第六十話 解決に向けてです
出かけていた貴雅先輩と真由ちゃんが帰ってきて、頬を染めて報告してくれる真由ちゃんがあまりに可愛かったので抱きしめていると、晃先輩と静先輩が帰ってきました。
「何の現場だこれは」
「あ、お帰りなさい先輩。それでどうなりました?」
真由ちゃんを抱きしめたまま言うと、晃先輩が溜息をついてソファに座りました。
「陽向、苦しい…」
「あ、ごめん。真由ちゃん」
「結果を話すから、座れ」
晃先輩に言われて、全員がソファに座りました。
「どうして晃先輩が私の隣なんですか」
「なんだ? 男三人狭苦しく座れと? 二人ずつで丁度じゃないか」
「それはそうですけど」
「いいから座れ。…静」
晃先輩が顎で静先輩に話すよう促します。
ええと、静先輩が会長ですよね?
「あぁ。さっき話を聞いてきたんだが、本人だった。何でも中学の時から好きだったとか」
「はあ? だって私は女子中でしたよ?」
「本人が言っていた通りに言うぞ? 陽向の父親と一時期付き合っていた女性の弟なんだそうだ」
「……ありえなくもないですけど」
最近彼女がぱったりできなくなりましたが、少し前までは「とっかえひっかえ」的なことが多かったのです。おつき合いが長く続かなかったせいなのですけど。
「自分の姉がベタぼれする人というのを見たくて、後をつけたことがあったそうだ。その時に陽向を見たと言っている。何でもその時のお姉さんは少々病んでいたそうで、陽向が娘だと言うことを信じなかったらしいな? 陽向の後をつけて襲ったと聞いた」
全員が驚いた様子で私に注目しました。
「あの人の弟さんでしたか」
溜息をつくと静先輩がさらに目を見開きました。
「真実なのか?」
「“あんたさえ居なければ”と言われて。何とか回避しましたけど」
本当に恐ろしい目に遭ったのは、後にも先にもこの時だけでしたね。
「淡々と話されると余計に怖いんだけど…」
「そうなりますと、これは嫌がらせか復讐ですか?」
「いや、純粋に告白だそうだ」
「……はあ?」
「その時の陽向をみて惚れたそうで、声をかけたかったが、いつも隣に友達がいてできなかったと」
「あぁ和歌ですね。なるほど」
そう言えば中学時代に、和歌が私の周りにうろちょろするやつがいるから気をつけろと言っていたことがありました。
「いつも生徒会メンバーの誰かが側にいたというのもあったみたいだが。直接告白したら、投げ飛ばされるんじゃないかと思ったそうだ」
「いえ、誰でも投げ飛ばすわけじゃないですよ!?」
「投げ飛ばしたことあるんだ?」
「さすがに練習以外で投げ飛ばしたことはないです」
「練習?」
「はい、龍矢さんに護身術を習っているんです」
龍矢さんの職場で定期的に行われる教室があって、そこに通っていました。
今は時々忘れないように動きを見てもらうだけですけど。
「相手の力をうまくつかって自分よりも大きい人を投げ飛ばす…技があるんですが。それを見られていたのでしょうか?」
「……ともかく。陽向の言葉を伝えたら、怯えさせたかったわけではないと言っていた。陽向が嫌じゃなかったら、俺たち立ち会いのもと、告白したいと言っていたが?」
「答えは決まっていますがそれでも?」
「言って後悔するのと言わないで後悔するのとでは大きな差がある。というのは俺の持論だが、そう言っておいた。まぁ時と場合によるがな」
「そうですか」
「聞くか?」
「……はい。晃先輩は来てくれるんですよね?」
「もちろんだ」
晃先輩はふふんと言った感じで笑って肯定しました。その視線はなぜか静先輩を向いていましたが。
「修斗もつけようか?」
「いや、静と俺様で大丈夫だろう。辛いだろうが、頼む、陽向」
「断るだけですよね」
「断る方だって、何も感じないわけではない」
私が驚いて晃先輩を見ると、真剣な顔をしていました。
そうですね。
先輩たちは私よりずっと、その辛さを知っているのでしょう。
真剣に告白してくれるというのなら、私も真剣にお答えします。
それが今の私にできることなのですから。
お姉さんの所行とかもっと詳しく書こうかと思ったのですが、R15になりそうだったので、削りました。