アルバイトー後輩指導ー
アルバイトをすることにした。といっても、内容は初等科の後輩達の授業を補助するというもの。募集していることは掲示板で見て知っていたけど、応募はしていなかった。『こんなアルバイトがあるんだぁ』と思ってたくらい。
じゃあ、なんでアルバイトをすることにしたのかというと、文化祭がキッカケ。文化祭で初等科の後輩達とも接点が増えた。実行委員長として、学園中を行き来してたから、すっかり顔も覚えられてしまった。そんな後輩の生徒達から言われたのだ。指導役に応募して欲しい、と。応募したからといって、そう言ってきた後輩達のクラスを担当するとは限らないけど、少し気になってたのもあるし、頼られた嬉しさもあった。それで、応募することにしたのだ。
内容はというと、特に魔法の授業での補助になる。ある程度の習得度別に、クラスの中でも何グループかにわけて先生が指導しているとはいえ、そのグループの中でも習得度の差はどうしても出てくる。先生の人数は限られているから、全員に個別指導することは難しい。
そこで、中等科の生徒が補助役となるのだ。基本の内容はもちろん先生が教える。教わったことを、完全に習得できるまで練習を続けるのだけど、その練習に付き合ってうまくいかない時は、コツを教えたりするのだ。
私は魔法の授業は個別授業だから、実際に先輩方に教えてもらったことはない。うまく補助できるかどうかはわからないけど、やるだけやってみよう!
ちなみにアルバイト代はお金じゃなくて、食堂の食券。一度の補助で、食券が1枚貰えるそうだ。食券に有効期限はないし、何枚か貯めて使うこともできる。といっても、アルバイトはそんなにたくさんできるわけじゃないけど。自分の魔法の授業の習得ペースが順調な時に、その空いた時間を利用してるのだ。いくら習得が進んでいても復習だって必要だし、空き時間のすべてをアルバイトには当てれらないのだ。
アルバイトに応募した生徒は何人かいて、最初に集まって説明を聞いた。注意点については特にしっかりと。1人だけに付きっきりにならないとか、過度な補助はしないとか、そんな内容だ。ちなみにアルバイトにはジェシカちゃんも応募していた。友達がいると心強いね。
そして、説明を聞き終わった後で、受け持つクラスが発表になる。私もジェシカちゃんも3年生の担当だ。クラスは違うけどね。
さて、日を改めてアルバイト初日だ。クラス別だけど、魔術練習場は広い。何クラスかがまとめて授業をしても大丈夫なほどに。私はいくつかのクラスの中から、自分の担当するクラスの集団を見つけ、そこに向かったのだった。
属性別に分かれたグループの、水属性を持つ生徒達の補助に付くことになった。今日習うのは、水属性の矢を創り出す攻撃魔法だ。矢のイメージを明確に持たないと、水球のように安定感がないから、ちょっと難しい。矢を創り出すことに成功すれば、的に当てるのは弓を射るわけではないから、水球を当てるのとそんなに変わらなかった記憶がある。
まずは先生の見本だ。このクラスの担任はキャシー先生だ。なんか懐かしい!先生は手をかざし魔力を込めると、呪文を唱える。
【水よ矢と形を成し、的を射抜け】
先生の前に水の矢が創り出される。先生は的に向かって、その矢を放った。見事、真ん中に命中だ。
先生の見本の後は、各自が練習を始める。最初は私は様子見。うまくいかない子を見つけたり、呼ばれたら補助に行く感じだ。
しばらく様子を見ていると、1人の生徒から声がかかった。うまく矢が創り出せないそうだ。実際に目の前で試してもらうが、確かに矢に形成される前に、消滅してしまっている。まずは矢のイメージ作りからかな。
「イメージが大切だからね。まずは地面に矢を描いて見てくれるかな?」
「わかりました!」
そう言って描いた矢は、矢に見えなくはないけど少し歪な感じだった。その描かれた矢を『ここはもうちょっとこんな感じで…』と説明しながら修正していく。そして、その完成した矢のイラストをしっかり頭に焼き付けるように伝える。
そして、また魔法を試してもらう。呪文を唱えると、今度はしっかりと矢が創り出される。
「できました!ちゃんと矢ができました!」
少し興奮した様子で伝えてくれる。良かったね!でも…。
創り出すことができた嬉しさで集中力が途切れ、せっかくの矢が消滅してしまうのだった。
「あ…」
「ちゃんと矢は創り出せてたから大丈夫。今度は的に放つまで、集中力を保ってね」
そう言って、もう一度試してもらう。次はきちんと的に放つところまで矢を維持し、ど真ん中とはいえないが、的にもちゃんと当たっていた。成功だ。
「成功だね。おめでとう。もうちょっと練習をして、先生に確認してもらいに行ってね」
そう言うと、次に手を上げた生徒のもとに向かったのだった。それから何人かの補助をし終えた頃、魔法の授業が終わりを迎えた。初回のアルバイトは無事に完了だ。今日のアルバイトで貰えた食券が1枚だ。
(食券1枚で5銅貨相当でしょ。お目当ての1日限定10食の豪華ランチは15銅貨だから…あと2回だ!お小遣いで無駄遣いはできないけど、食券を貯めて食べる分には大丈夫だよね!)
アンのアルバイトのモチベーションは、“食欲”なのだった。




