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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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90/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 90

そして、考えた…


 このリンダ・ヘイワースが、なぜ、今、私の家に、やって来たか?をだ…


 「…リンダ…オマエの目的は、なんだ?…」


 私は、聞いた…


 「…目的?…」


 リンダが、呆気に取られた表情で、聞いた…


 「…当然、今日、私に会いに来た目的があるはずさ…それは、なんだ?…」


 私の問いかけに、リンダは、目を丸くしたが、すぐに、


 「…お姉さんって、ホント、面白い?…」


 と、笑った…


 「…私が、面白いだと? …どういう意味だ?…」


 「…だって、そうでしょ? いつも、抜けているかと思えば、ときどき、とんでもなく鋭いことを、言う…一体、どれが、本当のお姉さんだか、わからなくなる…」


 「…わからなくなるだと?…」


 「…抜けているのが、本当なのか? 演技なのか、わからなくなる…」


 リンダが、笑った…


 私は、そんなリンダの笑った姿を見ながら、考えた…


 それを、言えば、このリンダも同じ…


 この矢田トモコと同じだ…


 なにを、考えているか、さっぱり、わからん…


 絶世の美女で、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれているにも、かかわらず、実は、性同一性障害で、中身は、男だと言う…


 正直、わけのわからない女だ(爆笑)…


 そして、普段は、ヤンの格好をしている…


 ヤンの格好=男装をしている…


 だから、余計に、わからない…


 なにを、考えているのか、わからない…


 出会った当初は、ヤンの格好をしているのは、女の格好をしているのは、疲れるからと、言っていた…


 リンダ・ヘイワースでいることは、疲れるからと、説明していた…


 いつも、リンダ・ヘイワースでいることは、周囲の人間から、リンダ・ヘイワースで、あることを、求められる…


 セックス・シンボルであることを、求められる…


 それが、苦痛だからと、私に告白していた…


 そして、私は、それを信じた…


 二十四時間、三百六十五日、セックス・アピールを、周囲に、振りまくことはできないからだ…


 だから、そう思っていた…


 が、


 実は、リンダは、性同一性障害で、中身は、男と、後から知った…


 にも、かかわらず、葉問を好きだと言う…


 正直、これでは、なにが、なんだか、わからない(爆笑)…


 なにを信じていいか、わからない状態だ…


 そして、そんなリンダに、私が、


 「…どれが、本当のお姉さんだか、わからなくなる…」


 と、言われても、笑止というか…


 そう言うオマエは、どうなんだ?


