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一度きりのリボン  作者: 矢満田太郎
第4章:影の残滓と新しい名前の脅威
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【第35話】 影の残滓が“名前の音”を奪うとき

街の中心に残った黒い渦は、昨日よりもさらに濃く、深く、重くなっていた。

影響域は広がり続け、街の空気そのものが名前の響きを揺らしやすくしている。


紬は観察ノートを胸に抱え、渦の中心を見つめた。

胸の奥の「風花」という響きは安定している。

だが、渦の近くに立つと――その響きがわずかに震えた。


蓮は紬の隣で言った。

「紬……影の残滓、昨日よりも“音”を持ち始めてる。

名前の形だけじゃなくて、名前の“音”まで真似しようとしてる」


紬は息を飲んだ。

「名前の音……?」


ルクは震えながら言った。

「紬……渦の奥から“名前の声”みたいな響きがするよ……昨日より強いよ……」


■影の欠片が“名前の音”を奪い始める

ユイが風を揺らしながら渦を見つめた。

「紬……影の残滓が、誰かの名前の“音”を奪ってる。

名前を呼ぶ声そのものを真似してる」


真白は胸を押さえ、苦しそうに言った。

「名前の響きが……渦に吸われてる……誰かの名前の“声”が使われてる……」


ミナは渦の周囲を観察しながら言った。

「影の原型は消えたけど、残滓は名前の揺れに反応する。

揺れた名前の“音”を奪って、影の欠片を作ろうとしてる」


紬は胸の奥が強く揺れた。

「名前の音を奪う影……そんなの、止めないと」


蓮は静かに言った。

「紬……影の欠片は、名前の音を奪えば“呼ばれた名前”でも揺らせる。

昨日よりも危険だよ」


紬は頷いた。

「影の欠片を……止める」


■名前の音が消えた少女

そのとき――

渦の近くで、小さな声が聞こえた。


「……あれ……名前が……出ない……」


紬たちは振り向いた。


そこには、紬と同じくらいの年齢の少女が立っていた。

彼女は胸を押さえ、苦しそうに息をしている。


ユイは息を飲んだ。

「紬……この子、名前を呼べない……!」


真白は駆け寄り、少女の肩に触れた。

「大丈夫……? 名前の響きが……弱くなってる……」


ミナは周囲を見回しながら言った。

「影の残滓が、この子の名前の“音”を奪ったんだ。

名前を呼ぶ声そのものが揺れてる」


紬は胸の奥が強く揺れた。

「名前の音が奪われたら……呼ばれても響かない……」


蓮は静かに言った。

「紬……この子の名前を呼んであげて。

名前の音を取り戻すには、強い響きで呼ぶしかない」


紬は少女の目を見つめた。

「君の名前……教えて」


少女は震える声で言った。

「……りお……」


紬は頷いた。

「りお」


だが――

りおの胸の奥は光らなかった。


紬は息を飲んだ。

「名前の音が……響かない……」


■影の欠片が“りお”の名前を真似する

渦の中心から黒い影が立ち上がった。


その影は――

「りお」という名前の音を真似していた。


「……り……お……」


紬は震えた。

「名前の音を……真似してる……!」


ユイは風を揺らしながら言った。

「紬! 影が“りお”の名前の音を奪ってる!

だから紬の声が届かない!」


真白は涙を浮かべながら言った。

「紬ちゃん……りおちゃんの名前の響きが……影に閉じ込められてる……!」


ミナは影を見つめながら言った。

「名前の影が、名前の音を奪ってる。

名前の形よりも厄介だよ……!」


蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。

「紬……りおの名前を取り戻すには、影が奪った“名前の音”を壊さないと」


紬は胸の奥の響きを感じた。

「りおの名前を……取り戻す」


■紬が“名前の音”を呼ぶ

紬は深呼吸し、ステッキを握りしめた。


「りお――!」


影は揺れた。

だが、りおの胸の奥は光らない。


紬はさらに強く叫んだ。

「りお――!!」


その瞬間、影の中心が大きく揺れた。


ユイが風で影の音を乱し、真白が治癒の光でりおの輪郭を支え、ミナが影の根元を切り裂く。


蓮は紬の肩に手を置き、強く言った。

「紬、もう一度!」


紬は叫んだ。

「りお――!!!」


影は崩れ落ち、黒い霧となって消えた。


りおの胸の奥が光った。


「……名前……戻った……」


紬は微笑んだ。

「よかった……」


■影の残滓は進化し続ける

ユイは風を揺らしながら言った。

「紬……影の残滓は名前の音まで奪えるようになってる。

昨日よりも危険だよ」


真白は紬の手を握り、震える声で言った。

「紬ちゃん……街の名前の響きが、もっと不安定になってる……」


ミナは渦を見つめながら言った。

「影の欠片は、名前の形と音を真似できる。

影の原型がいなくても、影は進化してる」


蓮は紬の肩を抱き、静かに言った。

「紬……影の残滓を止める方法を見つけないと、街の名前が全部揺れる」


紬は胸の奥の響きを感じながら言った。

「影の残滓……全部集めて、止めなきゃ」


蓮は紬の手を握り返し、強く頷いた。

「紬、一緒にやろう。街の名前を守る」


紬は蓮の瞳を見つめ、静かに頷いた。

「うん。絶対に」

あとがき(紬の日記)

影の欠片は“名前の音”まで奪えるようになっていた。

りおの名前を呼んだ瞬間、胸の奥が強く光った。

影は進化している。

街の名前の響きが不安定になっている。

明日は影の残滓を封じる方法を探す。

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