第七十二話 絵画パニックです
うわっと声があがったかと思うと、私の横に修斗先輩が降りてきました。
はい、間違いじゃありません。
降・り・て・きました。
「修斗先輩!?」
「掴まって」
「修斗、頼む」
「了解」
私に黒い布をかけると抱えて飛びました。
見えなかったので、そういう感じがしただけなのですが、確かにふわっとした浮遊間でした。
悲鳴が聞こえて、トンと降りた感じがしました。
その後、走っている感覚。
ようやく下ろされた時は、すでに生徒会本部に到着していました。
「陽向ちゃん、大丈夫?」
黒い布を外されて、皆さんの顔が見えたときは安心しました。
「ごめんね、二人に展示室に行くように言った後に、絵のことを知ったんだ。知ってたら陽向ちゃんを行かせなかったのに。怖かったでしょ」
「あ、あの絵」
「うん、風紀委員の一人からメール来たんだ」
何処から撮ったのか、人の頭が沢山ある後ろかららしく、何とか私の顔のところを写してありました。
「これ、納涼祭の時のだよ」
芹先輩がため息をつきながらコメカミを押します。
「納涼祭の手伝いに来てたやつだ。美術部の二年生」
修斗先輩が黒い布を畳みながら言って私に椅子に座るように言ってくれました。
「写真も動画も流出してないはずだから、あの光景を目に焼き付けていたのかな」
あの光景というのは、和歌と二人でいたときのことですね。
貴雅先輩がネットで初日に撮ったらしい全体の絵を見つけてくれて、全員に見せてくれました。
「こんな風に見えたのですか? その…天使は別としまして」
全員が真っ直ぐに私をみて迷いなく頷いてくれました。
「そこだけ別世界みたいで綺麗だったの」
真由ちゃんが思い出したように「ほぅ」とため息をつきます。
「隣にいたのがぼくだったら嬉しかったのに」
真琴が苦笑しながら冗談めかして言って、芹先輩が同じくと頷きました。
「ともかく、本人の許可無く描いたものだから、外してもらおう」
ユラリと芹先輩の後ろに黒い靄が!
怖い、怖いですよその笑顔。
「いや、でもあの絵を見に来てる人が沢山いるし、無いとなると色々…」
「でもこのままだと陽向ちゃん、学園祭見て回れないじゃないか」
先輩達が急に暗くなったので、私は慌てて立ち上がりました。
「いえ、あの明日はまた彦星の格好をしますし、たぶんわからないかと思います。今日だけ外へでなければ………その…忙しいのに、申し訳ないんですけど」
「そこは大丈夫だよ。役割を交代すればいいだけだから。ともかく、今日を何とか乗り切って門を閉じた後、美術部と話をしようか」
ふふふとまた黒い靄を背負った芹先輩が生徒会本部を修斗先輩と一緒に出て行きました。
「陽向、御昼ご飯食べてないよね? ほら、晃からの差し入れ」
お重に入ったいなり寿司!
「ありがとうございます、晃先輩!」
「…うん、それ本人に言ってあげて」
「はい」
晃先輩は今頃何をしているのでしょうか。
見回りか、ネットのチェック?
あの日、ソファに倒れ込んでいた晃先輩を思いだして心配になりました。




