相応しい体格のゴーレムが現れた。


未知遺跡とあって、手付かずの宝物と未知の魔物を駆逐してきた合計6組の冒険者パーティ。人数にして24人はこの後体験したことのない死地へと見舞われた。


魔術士達は前衛の戦士の武具に付与魔法を掛け、時に攻撃魔法を唱える。

戦士は肉体を盾にゴーレム達に立ち向かう。

激しい激戦のあと、運良く生きて残ったのは僕達のパーティだけだった…。

崩壊寸前まで追い込まれたけど、僕の苦し紛れに放った攻撃魔法が大理石巨岩兵ゴレムスキングの装甲を突破し魔上核を偶然にも砕く事が出来なければ全滅だったに違いない。

キングを倒した事により、ナイトゴーレム達は起動を停止しその場に崩れ落ちていった。


本当、生き残れたのは奇跡に近いと思う。



共に挑んだライバル達は残念ながら死んでしまったけど、僕達は生きている。


ゴーレム達が出てきた魔法陣が赤く染まり、尋常ならざる光を放っていた。その真ん中には豪奢な宝箱が1つ出現している。

アビスゲートの封印を守る守護者を倒した事で、封印されていた宝箱が現れたんだろうと考えていた。



あのゴーレム達は門番だったのかも知れない


最後のラストアタックした僕は、代表して宝箱を開いた。


その中に暗く輝く仮面が納められていた。ソレは見方によっては酷く歪に見える不思議で奇妙な仮面だったと思う。

その奇妙な仮面がボクの運命を変えたんだ。

触る前に魔法で解析アナライズしたけど、危険な呪いもなく、結構なレアな品だと判明したので付けてみることにした。


その仮面を装着した瞬間、莫大な知識がボクに流れ込んできた。

例えるなら、お風呂の桶に湖が入るくらいの水量が無理矢理入ってくる…そんな感じさ。

頭が本当に割れたような痛みが常時襲われ、永遠とも思える悠久の苦痛が全身を引き裂くような痛みが襲った。


当然そんな状態では正気を保ちきれず、気絶した…んだと思う。気が付けばどうやら倒れていた。

パーティの皆が介抱してくれていたようで、安心した表情を見せてくれていた。良い仲間を持ったよ。


そんな思いとは裏腹に僕の身体は僕じゃないように勝手に動き出した。

背を向けたパーティの剣士と神官を背後から魔法を使って殺した。

何故…と訳が分からず呆然としていた魔物使いと魔物を無詠唱で繰り出した魔法で瞬時に焼き殺した。


彼等は仲間だったのに何故こんな事をしたのか?だって。

脳内に抗えない声で仮面が囁くのさ…こうやって生贄ケイケンチを捧げ、我の能力を解放しろって。



驚いた事に奇妙な仮面は殺した者達のその姿と、生きていた時の一部のステータスと能力を模倣する事が出来た。

強力な魔法使いにして剣士、神官、魔物使いと最初はそれだけだったけど、各地を冒険するごとに優秀な人材や職業を持つ者を仮面に囁かれるままに狩っていった。


仮面のチカラを引き出せば引き出すほどにこのチカラは増えていく。

暫く経験値と為に只々強者弱者を襲いまくった。

人としての倫理感など無くなり、境界線を踏み外すのは早かった。

瞬く間にソロでAランク冒険者となり、依頼さえあればどんな魔獣や冒険者とて殺してのけた。

当時、恐怖と羨望を込めて【千貌】と呼ばれていたんだ。



まぁいくら強力であってもボクが人間である以上、引き出せる強さには限界がある。

それに仮面のチカラで模倣している時は魔法使いである自身の力以外は1人分時間は使えない制限がある。


弱い相手ではもうボクのレベルや仮面の持つ能力は上がらない。

地道に経験値も貯めてLvを上げていくことで仮面の込められた知識の解放も明らかとなった。

だから、より強い魔物や力ある者を探して旅を続けているのさ。

次第に強くなってくる仮面の声に恐怖を感じながら、いつか支配してやるってネ。



近隣では僕に敵う敵はいなくなってしまった。

