祖父の呼び出し
「くやしーーーーっ!!」
道場内に明里の声が響く。
そんな様子に光と茜は苦笑した。
「まあ、仕方ないよ。姉さんが太刀を出したら、勝つのはちょっと難しいよ」
「だけど、明里、なんで、お前の魔法武具を出さなかった?あれを出せば、私とあの後ももう少しやれただろう?」
「だって、あれは意外と扱いが難しいんだもん」
不貞腐れたように呟く明里。
明里自身も魔法武具を持っている。本人はこう言ってはいるが学院では一目置かれる実力を彼女は持っている。魔法武具を持てばなおさらである。事実、前にも二人が試合をした時に明里はそれを使用して茜を後一歩まで追い詰めた程であった。
「まあ、慣れるのも大事な事だぞ」
「はあい」
姉の言葉に力なさげに明里は答えた。
「さて、僕はそろそろ風呂に入るよ」
「いや、光。その前にお爺ちゃんが来いと言っていたぞ」
「お爺ちゃんが?・・あ・・いや、〝お爺様〟が」
光は驚いたがすぐさま、訂正した。しかし、姉妹の反応はどこか暗かった。
そんな様子に。
「大丈夫だよ。なんとかね」
光はそう言うと道場を出た。
廊下を歩いて部屋の前に立った。
「お爺様、入ります」
「おお。来たか」
部屋に入ると一人の老人が畳に座っていた。
誰もが見ても物静かな老人に見えるが老人とは思えない程の気力も感じられる。
この老人こそ茜、明里、光の祖父。
癒世 宗治である。
癒世家の先代当主であり、癒世家の武術の先代師範でもある。
今は明里達の父が当主をつとめている。
かつては軍人として数々の戦場を渡り歩いてきた歴戦の人である。
さらに引退したとはいえ、今でも現当主や明里達姉妹でも勝てない程、実力はまったく衰えていない。
「まあ、座んなさい」
陽気な感じで座布団を光の側に持ってくる。
「ありがとうございます」
その返事に祖父は苦笑する。
「これ、これ、そんな客人のようにせなくてよい。〝他は〟どうあれ、お前はわしの〝孫〟なんじゃから」
「うん」
光は少し弱気に答えた。
「さて、そろそろ、本題に入るかの」
祖父は一呼吸置いてから言った。
「本題とは、お前についてじゃ」
(きた)
光は覚悟を決めて祖父の方を見た。
これから話すのは、癒世 光、いや、癒世家の〝養子〟、としての光としての話であった。




