火事の後の消火は大切
俺は屋上にいるであろう人物に会いに来た。
その人物とは……。
「あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない……あり得ない!」
「あり得ないなんてことは無い。今起きたんだ、何らあり得なくないだろう?」
「貴方は……裕也?」
「おっと、その名前で呼ぶってことはやっぱりお前も同類か………黒幕さん」
俺がそう言うと、黒幕は目を見開いて驚いていた。
「あ、貴方は……私と同じ……転生者なの?」
転生者と聞いて、普通の人間ならこの人ちょっと……やばい人だと、避けるであろう。
しかし、俺は避けない。
何たって俺も転生者だからだ。
「ああ、そうだよ……俺もお前と同じ転生者。同類だな」
「貴方が……貴方が裕樹に入れ知恵を……!」
そう言って黒幕は、俺を押し倒してくる。
背中に当たるコンクリートが痛かったが、この黒幕をどうにかすべきだ。
だから言った。
「俺がお前の事を転生者だって言った理由……わざわざ、ゲームのキャラを苗字で呼ぶ奴なんて居ねぇわな。偶にそう言う奴いるが、他の奴に感化されて名前で呼ぶしな」
「……それが私が転生者だってわかった根拠……だけど、私が黒幕だなんて誰が決めたの?冤罪よ」
「俺を押し倒してる時点で何言ってるか……一つは演劇場での火事の時……お前、少し時間経っても屋上から動こうとしなかったよな?そして二つ目………俺はファンクラブの諜報員……そいつを足止めして裕樹達の行動する場所を偽った。だから、教祖様が知ってる訳がない。じゃあ、誰が言ったのか?」
そう言うと、黒幕を自分の体からのけさせる裕也。
「重かった……」
そう呟く裕也、その後に咳き込んで仕切り直す。
「実はな……俺、裕樹のデート見張ってたんだ。すると驚くべき事が……」
そう言って、一枚の写真を出し黒幕の目の前に突き出す。
「王手だぜ……諦めろお前の負けだ」
その写真には黒幕が影で裕樹達を見る写真だった。
その目はじっとりと舐め回すような目つきをしていた。
裕也は見下すような目線を黒幕に送る。
しかし、その目線をやめて興味を無くした様に黒幕を見る。
「……別にお前をとって食おうって話じゃないんだ。ただ、俺はお前の行動を大体わかってる……そしてお前が次にやろって事もわかってる……俺はお前の邪魔をとことんする。裕樹の為なら、何だってしてやるよ」
そう言って、屋上から離れようとする裕也。
その背中に黒幕の声が届く。
「何で……何であんたは、そこまでの知識があって主人公の座を奪おうとしないの!?」
その言葉に、裕也は呆れさえ覚える。
そして言った。
「別に俺は主人公に成れるチャンスが無かったわけじゃねぇよ……ただな、あいつには勝てねぇなって思えただけだ。……主人公がどうとかじゃねぇんだ、ただ生きてりゃそれで儲けもんだろ……」
そう言って裕也は屋上から離れた。
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「にしても、主人公ねぇ………考えてはない訳じゃないが、他人に言われるとは思わなかったな。……最初は結構考えていたが最近は……だいぶと前に諦めてからそんなもん考えなかったな」
そう懐かしそうに呟く裕也。
裕也は転生者であり……裕樹の理解者である。
その理由と経緯を話そう……。
裕也にとっては、運命だとかゲームの中の重大設定だからだとかの意味ではない……ただ、親友を助けたいと言う役を本当に全うしたいだけだ。
それが裕也の理由……。




