第10話 「うん、よろしく!シンタくん」
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「あの辺りはさっき見たと言ってたから、軽く、ぼくなりに大事だと思うところを説明して、それから二階の説明書きを読んで回ろうと思うけど、どう?」
案内人はシンタが最初に回った壁の方を指しながら提案する。もちろんシンタに断る理由はない。
「はい、お願いします!」
「まず」と言いながら案内人が自身の頭上を指差す。そこにはゲームによくあるようなネームプレートに「拓(taku)」と書かれており、そのほかにアイコンや文字が表示されていた。
ふと周りに目を向けると彼、拓と一緒にいた二人の姿がない。拓が話し始めたので顔をそちらに向ける。
「ぼくの名前は『拓』、ここに表示されている通りだね、今は白い色だと思うけど。ちなみにフレンドになると名前が黄色くなる」
多人数でプレイするタイプのゲームに慣れていないシンタにもフレンドの意味はなんとなくわかった。フレンドになると、きっとゲーム内で通話やメッセージのやりとりができるようになるのだろう。
案内人、拓が続けて説明してくれる。
「それからユーザーランクは『Trusted』、ある程度長くやってるという程度の意味」
シンタは「トラステッド」とつぶやく、言葉の意味はわからないが拓のランクだと記憶に留める。
「そして『案内します』と書かれているところがグループ、ま、そういうサークルに所属してますっていう意味。ネームプレートからはこういう情報が得られるよ」
シンタは改めて拓に挨拶した。
「はい、拓さん!えっと、どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく!シンタくん」
「あの、早速伺ってもいいですか?」シンタは拓に尋ねる。
「拓さんの名前は、漢字の『拓』とローマ字の『taku』と両方書かれてますけど、それは何かルールですか?」
シンタはユーザー名を決めるときに単にカタカナで「シンタ」と入力してしまったので気になったのだ。
拓はなんでもないという風に顔の前で手を振りながら答えてくれた。
「ああ、これは、ぶいちゃ内だと色んな言葉を使う人がいるからね。ぼくも英語圏のフレンドが何人かいるんだけど、漢字の『拓』だと初対面で絶対『なんて読むんだ?』って聞かれるから先回りして読みをローマ字で書いてるだけだよ」
なるほどそういうことか。それにしても英語を話す友だちがいるなんて、すごい人と知り合ってしまったのではないだろうか……。
シンタがそんなことを考えていると拓が続ける。
「名前は三ヶ月経つと変えれるから、その時にローマ字を添えてもいいかもね」
シンタには三ヶ月で英語を話す友人ができるとは思えなかったが、せっかくの教えなので頭の隅にしまった。
「じゃあ次は」と言いながら拓が先導するので、シンタもそれに従って移動する。
拓は壁から壁へと移動しながら、フレンドになる方法、フレンドやワールドをお気に入りに入れる方法、それからフレンドを解除したり迷惑なユーザーをブロックする方法などをかいつまんで説明してくれた。
シンタも先ほど説明書き自体は読んだので概ね理解はできた……できたと思う。
「どこの世界にも迷惑な人や合わない人はいるから自衛は大事だよ」と拓が言う。そうか人と話せるということはそういうことでもあるのだ。
「次はこっち」と拓の黄色いネームプレートを見ながらシンタはついて歩く。先ほどフレンドの説明を受けた時「あとで解除してもいいから、フレンドリクエスト送ってみて」と操作の練習を兼ねて拓とフレンドになったのだ。
「次にちょっとややこしいんだけど『インスタンス』について説明するね」拓が前置きをして続ける。
「今ぼくたちがいるのは確かにチュートリアル『ワールド』なんだけど、正確にはチュートリアルワールドの一つの『インスタンス』なんだ。インスタンスは『実体』とかそういう意味だけど」
急に話が難しくなってきた。シンタが困惑している様子を察したのか拓が例を出す。
「そうだなー。プラモデルの型がワールドで、型を使って成形されたプラモデル一つ一つがインスタンスというか……」
わかるようなわからないような……。
「ほら、プラモデルの型は工場にあってぼくらは触れないけど、実体化したプラモデル自体は買って色を塗ったりできるでしょう?」
シンタは拓が真面目な様子の説明を聞きながら、そのシーンを頭の中で思い浮かべてみる。
「同じプラモデルをぼくとシンタくんがそれぞれ買って、ぼくは赤く、シンタくんは青く塗ることもできる」
それは確かにそうだ。
「そんな感じで「ワールド」を「インスタンス」として実体化させるとぼくらが入れるようになるって感じ」
わかった気もしてきたが……わかっていないかも。
「ま、難しい話はさておき、ワールドのインスタンスを作るときに選択肢があってね、誰を入れるか選べるんだ」拓が話を進める。
「ここはチュートリアルワールドの『パブリック』インスタンス、だから誰でも入れる。ぼくとシンタくんはさっきまでフレンドじゃなかったけど、どちらも入ってこれたでしょ?」
そう、確かにさっきフレンドの説明をしてもらうまではシンタは拓とフレンドではなかった。
「はい」ようやくシンタは返事ができた。
「でも、この同じワールドのインスタンスを『フレンド』とか『インバイト』とかで作ると、入れる人をそれぞれ『作った人のフレンドのみ』や『招待した人のみ』に限定できるんだ」拓は続ける。
「な、なるほど」シンタは混乱している。
「ちょっとややこしいんだけど、先々結構使うから『そんなのあったなー』くらいで覚えておいて。困ったらここの壁を読みにくればいいから」
そう言って拓は目の前の壁を指す。
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