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囚人と迷宮と  作者: 灰色の雪
第一章 囚人たちの浅層攻略
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第十五話 囚人たちと難敵と

表現を若干変更(2013/3/3)

 薄暗い迷宮内に揺らめく明かりがあった。その明かりは固定されているのか揺らめきはするが、そこに在り続けた。その明かりの下には四人の男たちが座っていた。ラグスたちである。四人とも疲れた顔をしており、食事を取っている。堅いパンを口に含み何度も何度も噛み嚥下する。時折、湿らせる程度に水を口に含む。それの繰り返しである。会話も特になく。全員が沈黙のうちに食事を続ける。その場を静寂が包んでいるのは理由がある。特に変化のない同じ道で十字路に至る。しかも数は少ないがモンスターが時折襲撃してくる。その状態で迷宮を丹念に調べていく。緊張の連続、まさに気が休まるときがないのである。


 迷宮内のモンスターとは不思議な存在である。地上においては、生命の営みの中で育まれており、絶命すれば屍を晒す。それが迷宮内ではそうはならない。気が付けば発生し、絶命すれば消える。それがどのようなプロセスで為されているのか不明なのである。

 教会が声高に主張しているのは、『種の進化を促すべく神が給うたものである』というものである。これには少数ながら反対を唱えるものもいる。反対派の意見としては『神の給うたものであることは疑いないが種の進化を促すという限定されたものではなく、さまざまな変化を促すためのものである』というものである。余談であるが反対意見を唱えているものを革新派として教会は弾圧しようとする動きもある。

 どちらも迷宮は神の奇跡として認識されており、迷宮内に存在するモンスターもその奇跡の一つであると認識されている。

 問題なのは、そのモンスターは絶滅させることができないということである。地上ではすでに絶滅した種も迷宮内においては存在している。しかも、モンスターも迷宮探索を行っている者を倒すことでレベルが上昇することが知られている。

 つまり、迷宮内ではモンスターは常に出現する可能性が在り、それは強敵である可能性も否定できないということである。


 このような状況の中での探索を行うのであるから気が休まるときがないのも当然である。とはいえ、何とか最初の十字路を右に曲がった方向にある通路は踏破できた。収穫は特にめぼしいものはないというものであったが……。

 全員が食事を終え、警戒は怠らないが多少ゆったりした時間が流れる。


「あれだけ歩いて、ゴブリンの牙四本だけかぁ。厳しいなぁ」


 ラグスが大袋の中を見ながらいう。


「仕方あるまい。通路しかなかったからな。小部屋でもあればまた別なんだろうが」


 そういってザグンが慰める。

 モンスターは常にどこでも出現する可能性が在るが部屋内に出現する場合が多い。そしてなぜか探索者の目のある場所には出現しない。これらの規則性を持っている。これは迷宮を探索する者にとって常識とされている。


「まぁ強敵が出なくて御の字くらいに考えた方がいいんじゃねぇか?」


 ザグンの言葉をディックがさらに補強する。ロイは地面を見ていて参加するつもりはないようだ。


「そうだねぇ。そう考えた方が建設的か」


 二人の意見に乗るラグス。ザグンはそれを聞いて頷き、言葉を付けたす。


「これで半分終わった。あとはもう半分。このままいきたいところだな」


 いやなことはさっさと終わらせるべきだと言外に言うザグンにラグスとディックが頷く。ロイも慌てて頷く。それをみて立ち上がるザグン。それに追従してラグスたちが立ち上がる。

 

 事が起こったのは、最初の十字路から右に進み次の十字路を左に曲がり直進。四つ目の十字路に差し掛かったときであった。まず立ち止まったのはディック。それに気が付いた三人がディックを見て立ち止まる。


「……何か感じないか?」


 ディックが周辺を見回しながら問う。それにつられてラグスたちも周囲を見回す。特になにも感じなかったのかラグスが、


「いや、なにも……」


 そう答える。それを聞いたディックがおもむろに弓に矢を番える。一点を見据える。視線の先には何もない。


「何か……いる!」


 そう言った瞬間、矢を放つ。矢は山なりに飛んでいき、光の範囲を飛び越していった。弾き返したかのような金属音がする。全員がそれを認識し武器を構える。ディックが再度弓を番え放つ。金属音。その直後、松明の光の範囲に脚甲が見えた。再度ディックが構えようとした瞬間、近寄る者の全身が見えた。


上位(ハイ)ゴブリン!」


 認識と同時に警告を発するラグス。

 上位ゴブリン。ゴブリン種の中では脅威と認識される一種。通常のゴブリンより膂力に優れており、強靭な筋力から繰り出される攻撃は、イノシシすら一撃で仕留めるほどであり、身体的に非常に優れている。また下位ゴブリンやその上位種であるゴブリンよりも優れた知性がある。地上の場合、五十匹程度の集団の長足りうる種で、一人前といわれる冒険者パーティがしばしば全滅することもあるほどの難敵である。

 ディックが再度弓を放つ。上位ゴブリンが片手で持った両刃斧を正面に構え弾き返す。


「クカカッ、アマイ」


 そう言葉を発した。そう上位ゴブリンは言葉を操れるのである。上位ゴブリンは矢を弾き返したまま、一気にラグスに迫り、両刃斧を振るう。驚異的な膂力により繰り出されるそれはそのまま受ければ盾を打ち壊さんばかりである。咄嗟にラグスは受け流すように盾の位置を調整する。亀犬の甲羅より作られた盾の表面が盛大に削られる。

