防御魔法ー壁は壁でも全然違うー
今週はキャシー先生に代わってリック先生の授業だ。地属性の防御魔法っていったらやっぱり土壁?そんなことを考えながら、魔法練習場へと向かう。
「リック先生、よろしくお願いします!」
「…よろしく。早速始めるから見てて。要領は水の防御魔法と変わらないはずだから」
(リック先生は…寡黙?必要最低限のことしか喋らないタイプの先生なのかな?)
そんなことを思いながら、キャシー先生の授業の時と同じように、地の【聖光】を呼び出して、リック先生が魔法を使う所を見つめる。
リック先生は両手を前に出し魔力を込めていく。そして、【土よ固まれ、強固な塊となって我が身を守れ】と呪文を唱えると…土壁というよりは岩の壁が、どーんとリック先生の前方に現れた。
大きさは水壁と同じくらいで、高さが2mほどで幅が4mほど。白っぽい一つの大きな岩の壁だ。壁の先は全く見えない。厚さはどれくらいだろうと見に行くと1m弱といったところだろうか。多少、人が集まって押したくらいでは全く動きそうにない。
壁の様子をしっかりチェックしてから、リック先生のところへ向かう。
「じゃ、あのサイズの壁を出してみて。失敗しても、防ぐから」
「はい、やってみます!」
言葉は少ないけれど、守ってみせるという気持ちは伝わってくる。その言葉通り何があっても守ってくれるだろうと信じることもできる。スミス先生やキャシー先生、ジョッシュ先生みたいな笑顔はないし、言葉も少ないけれど、信用できる先生だと感じるのだった。
水壁を創り出した時のように、まずは壁のサイズをよく思い浮かべ【聖光】にイメージを伝える。そして、呪文を唱える。
【土よ固まれ、強固な塊となって我が身を守れ】
すると、かなり前方に岩の壁が創り出された。距離が離れてるから、はっきりわからないけど、サイズ感はちょうどいい感じだ。もしかして、初めて1回目で成功?そんなことを思いながら、リック先生を振り返る。
「壁の近くまで行って、確認しておいで」
そう言われて、創り出した壁までパタパタと走っていく。なんであんな前の方に…と思いながら近づいていくと、ちょっと違和感を感じる。そして、更に近づいて違和感の原因が判明した。
高さは2mほど→成功!
幅は4mほど→成功!
厚さは10mほど…?!→失敗…。
(厚さが10mって!もう、壁じゃなくて岩そのものだしっ!)
地の【聖光】は厚さを出してみるという、なんとも微妙なところで、張り切ってしまったのであった。
それから、地の防御魔法を1週間かけて習得し、続いて風の防御魔法→火の防御魔法→光の防御魔法の順で習っていった。残りの3属性も概ね1週間ずつかけて学び、無事に習得したのだった。風・火・光の壁はそれぞれこんな感じだった。
風壁は遠くからだと、全然壁には見えなかった。近づくと、壁を創り出した範囲で風が吹き荒れているのがわかったけどね。呪文は【風よ纏まり壁となれ】
火壁は迫力が凄かった!いくら魔法を創り出した術者を焼くことはないとはいえ、あまり近づいてみる気にはなれなかった。最初に出した火壁は、またまた大き過ぎてしまったから尚更…。呪文は【火よ壁となり我が身を守れ】
光壁はキラキラ光って綺麗だ。でも、見かけによらず防御力は初級魔法で創り出す壁の中では1番強いそうだ。見た目の迫力なら火壁だと思うけど。光壁の呪文は【光よ降り注ぎ壁となれ】
土壁や風壁は主に物理攻撃をよく防ぎ、火壁や水壁は魔法攻撃をよく防ぐそうだ。火の壁では水属性の攻撃は防げないのかと思ったけれど、それは魔法の威力次第だそう。威力が違えば、焼け石に水みたいなもの。火壁を創り出した術者よりも、水属性の攻撃魔法をしかけてきた術者の方が弱ければ、あっけなく水は消失してしまうらしい。
光壁は物理攻撃も魔法による攻撃もよく防ぐ万能な防御魔法だ。ただ、他の属性魔法よりも、同サイズの壁を創り出すのに必要な魔力量がかなり大きい。万能な防御魔法にはそれなりの負担が必要なようだった。
ちなみに、呪文はその魔法を最初に生み出した術師が唱えたものを、そのまま使っているらしい。だから、同じ初級の防御魔法でも結構違う。
上級魔法になるほど長くなる傾向にあるらしいが、完全に習得し使い込んでいくと、呪文の短縮もできるらしい。
もし、今後私が新しい魔法を生み出すことができたとしたら、その時の呪文が後世に残ることになる。生み出せることはないとは思うけど、もしも新たな魔法を生み出すなんて日がきたら、呪文はよく考えて決めようと思う。ネーミングセンスを後世にまで疑われたくないもの。
さて来週からは、攻撃魔法の授業が始まる。【聖光】の張り切り具合もだんだん落ち着いてきた!と思いたい…。また来週から頑張ろう!




