襲来
久しぶりの投稿です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「さて、痴話喧嘩はここまでにして、稽古の続きをするわよ」
パン!パン!と伊三美は話題を切る。
「そうですね。そうしましょう」
このままだとおかしな方向にいきそうな気がしていたのでホッとする。
「じゃあ。次に光君には、シャイニーちゃんを身に纏ってもらおうかしら。今後のためにも魔力に目覚めた光君の実力は知っておきたいし、データも欲しいのよ」
「モルモットみたいですね」
「ごめんね。研究者のバカどもがうるさいのよ。魔力に目覚めて、遺跡から発掘されたロッドに選らばれた光君のデータが欲しいって」
光は、自分のことを秘匿してくれる条件として稽古も兼ねてデータを提供している。
最初は研究所に行かされると思っていたが神無月家で行われることになったのだ。
理由を聞くと。
「手のひらを返して媚を売ろうとしてたから法外な条件を付けさせて了承させたわ!」
と背後がブリザードが吹くのが見えるほどの笑みを浮かべ伊三美は言ったのだった。
光は理由を聞くと恐ろしいことになりそうなので聞いていない。
そうしている間に香苗は準備している。
だが、光は一向に準備はしない。
「どうしたの」
「先輩。屋敷は結界みたいなのはありますか」
「張ってあるわ。どうして聞くの」
香苗の声が真剣に帯びていく。光の表情からただ事ではないと感じ取ったのだ。
『マスター。います。屋敷の外に』
シャイニーが伝えてくる。
その直後。
ガッシャーン!
ガラス窓が割れるような音が鳴った。
結界が破れた音である。
防御系の魔術は衝撃で耐えられない時や、破られる時にはガラスが割れる音が鳴るのだ。
「結界が!?」
「どうやら。何か来たようね」
伊三美が戦闘態勢に入る。
「シャイニー」
『わかっています!』
「〝聖なる衣、今こそ纏い、白き化身とならん〟」
詠唱を終え、光は魔法装束を纏った。
「それが光君の魔法装束か」
「綺麗」
二人は光の魔法師としての姿に見惚れた。
「そんなことより!そっちも準備してくださいよ!」
こんな時にこの人達は。
余裕だなあ。
「そうだね。じゃあ。いくわよ」
「はい」
二人は詠唱を呟く。
「〝吹き荒れよ。全てを凪ぎ、全てを貫く一閃を我手に宿れ〟」
「〝風よ。吹き静寂を乱す疾風の刃になり、我手に来たれ〟」
二人も詠唱を終え、魔法装束を纏った。
二人の装束は似てはいたが二人の個性が浮き出ている。
基本二人は、袴に胴着の装束だが、伊三美は薙刀。香苗は二刀の日本刀である。
二人の魔法装束が完了して、庭に出た。
庭には、鋭い牙をぎらつかせこちらを見る怪物がそこにいた。
「可愛くないわね」
伊三美は怪物を見て感想を呟いた。
「そう言う場合。お母さん」
「だって。あんなギラギラした牙を見るとね」
「お母さん。なんかずれてるわよ。色々と」
緊張感の会話が続く。
「キシャァーー!!」
突然、怪物が飛び上がり、襲いかかってきた。
三人はその場から三方に散った。
「痺れきらしちゃったわね」
伊三美が薙刀を振るう。
すると、三日月状の斬撃が怪物へとむかっていく。
怪物はそれを目にも止まらない速度で振った尻尾で弾いた。
斬撃は庭先に植えられていた松の木の枝を切り飛ばした。
「庭を壊さないでほしいわね」
伊三美は流れるような動作で怪物の攻撃を避けていく。
怪物は特徴的なのはその姿にあった。その姿は一言で言うなら〝トカゲ男〟だ。
頭はトカゲ、口からはみ出た牙、爬虫類のザラザラとした肌、人間と同じ二足歩行、長い尻尾、鋭いかぎ爪。
正に特撮に出てくるような姿をしている。
トカゲ男は両手にあるかぎ爪を伊三美に振るう。
一発でもくらえば腕は確実に飛ばされるだろう。
だが伊三美はそんな攻撃を見事にかわしながら薙刀の一撃、一撃をいれていく。
「は!」
気合いのこもった薙刀の袈裟斬りが振るわれた。
だが怪物はその一撃を見事な反射神経でバックステップをして回避
「ギャッーーーーー!?」
しかし次の瞬間には怪物は背中から血を噴射させ、絶叫した。
怪物の背中には右斜めに切り傷ができていた。
「一人じゃないわ」
香苗は刀の血を払って怪物を見据える。
さっきのは伊三美が注意を引き、香苗の方へと誘導したのだ。
そして
「今だよ!光君!」
「閃光の輝き、今こそ現し、汝の歒を滅せよ」
詠唱する光。
怪物の足元にひかり輝く魔方陣が出現する。
「シャイニングエクスプロージョン!」
閃光の爆発が怪物を包み込んだ。
「終わったわね」
薙刀を片に置き爆心地を眺める伊三美。
香苗も刀を鞘に納める。
光も魔法装束を解除した。
その時。
爆心地から一つの影が飛び出した。
「!」
光は咄嗟のことだったが反応した。
しかし、遅かった。
「ぐぁ!?」
首筋に激痛が走る。
両肩には重みと痛みがのしかかる。
「あああああああああああーーーーーっっ!!!!!」
激痛とともに何かが傷口から流れ込んでくるのを光は感じた。
咄嗟に魔力を解放して噛みつくものを弾き飛ばす。
「はぁーー!」
すかさず香苗が刀を抜刀。
それがとどめとなり、消滅した。
しかし
「マスター!?しっかりしてください!?マスター!?」
光はさっきの噛みつかれた場所を押さえてのたうちまわる。
シャイニーの声すら認識できていない。
「香苗。急いで救急車を」
「う、うん!?」
香苗はウィンドウを出現させて連絡をいれる。
そんな中で光は苦しみに耐えているのだった。
そんな様子を男は上空から眺めるように見ていた。
「さて。種は植えられた。これで、生きるか、朽ちるか。それによって計画は次の段階に進む」
男の呟きは、光の叫び声にかき消えるのだった。




