第二十五話 囚人たちと神の像
万色の長教派、別の呼び方としては主教派。もっとも信徒数が多く最大勢力を誇る教派である。その教派の聖堂には、特定の形式がある。一番の上座――神の座とも呼ばれる――にラディクラーゼの偶像が置かれ、その前に説教壇が置かれる。そしてドア手前左側に緑の主、ドア奥左側に赤の主、ドア手前右側に青の主、ドア奥右側に黄の主の偶像が置かれている。
他の教派、例えば赤の主教派の場合、上座に赤の主の偶像が置かれ、その後ろ上部の壁部分に万色の長が描かれる。描かれる手法は教会によって異なるが大体が色硝子か絵画によってである。他の三色神は、それぞれ相生関係にあるものが、左右の壁に描かれ、相剋関係にあるものはドアの直上に描かれることとなる。
つまり、万色の長と四色神のすべてを偶像として祭るのはラディクラーゼ教派の聖堂の特色といえる。実際は他の教派が偶像を祭らないのは、金銭的な意味合いもあるが、主として上位である万色の長を壁面に描いているにも関わらず、自らが信仰する色神以外を偶像となすのは不遜ではないかという考え方があるからである。そのため、他の教派は、大体同じ位置関係を保ち形作られている。
これら以外の作り方をしていた場合、他の教派から恫喝、警戒や嫌味ともとれる意見が届いたりする。好んで争いを求めるものでなければ、当然、画一的に作られるようになる。
それはともかくラディクラーゼ教派の聖堂である。本来であれば、四色神すべての偶像が置かれるはずなのであるが、その聖堂には緑、赤、青の主の偶像しかなかった。黄の主の偶像が置いてある場所、そこにはぽつんと厳重な南京錠が施された箱がおいてあった。
それを見てラグスがディックに鍵開けを依頼する。ディックが頷く。
<開錠>スキル、ロックピックなどの特殊な道具を用いなくてもある程度の難易度の鍵が開錠できるというスキル。ただし、熟練度が低い場合には簡単な鍵しか開けることが出来ない。盗賊や海賊、山賊などが盛んに用いるアーツであるが、そのアーツに対応するスキルの熟練度が異様に上がりにくいのも有名である。
「この低い熟練で開くかねぇ」
そう誰にいうでもなくぼそぼそと呟きながら、ディックが箱の前に陣取り罠が無いかどうかを調べる。体が淡く光る特に何も感じられない。次に開錠を試みてみる。案の定、アーツは発動したが錠は解除されていなかった。
<開錠>スキルが熟練度が上がり難い理由、それは一度失敗した錠にアーツを何度試しても絶対に失敗することと一度失敗した錠ではアーツを使っても熟練度が上がらないからである。だからディックも一度アーツを発動させただけで終わらせる。
「無理だな」
肩を竦めながら振り返り、ラグスたちにいうディック。ロイが周辺をキョロキョロと見回しており、ラグスとザグンが何か思案でもしているかのような顔で腕組みをしていた。
「もうちょっと調べてみるわ」
そういってディックが立ち上がり、他の偶像を調べ始める。まずは青の主から調べる。それにロイが松明を持ってついていく。
像の裏から丹念に調べていく。ディックが調べている間、ロイは像を見上げながら口をなにかをつぶやくように口を動かしていた。そして地面を見る。他のラディクラーゼも含めすべてを調べてみるが像自体には特に罠や仕掛けの類はないようであった。
ディックが、ふとラディクラーゼの像を見上げ、聖印と呼ばれる動作をし一瞬頭を垂れ祈りをささげる。その後、再度ラディクラーゼの像を見上げる。ディックの顔が怪訝なものを見たかのような表情に変わる。
ラディクラーゼの顔が正面ではなく、黄の主の方向を向いているように見えるのだ。こういった聖堂に置かれているラディクラーゼの像は全てを見通すかのように正面を見据えていることが多い。しかし、ここにあるそれは違っていた。それに気が付いたディックがロイに顔を見るように合図する。
地面を見つめていたロイがラディクラーゼの像の顔を見上げる。そしてまた地面を見てなにかをぶつぶつとつぶやく。まるですでに知っていたかのようなその動きを見てディックが疑問を抱き、それを問おうとすると、
「なにかあったか?」
先にザグンが問いかけた。
「ええ、三色神の顔とラディクラーゼ様の顔の向きがおかしいのです。ただその意味が分からない……」
ロイが地面を見ながら答える。
「赤の主は青の主の方を見ていますし、青の主は逆に赤の主の方を見ています。緑の主は黄の主の像があるはずの方向を見ていますし、ラディクラーゼ様も黄の主を見てらっしゃいます。ご承知でしょうがこれらはすべて相剋関係以上に、本来であればありえないことなのです」
通常の教会内の四色神はそれぞれラディクラーゼの像を見ているかのように配置される。それは主神を仰ぎ見る従者を表し、主神もすべての色神の行動を観ている。それがこの聖堂内ではラディクラーゼを見ずに各々相剋関係にある色を見ているし、ラディクラーゼも一色を見ているのである。
「ふむ、父にして母なるラディクラーゼ様が黄の主だけを見ているか……」
そういってザグンが考え込む。ディックとロイも同様である。そんな中、ラグスが声を上げる。
「ラディクラーゼ様が別のものを見るっていうのはそこに何か特別な意味があるだろうし、ラディクラーゼ様を見て居ない色神様っていうのも意味がありそうだね。そういえばさっきロイも言っていたけど、第一階層の装飾って青と赤の主と緑の主が二対だったんだよね。だとしたら素直に黄の主のところに緑の主がいるほうがこことしては正しい在り方なのかもしれないよ?」
ザグンが意外なものを見たかのようにラグスを見る。そんなザグンをみて心外そうな顔をするラグス。ラグスの言葉を聞いたロイが未だ地面を見たまま口にする。
「……その考えは正しいかもしれません。が、それを意図するところがわからな……!!」
不意にロイの言葉が止まる。
静寂が聖堂内は己のものだとばかりに支配領域を広げるのであった。
名称:ラグス レベル:2 先天的才能:守り手
スキル:<剣術>(2:5/30)、<盾術>(1:8/10)、<気迫>(1:3/10)、<**>、
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アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声、
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名称:ザグン レベル:2 先天的才能:怪力
スキル:<鎚術>(2:5/30)、<両手利き>(2:2/30)、<物理耐性>(1:9/10)、<戦声>(1:1/10)、
<自己治癒上昇>(1:6/10)、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>
アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃、<戦声>:ウォークライ、
<自己治癒上昇>:自己治癒上昇強化I、<物理耐性>:痛覚軽減、<**>:**
名称:ディック レベル:2 先天的才能:弓の名手
スキル:<弓術>(1:3/10)、<探査>(2:18/30)、<開錠>(1:1/10)、<罠設置解除>(2:1/30)、<危険察知>(2:9/30)、
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アーツ:<弓術>:ピアッシング、<開錠>:簡易開錠、<**>:**、<**>:**、
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名称:ロイ レベル:2 先天的才能:魔法使役者
スキル:<魔法制御>(1:7/10)、<水属性制御>(2:3/30)、<土属性制御>(1:4/10)、
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アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御、<**>:**、
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