釣り猫
何が釣れるかな?
6月の7日、猫と太公望。
陽光の港には釣り人がたくさんいるように、それを狙って甘い声ですり寄る野良猫達もたくさんいる。
眼を光らせるその姿はまさに小さな虎、虎視眈々と言う他に無いのでは。
空にはウミネコ、地にはネコ。
嗚呼、この世はネコだらけ。
「きっ、ね……ネコサンがたくさんいるよ。1……2、た、たくさん。」
人の気配を察知するとどこからともなくやってくる。
仲間を連れてやってくる。
菊花は別に猫が嫌いなわけじゃない。
じゃなければ家で三毛猫なんて飼ってはいないだろうが……。
現に膝元に飛び乗ってきた猫を撫でながら釣れるのを待つ。
「猫ってよく生魚貰ってるけどアニサキス症とかってっしょうするのかしらね?」
遠くで釣れたであろう釣り人から魚を貰っては美味しそうに食べる猫。
隣で見ていた結愛は不思議そうに見つめるも、頭には当然猫が乗っかって座っている。
上を見てはそう答える。
釣り人であろうがなかろうが人間なら誰でもいい、猫は無差別に。
「アニサキスさんはとても怖いって聞くよ。菊花はなったことないからわかんないけど胃を食い破られるんだとか。」
人間はアニサキスに感染した魚を食べるとアニサキス症になりとんでもない腹痛に見舞われ、それはそれはもうのたうち回る。
「聞いたことがあるんだよ、猫も発症するらしいから本当はむやみやたらにお魚さんはあげたくないんだよ……。でも猫は可愛くアピールしてくるからついついあげてしまいたくなる気持ちはわからなくもないけど。」
「猫も大変ねぇ。なんか胃酸とか強そうだしそういうのは無縁かと思ってたわ。」
そもそも今日は釣れる魚が少ないからあげられない。
菊花の釣果はまだ何も。
猫もしびれを切らしたのか他の釣り人から魚を貰ったほうが早いと思ったのか膝下から飛び降りては一声鳴いて去ってゆく。
それにつられて結愛の頭の猫もどこかへと。
「今日は午前中には切り上げるよ。釣れないと楽しくないしこのまま休日を潰すのもどうかと思うし。」
「それが良いわね。私も菊花もあまりジッとしていられるタイプじゃないからね……。何もアクションが無いとつまんないっていうか、唯一の癒やしの猫もどっか行っちゃったし。」
よく晴れたいつも通りの陽光でも釣れない日はある。
天や運も猫の気まぐれも誰にもわからないからこそ釣り人は待ち続ける、魚が食いつく瞬間を……己の感を賭けて全身全霊を。
そして無理と判断したら速やかなる撤退を。
釣れなくても判断できた菊花の勝ちである。
何も釣れませんでしたアァっ!!




