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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第七十三話 休憩は適度に取りましょう



「晃先輩、休憩取れているんでしょうか」

「あぁ。どうかな」

 静先輩が心配そうに眉をよせて溜息をつきます。

「風紀委員に聞いてみようか?」

 真琴が、いなり寿司を頬張っている私を見ながら笑って携帯を操作しました。

 返事はすぐに返って来たようです。

「十五分仮眠を取ってすぐに出て行ったって…」

 風紀委員にも学園祭用の教室が用意されています。

 保健室に近い特別教室で、そこは生徒玄関に近い場所です。

「展示室の混雑は、予想していなかったからね。風紀委員の手が回らなかった」

 美術部もあんなに混雑するとは思っていなかったみたいでした。

 芹先輩と修斗先輩が展示室に向かったので、少しは良くなるでしょうか。

 その後の美術部員がどうなるかの方が心配だったりしますけど。

 今頃、芹先輩の黒靄くろもやを背負った笑顔に震えていそうですね。


 お腹が満足したところで芹先輩がやっていた仕事をしようと立ちあがった時でした。


 ガタンと音がして生徒間本部のドアが開きました。

 

「晃先輩?」

 

 走って来たらしく荒い息で、私をみるなりホッとしたような顔をしました。

「どうしました?」

「展示室で襲われたと聞いたんだが…」

「あぁ、襲われたと言いますか…騒ぎに巻き込まれたと言いますか。すぐに修斗先輩が助けてくれましたので、大丈夫ですよ」

「そうか…怪我はないんだな?」

「はい、ご覧の通り大丈夫ですよ」

「無事なら、良い」

 顔を見上げると、目の下にクマができてます。

 相当寝不足のようでした。

「ありがとうございます……晃先輩、少し休憩してはどうですか? 顔色良くないですよ」

「いや、すぐに行かないと…」

「三十分くらいは大丈夫だそうだ」

 静先輩が連絡を入れてくれたらしく、そう言って晃先輩を本部に唯一あるソファに腰かけさせました。

「はい、どうぞ」

 お茶を出すと、一気に飲んで深い溜息をつきます。

「少し仮眠をとった方が良いですよ」

「ん」

 珍しく素直に頷いた後、私を見上げました。

「陽向」

「はい?」

「膝かせ」

「えっ」

「前に俺様の膝を貸してやったろう。返せ」

 疲れている顔でニヤリと笑いながら晃先輩は手招きします。

「返せと言われましても」

「陽向が膝を貸してくれるなら、仮眠をとる」

 慌ててあたりを見回しましたが、枕になるようなものが見つかりません。

 静先輩を見ると、苦笑して肩をすくめました。

 仕方ないですね。


 私が晃先輩の隣に座るとすぐに膝枕であっという間に夢の中。

 真由ちゃんが、膝かけを晃先輩にかけてくれました。

 身じろぎもせずに、ぐっすりと眠っている晃先輩の顔はいつもより幼く見えて思わず頭を撫でてしまいました。

 視線を感じて顔を上げると、静先輩が何故か固まったまま動きません。

 声に出さずに首をかしげて問うと、静先輩は首を横に振ってパソコンに視線を戻します。

 


 真由ちゃんと真琴を見ると、二人は笑っているだけで何も言いませんでした。


  

 

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