定期テストのいいところは早く帰れるとこだよね 3
「ちり、どうしたの?」
「シラナイ…ワタシハシラナイデス…」
「何でカタコト?てか話聞いてる?」
「ちりちゃーん!ここ教えて!」
「何でもちりちゃんに聞かない!自力で解けるとこは解きなさい!」
意味わからない、本当に意味がわからない。
目の前にはすでに勉強に飽きているすず、斜め前には真剣に取り組むらんという見覚えのある光景。
そして隣にはネームをバリバリ書いている千紗。
何故こうなった。
遡ること30分前、約束通りすずの到着を教室で待っていた。
だが何故かそこに現れたのはすずらんだった。
「は?何で2人いんの?」
「私もお手伝いします!花澤先輩のお手を煩わせる訳にはいきませんので!」
「いや帰って。邪魔でしかない。」
「ほら!邪魔だって言われてるよ!帰りなよ、らん!」
「いやあんたも邪魔だから。出来ることなら早急に終わらせて帰って欲しい。」
と、いつも通りのやりとりをしていたところに千紗が現れた。
「貴方達何してるの?」
「…害虫駆除?」
「ちょっと!害虫ってらんのことだよね!?」
「バカ言わないでよ!すずに決まってるでしょ!」
あー、帰りたい。こんなにも心の底から帰りたいと思ったのは生まれて初めてです。
せめてもの救いは教室にはもう誰もいないと言うことだ。
もしこんなところクラスメイトに見られたら恥ずかしくて死ぬしかない。
「勉強会?それなら部室使う?」
かくかくしかじかと説明すると、千紗は眼鏡を光らせながらそう言った。
部室か…あそこ静かでいいもんなぁ…
「部室って漫研の部室ですか?私たちが使ってもよろしいんですか?」
「別にいいわよ、部員は私と茉鈴だけだし。」
あ、そっか…茉鈴もいるのか…
あれ以来茉鈴とは会ってもいないし、話もしていない。
この間とは違う気まずさがある今、出来るだけ会いたくない…
「あ、でも今日茉鈴は生徒会の仕事って言ってたっけ。だったら机三つ空きあるし、三人とも来ていいわよ。」
で、今に至るのです…
「ちりちゃんここ教えて。」
「はいはい、そこはここの公式使うのよ。」
「ほおほお…なる程!」
「わ、私もっ…!教えて下さい!」
いつの間にか私の隣に回ってきたらんが机のうえに問題集を広げ、目を輝かせてきた。
手伝うんじゃなかったのかよ…
そう言い返したかったが、こいつ真剣に勉強してたもんなぁ…
仕方ない、教えてやるか。
「どこがわかんないの?」
「こ、ここです!問3と問4!」
らんが指差した問題はすべて応用中の応用。
はぁ…なんで同じ屋根の下で暮らしてんのに双子でこんなにも差がつくのかねぇ…
流石の私でもこの問題は即教えられない。
「ちょっと見せて、考えるから。」
「ありがとうございます。」
つくづく思う、双子って不思議。
私にも双子がいたら…ダメダメの妹か姉なのかな?
『おいちり、お前また学年トップだったんだろ?本当に俺の妹なのか?』
『お兄ちゃんの出来が悪すぎるだけだよ。』
『言うなぁ。お前が女子校に行ってよかったわぁ。同じ学校だったらにーちゃん面子丸潰れ。』
『言うねぇ、にーちゃん。』
『お前ほどじゃねぇよ。』
お兄ちゃん…
頭悪くて、いつもテキトーで、楽観的で、お人好しで、とても自慢のお兄ちゃんとは言えなかった。
でも、彼だけは私の唯一の家族だった。
今頃どこで何をしているのだろう。