また最近は依頼もなく、欲しいようなめぼしい人材もなく、この仮面の研究に没頭する為に部屋に籠りきりだったんだ。


研究を重ねた結果、ある時を境に仮面の力が解放される出来事があった。


グリードアイと呼ばれる眼球型の魔物と戦ったんだけど、滅多にいない亜種系統の魔物なので当然、手強い相手だ。

しかも3匹もいて強襲された時に2匹は殺せたけど、リーダー格の1匹は恐ろしくしぶとく、強かった。

また厄介な事に敵対者の魔力を吸うチカラを持った魔物だったから僕との相性はすこぶる悪かったよ。


とうとう魔力が尽きかけた時、凄い飢餓感が己が身を喰らい、それは悍ましくも美しい形態を持つ第1段階と呼ばれる形態を強制発現させた。

グリードアイに魔力を吸われ続けながら、驚異的な身体能力で接近して素手で掴む。

そのまま握りつぶしたら大絶叫を上げたグリードアイは眼から輝く魔法を放出してきた。


取っ組み合いの中、黒い触手が身体から生え始め、そこがグリードアイに触れる度にごっそりと肉体を吸収…いや、喰う事が出来た。

その後は、しっちゃかめっちゃかに喰われたグリードアイの欠片がそこらに転がっていた。

唯一被害の少ない個体の素材を剥ぎ取り、売り払う事にした。


この形態を研究し、自分の意思で発現出来るまでにレベルアップ出来ると、次のことが検証にてわかった。

敵に狂気を伴う精神異常の攻撃と物理攻撃をまるっきり無視する身体。また魔法防御にも耐性がある。

ただし、精神異常の攻撃は無機物には効き目がない事が判明。


更に上位の化身と呼ばれる形態がある事を本能的に悟っていた。

しかしそこに至るまでにはさらなる経験値が必要だった。

仮面のチカラに経験値を送れば送るほどに、他者を模倣する能力で鍛え上げたチカラが必要とされなくなっていく。

この矛盾を孕む問題にいつしか考える事もなくなり、気にならなくなっていった。

その頃から辛うじて残っていた人間の残滓のような思考能力が仮面に奪われ始めたんだと思う。

身に過ぎたチカラの代償かも知れないが、もう気にもならない。









そんな出来事から各地に残るアビスゲートを調べ上げ、サザン火山にて素敵な出逢いがあった。


今回、異貌の神々の分体である【トゥーサ】が手に入らなかったのは痛かったけど、代わりにそれ以上の出会いが訪れた。




あぁ、レガリア。思い出すだけで涎が落ち、全てをぶちまけたい程の恍惚感を覚える。

目を閉じれば最期の光景が浮かび上がる。









貫かれた大太刀を背に生やしながら、ボクは強き者であるレガリアが欲しいと念話を通して伝えた。


〈なら…代わりに私の大事な愛刀をあげる。共に逝きなさい)


戦技【紅蓮一刀】を発動させ更に【蒼炎】を加えた一撃は、熱量の限界を軽く超えて炎熱耐性(極)をスキルに持つ修羅鬼形態のレガリアの両手をも焼け爛れさせていた。


大太刀は尚も眩しい光を纏い、蒼い花びらのような苛烈な攻撃がボクを襲った。


久しぶりに絶え間ない苦痛を負ったと思うんだけど、其処から記憶が殆ど無い。

記憶にある最期は…



全身を焼かれながらも何とか耐性レジストと自己再生をしていくが…恐らく間に合わずにこの身は消滅するものと判断した。


この千貌が…死ぬ?そう理解した途端、ボクを討った彼女から目が離せなくなった。


彼女レガリアの何と純粋で美しいことか…汚したくなるような踏みにじりたくなるような…表現しきれない切ない感情がボクを苦しめた。

この気持ちは何だ?世に産まれて初めての感情。どうすれば良い?戸惑いしか湧かない。

レガリアから強い想いの念話がくる。


(ああ、それと私はまだ生まれて1年も経っていません。

そう言えば、確か御主人様の国のお言葉でアナタの事をこう呼ぶ言葉があります」)


