【第47話】 影の中心が“紬の名前の核を奪うために紬を分裂させようとする”とき
街の中心に残った黒い渦は、昨日よりもさらに濃く、深く、重くなっていた。
影響域は街全体を覆い、名前の響きは常に揺れ続けている。
だが――今日は、渦が“紬を二つに分けようとしていた”。
紬は観察ノートを胸に抱え、渦の中心を見つめた。
胸の奥の「風花」という響きが、昨日よりも強く震えている。
まるで渦が紬の名前の核を奪うために、紬自身を“分裂させようとしている”かのように。
蓮は紬の隣で言った。
「紬……影の中心が、紬を“二つに分ける”段階に入った。
名前の核を複製できなかったから……次は紬自身を分裂させて、核を取り出そうとしてる」
紬は息を飲んだ。
「私を……分裂……?」
ルクは紬の肩で震えながら言った。
「紬……渦の奥から“ふたつの風花をつくれ”って響きがするよ……昨日よりずっと強いよ……」
■影の中心が“紬の分裂”を始める
渦の中心がゆっくりと形を変えた。
黒い粒が集まり、影の欠片が重なり、ひとつの“黒い核”になっていく。
その核は――
紬の胸の奥に直接響いた。
――ふうか
――ふうか
――ふうかを、ふたつに
――かくを、ぬきとれ
紬は震えた。
「……私を……二つにして……核を抜き取る気……?」
ユイは風を揺らしながら叫んだ。
「紬! 影の中心が紬の“存在そのもの”を二つに割ろうとしてる!
分裂されたら……片方の紬から名前の核を抜き取られる!」
真白は紬の手を握り、震える声で言った。
「紬ちゃん……名前の響きが二つに割れかけてる……!」
ミナは渦を見つめながら言った。
「影の残滓は、紬の名前の核を奪うために“紬自身”を複製しようとしてる。
紬の影を作って……その影から核を抜き取るつもりだ」
蓮は紬の肩を抱き、強く言った。
「紬……絶対に分裂させない。
影が紬を二つにしようとしても、俺が紬を呼び続ける」
紬は胸の奥が強く揺れた。
「蓮……」
■影の中心が紬の“存在の響き”を二つに割ろうとする
渦の中心から黒い糸が伸びた。
昨日までの影の欠片とは違う。
核でも未来でも意味でも存在でもない。
――紬の存在そのものを二つに割る糸。
糸は紬の胸の奥に触れようとしている。
「紬、避けて!」
蓮が叫んだ。
だが――
紬の存在の響きが、影の中心に引っ張られていた。
ユイが風を送り、糸の動きを乱す。
「紬! 影の中心は紬の存在を二つに割る気だよ!」
真白は治癒の光で紬の輪郭を支える。
「紬ちゃん……存在の響きが二つに裂けそう……!」
ミナは糸の根元を切り裂こうとするが、糸は形を変えて避ける。
「紬! 影の中心は“存在の響き”を真似してる!
紬の存在に直接触れられる!」
紬は胸の奥の響きを感じた。
「風花」という名前の存在が揺れ、二つに割れかけている。
蓮が紬の名前を呼んだ。
「紬!」
その声が紬の胸の奥に灯りを戻す。
紬はステッキを握りしめた。
「存在まで……絶対に割らせない!」
■紬が“自分の存在の響き”を呼ぶ
紬は深呼吸し、胸の奥に手を当てた。
「風花――!」
影の中心が揺れた。
だが、糸はまだ紬の存在を二つに割ろうとしている。
紬はさらに強く叫んだ。
「風花――!!
私は……ひとり!!
名前も存在も……ひとつだけ!!
影なんかに分裂させない!!」
その瞬間、紬の胸の奥が強く光った。
ユイが風で影の中心を乱し、
真白が治癒の光で紬の輪郭を支え、
ミナが糸の根元を切り裂く。
蓮は紬の肩に手を置き、強く言った。
「紬、もう一度!」
紬は叫んだ。
「風花――!!!
私は……私だけ!!
影には絶対に“もう一人の紬”を作らせない!!」
影の中心は大きく揺れ、黒い霧となって崩れ落ちた。
渦の中心が――
初めて、完全に沈黙した。
■影の中心は“紬の分裂”を諦めていない
ユイは風を揺らしながら言った。
「紬……影の中心は壊れたけど、渦はまだ残ってる……」
真白は紬の手を握り、震える声で言った。
「紬ちゃん……存在を二つに割られかけたのは初めてだよ……」
ミナは渦を見つめながら言った。
「影の残滓は、紬の影を作って名前の核を奪おうとしてる。
影の原型がいなくても、影は紬を中心に再生できる」
蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。
「紬……影の中心を封じる方法を見つけないと、紬の名前が狙われ続ける」
紬は胸の奥の響きを感じながら言った。
「影の中心……必ず止める」
蓮は紬の手を握り返し、強く頷いた。
「紬、一緒にやろう。
影の残滓を封じる方法を見つける」
紬は蓮の瞳を見つめ、静かに頷いた。
「うん。絶対に」
あとがき(紬の日記)
影の中心は、私を“二つに分裂させて”名前の核を奪おうとしていた。
呼んだ瞬間、胸の奥が強く光った。
影は私の影を作ろうとしている。
渦はまだ消えていない。
明日は影の中心を封じる方法を探す。




