不思議な出会いー占い師、そして…ー
街を歩いていると、時たま占い師さんを見かける。この世界でも占いは、特に女の子に人気がある。私はそんなには興味がないのだけど、今日は歩いていて、なぜか1人の占い師さんに惹きつけられた。
占い師さんと目が合った。手招きをされる。他にお客さんは居ない。私は引き寄せられるように、占い師さんの元へ向かった。
お婆さんの占い師さんだ。占い師さんの前には大きな水晶と、小ぶりな水晶が並んでいる。
「いらっしゃい。そこにお座りなさい」
「こんにちは」
「さぁて、何を占おうかねぇ」
「えっと…何を占ってもらうか、決まってないんですけど…」
「それじゃあ、この大きな水晶に手をかざしてごらん。総合的に占ってみようじゃないか」
そう言われ、大きな水晶に手をかざす。特に水晶には変化は起きなかったけど、お婆さんが手をかざすと、水晶の中に光の渦のようなものが見えた。
「強い運命を持っているようだねぇ。後世に名を残す偉業を成し遂げるだろうねぇ。強い運命を持つものは、良い仲間を惹きつけるからねぇ。それに、全属性の神の寵愛持ちとは…。光・火・水・地・風…………それに、闇もねぇ」
「え?闇…ですか?光・火・水・地・風は聞いてますけど、闇は属性測定の時には何も言われませんでしたけど…」
「それは、そうだろうねぇ。この国では闇の寵愛や加護持ちが生まれるとははなから思っちゃいないのさ。だから測定の水晶も、闇属性の守護を判定できるようには作っていないのさ」
「そんなことが…?!」
「闇の神の寵愛は嫌かね?」
「いえ…。元から光と闇が相容れないというのは、なにか腑に落ちないと思っていたので」
「ほぉ、珍しい考え方をする。こんな考えの者もこの国にいたんだねぇ」
「闇属性の守護がないのに、全属性持ちと言われるのも何か違う感じがしていたんです。でも、本当に私には闇属性の守護が?この国の属性測定ではわからないのに、占い師さんはわかるんですか?」
「この水晶では、私にしか見えないからねぇ。この隣の水晶は闇属性も含めた測定ができるから、後で測定してみるといいよ。で?私にわかる訳だったかねぇ。さぁて、何から話そうかねぇ…」
そう言うと、占い師のお婆さんは語り始めたのだった。
自分はこの国の生まれで、闇の精霊の寵愛を授かっているのだと。闇属性の守護は測れないので、測定時には守護を持たないとされたのだと。
この世界に生まれて何の守護を持たないというのは、特異だ。まったく居ないというわけではなかったが、『守護を持たない=魔法を使えない』と認定され、魔法を学ぶ機会は与えられなかった。生活魔法さえも。魔法をまったく使わないで生活するのは難しいというのに。
故郷の村では邪険にこそされなかったが、親しい友達もできなかったということ。そして両親の死をきっかけに村を出て、各地を旅して回るうち、今の自分のような占い師に出会い、自分の属性を知ったのだということ。
知った時は、戸惑いの方が大きかったそうだ。今まで守護を持たないとされていたのに、そうではなかった。しかし、守護は授かっていたが、その守護はこの国が無いものと弾き出していた闇属性であったということ。どう受け止めればいいかわからなかった、占い師の言うことを信じていいのかさえも。
すると、その占い師は自らも闇属性の守護を授かっていることを明かし、闇魔法を披露した。そして自分と同じように闇属性の守護を持ち、苦労している者を1人でも手助けしたいと、国中を旅して回っていることも打ち明けたのだそうだ。
そして、その占い師から魔法を学び、占いも学んだのだと。自分もまたその占い師のように国を回り、1人でもいいから闇属性を授かって苦労している人がいたら、手助けをしようと思ったのだと。
お婆さんの話を聞き終えても、しばらくは何も言えなかった。お婆さんは、『何も言わなくてもいいんだよ』と笑ってくれた。私の返した笑顔は、うまく笑えていたかな?
そして、お婆さんに促され小ぶりな水晶に手をかざしてみる。すると、属性の測定の時のように、光が溢れ出す。赤、青、茶、緑、黄…そして、漆黒の光が。
私は闇の神の寵愛も得ていて、本当の意味で全属性の神の寵愛持ちだったのだ。
お婆さんにお礼を言って別れた。『また会えますか?』と聞いたけれど、『同じ街には長くは留まらないからどうだろうねぇ』とはぐらかされた。もしも会えるものなら、また会いたいと思うのだった。
その夜、夢を見た。そこには6人の神様が立っていて。光神、火神、水神、地神、風神に加え、闇の神も揃っていたのだった。闇の神が語りかけてくる。
ようやく姿を表すことができた喜びを、力を貸すことができる喜びを。今までは本人の自覚がないから混乱させてはいけないと、【聖光】を発現させる時も控えさせていたのだと。これからも、闇属性の魔法を使うことは難しいかもしれないが、使う機会があれば使って欲しいと。
夢は短いものだった。けれど、はっきりと覚えている。確かにこの国で闇属性の魔法を使うことは、今は難しいだろう。教えてくれる先生もいない。でも、占い師のお婆さんから、簡単な闇属性の魔法のことは聞いた。呪文も。
いつか、この国で普通に闇属性の魔法を使える日が来て欲しい。闇属性の守護を持つからと、苦労を背負うことのない日が。私1人が訴える力は小さいかもしれない。けれど、やはり光と闇が相容れないというのは、間違っていた。現に、私は両方の守護を合わせ持っているのだから。少しでも、今の間違った認識を変えることができるよう、小さな一歩を踏み出してみよう、そう思うのだった。
【後世に名を残す偉業を成し遂げる】
お婆さんの占いが当たるのなら、その後世に伝えられる偉業はこうであって欲しい。
【闇属性の魔法も普通に使える日を導いた】
そう切に願うのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうござます。これにて、中等科篇終了です。次話からは高等科篇です。高等科篇は数話の予定ですので、もう少しお付き合いいただけたら嬉しいです。