 と、突っ込みたくなる…


 そういうことだ…


 が、


 そんなことを、考えながらも、リンダの狙いを見抜く、術(すべ)は、あった…


 それは、リンダの葉問に対する、想いだ…


 明らかに、このリンダ・ヘイワースは、あの葉問に惚れている…


 その想いは、真実…


 リンダ・ヘイワースが、さまざまな形で、周囲を翻弄する中で、唯一といっていい、真実だ…


 つまりは、それこそが、本物…


 信じることができる…


 そして、それを前提に考えれば、このリンダという女の行動形態は、読める…


 つまりは、葉問優先…


 なににも、まして、葉問優先で、動くに違いないからだ…


 そして、それを、今回の行動に、当てはめれば、今も、葉問のために動いている…


 たとえ、葉問に頼まれずとも、葉問のために、よかれと思って、行動している…


 そう、考えれば、いい…


 物事は、複雑に考え過ぎるとダメ…


 なにが、なんだか、わからなくなる…


 だから、その複雑な糸をほぐすには、簡単に物事を考えること…


 シンプルに、物事を考えることだ…


 そして、シンプルに考えたとき、このリンダという女が、なにを、一番大切にしているか、考える…


 すると、出た答えは、葉問…


 葉問だ…


 リンダが、もっとも、大切に思っているのが、葉問だからだ…


 だから、そう考えれば、今、私の家に訪れたのも、葉問のためと、考えれば、いい…


 そう、考えれば、いい…


 「…で、オマエは、葉問のために、この家にやって来たわけか?…」


 私は、言った…


 すると、私の言葉に、またも、リンダは、目を丸くした…


 「…お姉さん…鋭い!…」


 感嘆の声を上げた…


 「…やはりな…」


 私は、言った…


 腕を組んで言った…


 鼻息を荒くして、言った…


 この矢田トモコ、35歳…


 伊達に、35年、生きてきたわけではない…


 平々凡々と、ただ、生きてきたわけではない…


 そういうことだ…


 舐めてもらっては、困る!…


 甘く見てもらっては、困るのだ!…


 「…お姉さん…」


 「…なんだ?…」


 「…今、葉問が、一番、なにを欲しているか、わかる?…」


 「…葉問が、欲しているものだと? なんだ、それは?…」


 「…それは、お姉さんよ…」


 「…わ、私?…」


 「…そう、お姉さんの力?…」


 「…私の力?…」


 「…誰からも、愛される、お姉さんの力…」


 リンダが、真顔で言う…


 私は、戸惑った…


 一体、私に、どんな力があるというのだ?


 さっぱり、わからん…


 私が、悩んでいると、今度は、リンダが、


 「…フッフッフッ…」


 と、またも、笑った…


 「…なんちゃって…」


 と、爆笑する…


 私は、頭に来たが、同時に、リンダのことを、考えた…


 リンダ・ヘイワースの頭の中身を考えたのだ…


 一体、なにが、リンダに、こんな態度を取らせるのか、考えたのだ…


 もしや、


 バニラの変装では?