 両刃斧が盾を通り過ぎた時、ラグスの体が淡く光る。≪盾術≫:バッシュの発動である。無防備な肩口に盾を思い切りぶち当てる。たたらを踏む上位ゴブリンにザグンが金属の棒で殴りかかる。上位ゴブリンはサイドステップでそれを避け距離をとる。その刹那、ディックから矢が放たれる。両刃斧を正面に構え弾く。


「小癪ナ」


 そういうないなや、フロントステップでラグスに向う。ラグスは再度盾を構え、あわよくばカウンターで長剣を振えるようにする。ラグスに到達し、攻撃が来ると認識し腕に力を込めた瞬間、上位ゴブリンがサイドステップを踏み、ザグンの方へ。急な方向転換にザグンが両手の棒を前方に構える。盛大な金属音。棒で両刃斧を防ぐ。凄まじい膂力で棒が押される。それに力を籠め押し返す。不意に抵抗がなくなる。

 上位ゴブリンが斧を持たない左拳でザグンの顔面を殴りつける。力が抜けた一瞬であったため、カウンター気味のその拳はザグンの右頬を捉え、ザグンがたたらを踏む。

 背後からラグスが近づき鋭い突きを放つが、左手の反動を使いバックブリーカーの要領で長剣を斧で打ち上げる。乱杭歯を見せる上位ゴブリン。笑ったようである。

 ロイの体が何度か淡く明滅する。それを視界にとらえた上位ゴブリンがバックステップ。先ほどまでいた場所の地面から黄色の淡い光が隆起する。前にゴブリンの脚を砕いた魔法である。


「そんな……」


 会心のタイミングだと思っていたロイから声が漏れる。上位ゴブリンが上体をひねる。ディックの矢を避けたのである。


「アマイアマイ」


 黄色い乱杭歯を見せながらニヤニヤと嗤う。嗤った顔のまま、再度フロントステップでラグスへ。そのまま斧を振るう。ラグスはそれをスエーで避けながら、上体を戻しながら袈裟に斬る。上位ゴブリンの腕に赤い線ができる。

 それに構わず上位ゴブリンは上体をひねり体を一回転させ、その遠心力を加算した状態で再度ラグスに斧を振るう。ラグスは咄嗟に盾を構えるが、亀犬の盾の金属で縁取りした部分が当たり、耐え切れず盾を手放す。それを好機と見たのか、ラグスに左肩でタックルかかます。体が軽く浮き上がる。


「グッ」


 先ほど口にしたパンと水が外に出たいと騒ぎ出すが、それを押さえつけるラグス。

 追撃をしようとした上位ゴブリンに復帰したザグンが躍りかかる。激しい舌打ちをし、上位ゴブリンがそれをステップで回避。回避したところで左腕に矢が生える。ディックが放ったものである。さらに小指の先ほどの大きさの水弾が左腿を通り抜ける。してやったりの表情のロイ。

 左足に負傷を負った上位ゴブリンにザグンが襲い掛かる。右の棒を逆袈裟に振るう。それをスエーで回避、棒を振るった勢いのまま左の棒で突きを放ち、右わき腹のあたりで打撲音。カヒュッという音が上位ゴブリンの口から洩れる。

 ザグンが追撃をしようと右腕を振り上げるが、鳩尾に前蹴りが飛んでくる。一歩後ろに下がるザグン。足を下ろしたタイミングで更にタックル。タックルをもろに受け、軽く後ろに飛ぶザグン。


「ナメルナ」


 さらにフロントステップで近づき、逆袈裟にスイング。ザグンの右腕を斬り取らんばかりに迫る斧。咄嗟にバックステップで回避。激しく息継ぎをするザグン。スイングで体が開いたところに、ラグスがわき腹に突きを放つ。突き刺さる長剣。一気に腹筋ごと斬り去る。腹の中のものが盛大に飛び出す。大きく目を見開く上位ゴブリン。暫く腹を手で押さえていたが、そのまま膝をついて倒れ伏した。


名称:ラグス レベル:2 先天的才能:守り手(ガード)

スキル:<剣術>(2:5/30)、<盾術>(1:8/10)、<気迫>(1:3/10)、<**>、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声(コール)

     <**>:**、<**>:**、<**>:**、<**>:**


名称:ザグン レベル:2 先天的才能:怪力(パワー)

スキル:<鎚術>(2:5/30)、<両手利き>(2:2/30)、<物理耐性>(1:9/10)、<戦声>(1:1/10)、

     <自己治癒上昇>(1:4/10)、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃(ダブルアタック)、<戦声>:ウォークライ、

     <自己治癒上昇>:自己治癒上昇強化I、<物理耐性>:痛覚軽減、<**>:**


名称:ディック レベル:2 先天的才能:弓の名手(スナイパー)

スキル:<弓術>(1:3/10)、<探査>(1:8/10)、<開錠>(1:0/10)、<罠設置解除>(1:2/10)、<危険察知>(1:7/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<弓術>:ピアッシング、<**>:**、<**>:**、<**>:**、

     <**>:**


名称:ロイ レベル:2 先天的才能:魔法使役者(マジックユーザー)

スキル:<魔法制御>(1:4/10)、<水属性制御>(1:7/10)、<土属性制御>(1:4/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御、<**>:**、

     <**>:**、<**>:**、<**>:**


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気が付けば総合が12000、ユニークが2500を超えてました。

楽しんでいただけているのでしょうか……。でしたらありがたいことです。

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