ニィー前世での物語ー
前話までと、書き方が少し違います。
1匹の猫が、命の終わりを迎えようとしていました。猫には、猫だけがその存在を知る、守り神がいました。普段はそっと猫達を見守っているだけの神様でしたが…。
猫の守り神は、命を終える猫達が現世に未練を残さぬよう、まっさらな気持ちで次の生を受けることができるよう、命の終わりにひとつだけ、願い事を叶えることにしていました。
守り神は、今まさに命の終わりを迎えた猫にも、なにか叶えたい事はないかと問いかけました。あまりに無理な願いであれば叶わないこともあるが、自分の裁量で叶えることが出来る願いであれば、ひとつだけ願いを叶えようと。
守り神はこれまでも、猫達の様々な願い事を叶えてきました。来世もまた猫に生まれたいという猫がほとんどでしたが、来世は鳥として生きたいと願う猫もいました。他にも、優しい人に出会いたいという願いや、魚が食べ放題の環境に生まれたいという願い…などもありました。そして、たいていの願い事は、守り神によって叶えられてきたのです。
先ほど守り神に問いかけられた猫にも、どうしても叶えたい願い事がありました。猫は守り神に願いました。間も無く命を終えることになるであろう少女と、叶うことなら生まれ変わっても同じ時を生きたいと。
守り神はその願い事を叶えるべきかどうか、判断に迷いました。その願いは、まっさらな気持ちで次の生を受けることには反していたからです。守り神は猫に、そう願う理由を聞くことにしました。
猫はその少女の飼い猫ではありませんでした。少女がまだ笑顔を見せていた頃、少女とひと時を共に過ごしたことがあるだけなのです。それでも、猫はその少女に惹かれました。
猫はその少女を見守ることにしました。笑顔が素敵な少女は、いつしか笑顔を見せることがなくなりました。1人で過ごす時間が多くなり、言葉も少なくなりました。
それでも、猫は少女を見守り続けました。少女が成長し、人間の成人を迎えようという頃、少女に変化が見られました。何かが吹っ切れたかのように。時折、笑顔も見せるようになりました。
彼女が笑っていると、猫も幸せな気持ちになりました。猫は自分が老いていることを理解していました。もう、そう長い時間は生きられない。しかし、時間が許す限り、彼女を見守ろうと心に決めたのです。
ある日、そんな猫のことを彼女が気付きました。今までの彼女であれば、気付かなかったでしょう。外部との関わりを絶っているような所がありましたから。しかし、笑顔を取り戻した彼女は猫に気が付き、良い聞き役と思ってくれたのか、自分のことを語り始めました。
「私はね、もうちょっとしたら死んじゃうんだって。自分でも信じられないけど、神様が夢の中に出てきてそう言ったの。死んじゃうって…怖いよね。でもね、すぐに生まれ変われるとも言ってくれたのよ?生まれ変わったら、もう感情を押し殺さなくても大丈夫なんだって!だから、私は生まれ変わるのが楽しみなんだ。死んじゃうのがまったく怖くないって言ったらウソになっちゃうけど…ね」
「ニャア…」
彼女は話し終えて満足したのか、猫に向けて笑顔で手を振って、歩き去って行きました。でも、猫はその場を動けませんでした。それから猫は願うようになったのです。自分の命ももう少しで尽きるだろう。もし叶うならば、生まれ変わっても彼女と同じ時を生きたいとー・・・
守り神は猫の話を聞き終え、猫の願いを叶えることを決めました。生まれ変わる彼女の傍に、来世も猫として生まれ変わるのです。ただし、今世の記憶は残せないと守り神は告げました。傍に生まれた猫が、彼女に再び惹かれ、傍にありたいと願うかは来世の猫次第だと。
猫は頷きました。猫には確信がありましたから。自分は記憶を忘れて生まれ変わっても、必ず彼女の生まれ変わりに再び惹かれ、傍で見守る道を選ぶだろうという確信がー・・・
おまけ話が当初の予定より、だいぶ多くなってしまいましたが、これにておしまいです。(多分…もう思いつかないでしょう)
アンの物語をここまで読んでいただき、ありがとうございました。




