太刀の女王
2/11 少し、付け足しとちょこっと修正しました。楽しんでくれたら嬉しいです。
茜が太刀をとった。
その行動だけで明里は警戒を強めた。
それは、当然な行動であり当然の判断であった。
魔法院の生徒達の最強と畏れられ、憧れの的である癒世 茜の魔法武具が出現した。
茜の二つ名〝太刀の女王〟の由縁となったその太刀を。
それをとる、ということは彼女が本気でいくという合図でもあるからだ。
魔法武具。
それは魔法師が使用する武器の総称である。種類や形状は様々で剣であったり銃であったりと沢山存在する。今では基本形態が存在し量産もされている。しかし、武具はその人にあった形状に変化する。
茜でいう太刀がそれに確答する。
「さあ、いくぞ。明里」
静かな口調だがどこか威厳がある。
茜が地を蹴った。
たった一回の踏み込みだけで茜は明里の懐に入り込んでいた。
明里は咄嗟に右手に水を集束させて創ったランスで茜の太刀を受け止めた。
ガギィ!バシャッ!
水と鉄の刃がぶつかり、水のランスは霧散した。
しかし、明里の顔は笑っていた。
次の瞬間。
茜の顔に水のランスであった水の塊が顔にかかった。
「ぶっ!?」
突然の反撃に茜の動きは鈍った。
その隙を突かない明里ではない。明里は床に左手をつけた。するといつのまに作ったのか水色の魔方陣が展開されていた。
明里は叫んだ。
「噴水激!」
魔方陣から巨大な水柱が噴水の如く茜を襲う。
茜はまともにくらった。
今度は茜が吹き飛ぶ番になった。
しかし、間一髪、茜は持っていた太刀で噴水激に当て軌道をほんの少しだけずらし回避していた。
しかし、まともにくらったのは事実で多少のダメージがあったのか息切れをしていた。
「やるわね。今のは、効いたわ」
「とてもそうは、見えないけど」
明里は、姉の言葉に苦笑する。
明里の見る限り姉の様子は息げれする程度でまだ顔の表情には余裕が見えている。戦況はむこうにある。
明里は空中に水を集め、水の刺を創った。
「はっ!」
掛け声とともに無数の刺が茜に飛来する。
しかし、これでやられる太刀の女王ではない。
茜は、一気に床を蹴った。
その瞬間茜が消えた。
「!」
明里は、驚きの表情を浮かべた。
道場内の至る所に刺を飛ばした。
しかし、それが茜に当たる事はなかった。
刺を使い果たした瞬間。
茜は出現した。
そして、すかさず反撃に出る。
茜の動きはさっきよりも速度が速くなっていた。
移動(速度)強化。
一般的な身体強化魔法だ。通常の移動速度を倍にする魔法である。そして、こういった強化魔法は使う人の魔力の量によって左右される。
茜の魔力は魔法院でも最高位のランクS。
茜の動きは尋常ではないものになっていた。
茜は、これを使用して明里の刺を全て回避していたのだ。
速度の上がった茜の剣撃は凄まじいものになっていた。
上段、下段、横凪ぎ。
様々な所からくる攻撃にさすがの明里もだんだんと追い詰められていく。
しかし、明里も水で生成したランスで姉の太刀を受けたり受け流したりとかなりの立ち回りをしていた。
「っ、くっ!」
「ハァッ!」
戦況は、茜に有利になっていった。
それから間もなく。
試合終了の号令を光は出した。
勝者は太刀を持った女王であった。