一拍置いて


《「「ヘンタイ」」》



その甘美な言葉ヘンタイは冷たく深層意識にに深く棘のように刻まれ、沁み入る。


レガリアの唇から聞いてしまった瞬間、全身を針という針が貫くような痛みと同等の喜びが襲う。人間的な意識が強く揺さぶられた。


過ぎた時間はほんの数瞬の間。

しかし、張り裂けんばかりの感情の締め付けと、何とも言い難い幸せの絶頂を迎え…そのまま意識は消失した。










今は誰も行き交わない忘れ去られし通路。

いまも残る焼け焦げ、ひしゃげ、破壊された跡は何ヶ月も前に激しい戦闘を物語る。

そして彼女敵が倒れ、消滅した場所にはレガリアの愛刀の残骸が虚しく突き刺さっていた。

どれくらいの時間が経過しただろう。突如としてそこから笑い声が聞こえた。


ククク、クハハハ。




地面より白と黒の点滅を繰り返して発光する丸い球体が浮かび上がった。



あーあ、また振り出しに戻っちゃったじゃん。

武具は部屋にまだまだ遺してあるから平気だけど。

ボクも死んだ事でこれまでの殺した相手同様、仮面に取り込まれたみたいだね。

しかも、どうやら死んだことでこの仮面の特性が分かるようになっちゃたよ。

同じような存在がウヨウヨいる事も…。



だけどこうして明確に意識があるのは、長年に渡って仮面を付け続けたおかげなのか新たな主人格機能メインパーソナリティーとしての人格として残されたようだ。


仮面の力を使って依代になる身体新しい魔物か、人間種を探す必要がある。

これから選ぶとしても、新しい依代を使い熟すまではそれまで大した活動は出来ないかも。







それにしてもレガリアか…何て神秘的な存在なんだ。


ボクを止める為だけに傷ついたレガリアの血、身体の傷や両腕の火傷…あぁ、なんて表現すればいいんだ。


レガリアの負った傷や激痛…更に自分を傷付けた激しい攻撃を想像すればそれすらも愛おしい。


決め手はレガリアがボクだけの為に言い放ったあの言葉ロリコンに、思い出す度に自然と顔に恍惚すら浮かんでしまう。

駄目だ、ボクはもうダメだよ!


風に煽られて灰が掻き集まり、新たな仮面が構成された。それは以前よりも小さく、

目元と口元を隠すだけの粗末な仮面だ。しかし、以前よりも強き暗き激しき感情を持って産まれてきた。




この世界での真の目的のついでに、彼女の行く末を見届けたくなっちゃった。

彼女が欲しい、喰らいたい、吸収したい、ぶちのめされたい、抱きしめたい、一つになりたい、飾りたい、絶望を見たい、殺したい…いや、何より彼女に殺されたいぃぃぃ!!




まだこの世界での人種に対する終焉の時代の到来…災厄の時までは時間がある。


千の貌の異名を持つボクは止まらない。彼女の御主人様とやらの存在も非常に気になるし。


一先ず待っててね、レガリア。

ボクは千を司る。今回は化身すらなれなかったけど、また戻ってくるヨ。











レガリアに悪寒が走ったのは言うまでも無かった…。























同時刻。


サザン火山の麓の草原が広がる場所に複数のテントと紋章が描かれた団旗が張ってあった。

その中の一角でも一際大きなテントで、1人の若く美しい女性が水晶玉を覗き込んでいた。


「むぅ…混沌に輝く大きな星が一つ落ちたようじゃ」


「本当か、オババ?信じられん…」


どうやら緑に輝く小さな星が活躍したようじゃな…と、続けて伝えた。

彼等はある目的の為に旅を続けている50名程の規模を誇る武装集団である。


「そうじゃよ坊主ヴォルフ


「もういい加減坊主はやめろよ、オババ…」


ヴォルフと呼ばれた髭の生やした中年の男は、苦笑しながらも嫌がってはいない。

よく見れば鎧から見える筋肉は引き締まっており、かなり鍛え抜かれた肉体が分かった。



一方オババと呼ばれた美しい女性は、フードで顔は隠れていたが、見える部分からはどう見ても10代にしか見えない。翡翠玉エメラルドグリーンの瞳に黒髪が映え、絹のようにサラサラとしている。

頭部のフードは頭頂部から角が生えているかのように、フードが真上に膨らんでいる。よく見ると長い髪に隠れて長い耳が見え隠れしていた。

この特徴から唯の人間ではないと判断がつく。


「どうやらアデルの町での報告にあった、資格を有する人物らしいな。名は…なんと言ったか?