 とも、思った…


 先日の、セレブの保育園のお遊戯大会でも、バニラは、リンダに変装して、やって来た…


 そこで、リンダのトレードマークである、真紅のドレスを着て、現れた…


 リンダ・ヘイワースの定番は、真紅…


 真っ赤な衣装だ…


 それは、リンダの性質を現わす…


 真逆に、


 バニラのトレードマークというか、定番は、青…


 海のようなブルーだ…


 バニラ・ルインスキーは、公式では、青いドレスを着るのが、定番…


 それを、売りにしている…


 つまり、それを元に考えれば、二人の性格がわかる…


 隠れた本質が、わかる…


 一見、リンダは、理知的で、おとなしい印象…


 だから、誰からも、好かれる…


 つまり、攻撃的では、ないからだ…


 攻撃的な女は、真面目で、おとなしい男は、避ける…


 真逆に、バニラは、攻撃的…


 野性的…


 だから、ヤンキーなのだ…


 だから、元ヤンなのだ…


 だから、ハッキリ言って、誰からも、好かれるリンダ・ヘイワースでは、物足りない男や女が、バニラ・ルインスキーに惹かれる…


 ヤンキーで、野性的なバニラ・ルインスキーに惹かれるのだ…


 が、


 それは、見た目…


 あくまで、見た目だけ…


 本当は、リンダは、バニラよりも、遥かに、情熱的…


 気性が、熱い…


 真逆に、バニラ・ルインスキーは、定番の青が、示すように、意外と、理知的だ…


 先日は、娘のマリアが、ファラドに、人質に取られたから、カッとなって、リンダに化けたまま、ファラドに素手で、立ち向かったが、普段は、そんな行動は取らない…


 意外というか…


 追い込まれれば、追い込まれるほど、理知的になるタイプだ…


 私は、二人と、身近に接して、それに気付いた…


 正直、身近に接しなければ、わからないことだった…


 テレビや、ネットの情報では、わからないことだった…


 テレビやネットなどで、得られる芸能人や、著名人の情報は、読者の目に触れるまでに、フィルターにかけられ、厳選される…


 だから、どこまで、素の姿なのかは、わからない…


 例えば、若くて、清純派で売っている女性が、普段、日常では、下ネタ好きでは、誰もが、辟易する…


 だから、素顔を知れば、思わず、


 「…本当は、こんな人だったんだ!…」


 と、なる…


 それと、同じだ…


 そんな普段、下ネタを話す姿を見せたくないから、その姿が、ファンの目に届かないように、メディアが、情報を統制するのだ…


 が、


 私は、リンダとバニラと接して、二人の真の姿を知っている…


 リンダが、バニラに比べて、遥かに、情熱的な女で、あることを、知っている…


 だから、今は、ご機嫌なのだ…


 葉問が、葉敬から、その存在を認められたから、ご機嫌なのだ…


 私は、あらためて、思った…


 と、ここまで、考えて、思った…


 すでに、何度も言ったが、あのセレブの保育園のお遊戯大会の出来事だ…


 当たり前だが、バニラは、リンダに化けて、あの会場に現れた…


 つまりは、バニラは、リンダの了承を得たはずだ…


 そして、本物のリンダは、私の隣で、ヤンの格好をしていた…


 つまりは、あの時点で、このリンダが、どこまで、知っていたか? ということだ…


 おそらく、リンダは、オスマンが、リンダ・ヘイワースの熱心なファンであることを、事前に、知っていた…


 が、


 自分ではなく、わざと、バニラに、自分の格好をさせて、あの場に現わせた…


 バニラは、すでに、何度も、リンダに化けたことがある…


 そして、バニラは、なんといっても、マリアの母親…


 セレブの保育園のお遊戯大会で、自分の娘のマリアの姿を見たいに、決まっている…


 だから、その気持ちを利用したのだ…


 そして、葉問…


 おそらく、あの時点で、葉問は、ファラドが、なにか、しでかすことに、気付いていた…


 だから、葉問は、どこかで、控えていたに違いない…


 騒動が、起きたときに、対処しようとしたのだ…


 そして、それを、思えば、あらためて、あの時点で、このリンダが、バニラに自分に化けて、現れさせたのは、自分が、自由でいるためでは? と、気付いた…


 本物のリンダ・ヘイワースが、あの真紅のドレスを着て、現れては、困る…


 なにより、ファラドが、なにをするか、わからない…


 うっかり、本物のリンダが現れて、ファラドの騒動に巻き込まれて、カラダに傷でも、負わせられたら、困るからだ…


 つまりは、このリンダは、うまく、あのバニラを利用したのだ…


 私は、思った…


 つまりは、あの時点で、このリンダと葉問は、繋がっていた…


 ファラドが、なにか、しでかすことに、気付いた二人は、繋がっていた…


 そういうことだ…


 と、ここまで、考えて、気付いたのは、あのお嬢様のこと…


 矢口のお嬢様のことだ…


 ファラドは、オスマンが、好きな、マリアを調べるうちに、マリアの父親が、葉敬で、台湾の大財閥の総帥であり、母親が、売れっ子モデルのバニラ・ルインスキーであることを知った…


 そして、マリアの父親の葉敬の趣味が、スーパー巡りであることを知った…


 だから、極秘裏に、葉敬に近付き、葉敬に、矢口のお嬢様の会社、スーパージャパンを、買収しないか、提案した…


 そして、その噂を、わざと市場に流したに違いない…


 焦ったお嬢様は、スーパージャパンの売り上げを上げることに、奔走した…


 私を通じて、クールの商品を、スーパージャパンに置いたり、イスラムのハラール食品を大手のスーパーに先駆けて、自社で、販売したり、極めつけは、このリンダを、CMに出して、そのCMで、宣伝した商品を自社だけで、限定販売することで、スーパージャパンの売り上げを上げようとしたに違いない…


 すべては、買収対策…


 売り上げが上がれば、株価が上がり、買収しにくくなる…


 そう読んだに違いないからだ…


 つまりは、あのお嬢様は、ファラドに躍らされたということだ…


 ファラドが、葉敬に、スーパージャパンの買収を持ち掛けた…


 その結果、あのお嬢様は、スーパージャパンを、守る行動を取らざるを得なくなった…


 そういうことだ…


 私は、思った…


 そして、このリンダ…


 リンダ・ヘイワースのことを、思った…


 このリンダ・ヘイワースもまた、そのすべてを、見切っていたということだ…


 なぜ、あのお嬢様が、自分を、スーパージャパンのCMに使おうとするのかも、わかっていたに違いない…


 つまりは、あの矢口のお嬢様の苦境を知っていたということだ…


 知っていて、見て見ぬふりをしていたということだ…


 なんと、ズルい女だ…


 私は、思った…


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