【第56話】 渦の奥が“紬の名前の核を迎え入れる形”に変わるとき
渦の内部は、紬の名前の響きに従ってゆっくりと形を変えていた。
黒い霧は紬の周囲から離れ、渦の奥へと引いていく。
まるで――
渦の奥が紬を待っている
そんな風に見えた。
紬は胸の奥を押さえた。
「風花」という響きは、渦の内部に入ってからずっと強く、鮮明に響いている。
蓮は紬の手を握り、静かに言った。
「紬……渦の奥が動いてる。
紬の名前の核を“迎え入れる形”に変わってる」
紬は息を飲んだ。
「迎え入れる……?」
ユイは風を揺らしながら言った。
「紬! 渦は紬の名前を壊すんじゃなくて、
“中心として取り込むための形”に変わってる!」
真白は紬の手を握りしめた。
「紬ちゃん……渦の奥が紬ちゃんの名前の響きに合わせて開いてる……!」
ミナは渦の奥を見つめながら言った。
「影の中心は沈黙した。
残っているのは“影の心臓の残滓”。
それが紬を中心にして再構築されようとしてる」
紬は胸の奥が強く揺れた。
■渦の奥が“名前の核の形”に変形する
渦の奥がゆっくりと開いた。
黒い霧が左右に割れ、中心に“空洞”が生まれる。
その空洞は――
紬の胸の奥にある名前の核と同じ形だった。
紬は震えた。
「……これ……私の名前の核の形……?」
蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。
「紬……渦は紬の名前の核を迎え入れるために形を変えてる。
紬を中心にして、新しい心臓を作ろうとしてる」
ユイが叫んだ。
「紬! 渦が紬の名前の核を“はめ込む場所”を作ってる!」
真白は紬の手を握りしめた。
「紬ちゃん……渦が紬ちゃんの名前を中心にしたいんだよ……!」
ミナは渦の奥を見つめながら言った。
「紬の名前の核は強い。
影の中心の攻撃を全部耐えた。
だから渦は紬を中心に選んだ」
紬は胸の奥の響きを感じた。
「風花」が強く光る。
■渦の奥から“影の心臓の残滓”が姿を現す
渦の奥の空洞が震えた。
黒い霧が集まり、形を作り始める。
――ふうか
――ふうか
――ちゅうしんに、なれ
紬は息を飲んだ。
黒い霧が形を成し――
そこに現れたのは、影の中心が沈黙した後に残った“影の心臓の残滓”。
それは心臓のような形をしていたが、
脈打つたびに名前の響きが漏れ出していた。
蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。
「紬……あれが影の心臓の残滓。
影の中心が壊れた後に残った“最後の核”だ」
ユイは風を揺らしながら言った。
「紬! あれは紬の名前の核を奪えなかった“影の最後の心臓”だよ!」
真白は紬の手を握りしめた。
「紬ちゃん……あれが渦の奥の正体……!」
ミナは渦の奥を見つめながら言った。
「紬の名前の核を中心にして再構築されようとしてる。
紬が入ったから……渦は紬を中心に選んだ」
紬は胸の奥が強く揺れた。
■影の心臓の残滓が紬に語りかける
影の心臓の残滓が脈打ち、名前の響きを放つ。
――ふうか
――ふうか
――ちゅうしんに、なれ
――なまえを、わたせ
紬はステッキを握りしめた。
「風花は……渡さない」
蓮が紬の名前を呼んだ。
「紬!!」
ユイが風を送り、真白が光を重ね、ミナが影の心臓の根元を切り裂く。
紬は叫んだ。
「風花――!!!
私は……中心になんかならない!!
名前の核は……私のもの!!
影には絶対に渡さない!!」
影の心臓の残滓が大きく揺れた。
渦の内部が震え、黒い霧が紬の周囲から離れていく。
蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。
「紬……渦は紬の名前を拒絶された。
次は……渦そのものが紬に試練を与えてくる」
紬は胸の奥を押さえ、静かに頷いた。
「風花……ここにある……
絶対に奪わせない」
渦の奥が――
紬の名前の響きに従って、さらに深く開いた。
あとがき(紬の日記)
渦の奥は私の名前の核の形に変わっていた。
影の心臓の残滓が私を中心にしようとしていた。
私は拒絶した。
渦は私の名前を本物だと認めた。
明日は渦の奥の試練に進む。