兎に角、俺らの目的の敵を倒せるくらいの腕前は持ってるって事だ。

早速勧誘しに行った方が良いか?」



ヴォルフはオババに意見を求めると、水晶玉を見ていた女性は静かに首を振った。


「いや、まだその時ではないようだの。この若き小さき星はこの先、変化の時を迎えるようじゃ。

それも関わってく出来事で混沌に堕ちる星になるか、このまま輝く星になるかは分からぬ。

下手に干渉するよりは、運命に任せておいた方が良いじゃろ」


現在、彼女を直接照らす星が消えておるしの。

そう続けたかったが、ヴォルフの意識が既に別の関心へと移っていたため言葉にせずに飲み込んだ。

一度考え出すと殆ど聞き流してしまう癖は昔から知り尽くしていたあらだ。

じっくりと待ってから、やがて男は口を開いた。


「なら、俺らはこの地で討つべき禍つ存在はいない。

次は何処へ行けば良いか?」


「そんなに生き急がんでも良いのにのぅ…特に今回現れた混沌の星は我らが総出で掛かっても、全滅を覚悟せねばならん相手じゃったからの。

少なくとも妾のスキルである【星占フォーチュン】では、暫くは凶星や混沌の星は見えん。そうそう簡単に現れる存在でもないしの」



黙って聞いていたヴォルフは、それを聞いて考え込む。

確かにオババの言う通り、今回の相手は過去に現れたどの存在よりも厄介だと聞いていた。


ヴォルフは現在特命で任務を遂行中の兄貴と慕う団長を除くと、現在1番の腕前を誇る。


物心つく前に何処かの戦場でオババと団長に拾われ、幼い時から可愛がられた。

戦場を渡り歩く日々で辛いことも何度も経験してきたが、家族のように接してくれた団員達がいたからこそ、乗り越えられてきた。

15歳になった時に、オババや兄貴が団は危ないから町で生計を立てろと説得しても離れようとは思わなかった。遂に諦めた時に、逆にここで生き残るために相当ハードな訓練を課せられたのは、良い思い出だ。

