定期テストのいいところは早く帰れるとこだよね 2
「なんでちりちゃんそんなに頭いいの?勉強のコツとか教えてよ!」
「えー…コツとかないよ。」
「そうよ、すずは授業中寝てるから悪いのよ。ちゃーんと授業受けてれば赤点くらい回避できるはずよ。ね、花澤先輩?」
「そ、そうだね…」
らんは同意を求める笑顔を私に向けた。
やば…私授業ほとんど寝てるわ。
でもそんなこと言うわけにはいかない。
私は笑顔を作り、らんに同意した。
まぁ授業は起きてるに越したことはないしね…うん…
「じゃあちりちゃん勉強教えてよ!」
「面倒くさい。」
「ケチ!」
「いやケチじゃないし、私だって勉強しなきゃいけないし。」
「してないじゃん。」
「ここじゃ集中できないの!」
それに勉強してないのはお互い様だからね!
私はまたポテトを口に運んだ。
あ、やば…あと3本だ。
Lサイズなのにあっという間になくなっちゃったよ。
「あ、じゃあ茉鈴に教えてもらいなよ。紹介してあげるよ。」
確かあの子も成績良かったはず。
「あー、最近らんが媚び売ってる生徒会長?」
「売ってないから。生徒会の仕事をさせてもらってるだけだから。」
「私はちりちゃんに教えて欲しいのー!」
別にすずの学力なら誰が教えても同じだろ。
さっきからチラチラ見える問題集、すずの書いた答えは全部間違っている。
それにそのページ、超基礎問題だし。
「お好み焼き食べたでしょ!?教えてよ!」
う、それを言われると弱い…
その上寿司も奢ってもらったもんなぁ…
「さてそろそろ帰りましょう。」
少し悩んでいると、らんが勉強道具を片付け出した。
おお、助かった。ナイスだ、らん。
「えぇーもっとちりちゃんと遊びたい!」
「遊びじゃねぇだろ、勉強するんだろ。」
「そうよ、それに花澤先輩ここから家遠いのよ?遅くなったら危ないわ。もしちりちゃんが不審者に襲われたらどうすんのよっ!」
らんはすずに力強く訴えかけた。
いや…こいつら何言ってんだよ。
すずもすずだ、そんなハッとした顔をするな。
それに私は不審者よりあんたらの方が怖いわ。
「そうだね…私心配だから家まで送ってくよ!」
「ありがとう、気持ちだけ受け取っておきます。」
「すずは早く帰って勉強するべきよ!私が送るから大丈夫よ!」
「どっちもいらないです。」
はぁ…さっさと帰りたい。
駅まではついてくると言って聞かないので二人のしょーもない話を聞きながら駅まで三人で歩いた。
「はい、着きました。どうもありがとうございます。」
「やっぱり送る!」
「いいです!まっすぐ帰ってください、お母さんが心配しています。」
「じゃあ勉強教えてよ!それでお好み焼きはチャラ!」
「…放課後30分だけならいいよ。」
「本当!?やったぁ!!」
本当はものすごく嫌だが、ただお好み焼きを食った分はしっかり返さなくては。
「じゃあ明日私のクラス来て。」
「うんっ!じゃあまた明日ね!」
「さようなら、気を付けてくださいね。」
「はい。さよならー。」
やっと解放された。
私は満面の笑みで大きく手を振る二人に背を向け、改札を抜けた。
ここから家までは約一時間、それなりに長い帰り道。
…流石に少しくらいは勉強しておこう。
ゆらゆら揺れる車内で単語帳を開き、私は集中した。
流れる車内アナウンスが遠く感じる。
うん、いい感じに集中できている。
たまにはこういう場所で勉強するのもいいかもしれない。