スパルタ教育にて才能を開花させた俺は、現在団長補佐の地位まで上り詰めた。

戦場では誰よりも活躍ひて様々な死線を乗り越え鍛え上げた肉体と戦闘感は、龍・竜種や特別な魔物でもない限り、そう簡単には負けないと自負している。



それ故、それ程までの戦闘能力を有する相手に興味が持てない筈がない。

ちょっとだけ顔を見るくらいならいいだろうと結論を下した時に、オババと呼ばれた女性がニコッと笑った。


「坊主は顔に出やすい。じゃが、我らとてお客さんが来てそんな暇はなくなる。丁度良い機会じゃからお客さんからくる依頼でも受けておれ。損はないぞ?」



そう言うや否や、外から馬が集団で移動してくる音や嘶きが聞こえてきた。

どうやらオババの言ったお客さんが来たようだ。使いを出して要件を聞く。

許可を出すと、部下に案内されながら、騎士のような出で立ちの3名の使者が入ってきた。

ヴォルフが促すと、彼等は用意された椅子に腰掛け、話し出した。



「まずは突然の訪問に対し、話の場を設けて頂いて感謝する。



私の名はエラン。現在帝国と戦争中の第3王子率いる近衛隊の隊長を任されている。

とある密命を受けてサザン街道を外れ、山越えのルートを行軍中に貴殿らのテントを発見したのだ。

描かれている紋章を見て、かの高名なギルド所属の戦士団【背徳の翼】とお見受けした。

団長はランクAA、また団長補佐たるヴォルフ殿はAクラスと破格の強さを持っているとお聞きする。

どうか我らの依頼を聞き届けて欲しい」


地位のある者が其処まで出向いて頭を下げてきているのだ。

しかも頼んでいないのにここまでの事情を話されれば、断った方が厄介な事に巻き込まれかねない。


まぁ、オババ…いや、この戦士団の最高責任者であるアグレアスは厄介ことならば既に反対していただろう。

そうではない見たいだし、決めたのならば反対など無い。

今はこの退屈しなさそうな依頼を受け入れるだけだ。


混沌の星を討った者とはいずれ、邂逅することもあるだろう。

その時まで切磋琢磨して、お互い命がある事を祈るだけだ。



アグレアスは柔かな表情のまま、静かに瞳を閉じた。


(契約は守ったぞ。古き友よ)


彼等との邂逅もまた、暫しの時をえて果たされる。

それは必然でもあった。












グレファン達が町へと帰る前の話である。


まだ明け方近くなのだが、アデル伯爵邸にて冒険者ギルドの長たるアシュレイが緊急の要件にて、秘密裏に面会をしていた。

歳を召した為かアデル老伯爵は朝が早い。猛禽類のような鋭い目付きは、アシュレイから伝えられた情報を頭の中で充分に吟味していた。


「…アシュレイよ。それが誠なら我らはとんでもない膿を身内に囲っていた事になる」


「信じたくはありませんが…身内同士で足を引っ張っていた可能性があります。

そのガリウと呼ばれる者、信用出来るのですか?」


老アデル伯爵は、一呼吸のあとに家令を呼び鈴で呼び、とある書類を持って来させた。

そして机の上に置き、アシュレイに読むように促す。


「ふむ…アシュレイの言う事は最もだな。しかし、かの者は信用に足る騎士だ。

我が義息むすこたるレイフォンスに調査させた内容には、彼の国に関係せし血族であり是非味方に引き入れておくべきだ…と記されている」


当面警戒は必要だろうがな。と付け加えている老アデル伯爵。

いつの間に調査を…と思わなくもないがアシュレイは読み進めていく内に、かの者達はこの地に何をしに来たのか徐々に理解した。


リスクはあるだろう。しかし、その上で此方に引き込み、使い熟して見せるとこの老伯爵は言っているのだ。


「アシュレイよ、この地の冒険者ギルドの長に推薦したのはこの儂だ。

その時も貴公が使える人材であり、野心を秘めていても充分に好ましい人物だとわかっておったからだ。

情報は命じゃ…それをわかってない者が多すぎる。優秀な婿を取り逃がし娘にまで独立された何処ぞの魔法バカ貴族のようにはならんさ」


珍しく苦笑しながら答える老伯爵の顔には、これまでの苦労と重みが蓄積されていた。

この町の発展と安全の為に尽力してきた人物なのだと改めて感じさせられたアシュレイは、その場より立ち去り冒険者ギルドへと戻った。

そこで更にコウラン達から事の内容を更に詳しく知らされ、また大慌てで戻る事になった。





アシュレイが消えた客間に佇むアデル老伯爵。



「儂はな…未だ愛娘を殺された復讐を誓う鬼じゃよ。多少毒が有ろうとも、その為には体内に何を取り込んでも良いと思っておる。

レイフォンスには不憫の思いをさせているが、あの者が追っている人物…ソウマから何か聞き出せれば良いのじゃが」





同じ復讐の鬼と化したレイフォンスの帰還を待ち侘びる。

彼が帰還するこはもう少し後の事になる。ソウマには会えなかったレイフォンスだったが、出向いた先に会えた人物から彼らの仇が判明する事になった。


共通の敵を持つ彼らが組む事で事態は加速度をあげて進展していく事になる。この町にソウマが戻るその時まで…。









【イベント 異貌の神々】


ゲーム内での仮面は装備アイテムでは無く、イベントBOSSとして登場します。

レガリア達は開始条件を満たして最初の邂逅を果たしました。

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